おはようございます。日経バイオテク副編集長の久保田です。最初に、宣伝させてください。

 昨年に続き、今年もゲノム編集のセミナーを開催します。この1年間で、ゲノム編集の実用化の動きは相当進んでいます。企業での研究開発への利用も本格化しています。加えて、ゲノム編集技術自体も急速に進化しています。今回のセミナーは、その“速さ”を実感していただけるような内容になっています。ぜひ、ご参加ください。

◆◆加速するゲノム編集の医療応用◆◆
開催:2016年11月9日(水) 13:00~17:30(開場12:30)予定
会場:コクヨホール(東京・品川)

■詳しいプログラム内容はこちらから■
http://nkbp.jp/2dbLNuG

 さて今日のメルマガは、今業界で話題になっている米Sarepta Therapeutics社の「Exondys 51」(eteplirsen)についてです。

 私が担当しているコラム「谷本佐理名の“FDAウォッチ”」でも取り上げましたが、米国で迅速承認された筋ジストロフィーに対するエキソンスキッピングの治療薬eteplirsenですが、承認の直前まで臨床試験で得られたエビデンスをどう評価するかを巡り、米食品医薬品局(FDA)内で対立が起きていたことが明らかになりました。

谷本佐理名の“FDAウォッチ”
エクソンスキッピング薬承認の裏でFDAを去った“ある人物”
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/071100007/092100005/
エクソンスキッピング薬の承認巡るFDA内部の対立が露わに
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/071100007/102500007/

 具体的には、審査を担当していた医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research:CDER)新薬審査部門(Office of New Drugs)審査第1部の部長や、その下の臨床審査官、FDAの諮問委員会が、一様に迅速承認に否定的な見解を示していたのに対し、医薬品評価研究センター(CDER)のセンター長が迅速承認に突っ走っていったことが分かったのです。また、両者の見解が対立したポイントが、ジストロフィン蛋白の増加から臨床的有用性を推定できるかどうかであったことも公になりました。

 今回、最も驚きだったのは、(そういう仕組みがあるにせよ)内部での意見対立の経緯について、FDAの公的文書が公表されたこと。それに加えて、文書には誰がいつ何を主張したかが明確に記されていたことです。登場人物が全て医師免許保持者であるという事情はあれど、主張した個人を特定できる形の文書を公表するというのは、FDAで審査に携わる関係者が文字通り、専門職(profession)で、腹をくくって仕事をしているからなのだろうと思います。

 東京都が移転を進める豊洲市場の盛り土問題では、地下空間の設置が「段階的に空気の中で決まった」とされました。都の職員の責任感の欠如も指摘され、誰がいつ何を主張したかなど、振り返ることは到底できません。今回の件を見て、FDAには地下空間(的なもの)が生まれることはないのだとよく分かりました。と同時に、承認するにせよ、しないにせよ、専門職として腹をくくって主張する人々の存在が、新しいイノベーションを下支えしているのだと痛感した次第です。