皆様おはようございます。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。本日からバイオジャパン2016が始まります。私も取材に行っていますので、会場をうろうろしているのを見かけたら、ぜひ声を掛けてください。

 既に何度か紹介させていただきましたが、日経バイオテク編集部では11月9日に東京・品川でゲノム編集の医療応用をテーマとするセミナーを開始します。

http://nkbp.jp/2dbLNuG

 また、12月1日には東京・永田町で、「『ゲノム医療』が変える、製薬企業のR&D」というテーマのセミナーを開催します。

http://nkbp.jp/2dHxi4b

 こちらは初めての紹介ですので簡単に内容に触れておきますと、癌と希少疾患の分野で既に始まっているゲノム解析に基づく診断や治療方針の検討といった取り組みの現状と将来に向けた課題などについて、アカデミアの研究者に紹介いただいた上で、こうしたゲノム医療が本格普及すると製薬企業の研究開発はどのように変わるか、ゲノム医療の到来に備えて何を準備しておけばいいのか、ゲノム情報を研究開発に活用する際の留意点は何かといった問題を、製薬企業の研究開発部門の方を交えて議論しようという企画です。日本PGxデータサイエンスコンソーシアム(JPDSC)の共催により開催する年末恒例のセミナーです。ぜひ参加をご検討ください。

 さて、日経バイオテク本誌やONLINEを通じてこれまでたびたび報じてきましたが、国内大手ワクチンメーカーである化学及血清療法研究所を巡り、事態が大きく動いています。

 厚労省は今年9月6日、7日に無通告で行った立ち入り検査で、化血研が乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン「エンセバック皮下注用」の製造工程において、製造販売承認書の内容とは異なり、病原体不活化処理工程を経ていない原材料を用いた製造を行っている実態が確認されたとして、その経緯などを10月18日までに報告するように命令しました。さらに、化血研が製造販売または製造している他の製品についても、承認書と製造実態の齟齬の有無を網羅的に調査して結果を報告するよう命令しました。その命令書の中で厚労省は、「法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である」として、今回発覚したことが法違反行為であると明言しています。

化血研、日本脳炎ワクチンで再度製造不正が発覚
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/10/04/01638/

 厚労省は昨年9月1日、エンセバックを含むワクチン26製品について、9月14日を期限として、製造販売承認と実製造の齟齬が生じている事項の報告などを求めましたが、その報告が適切でなかったため9月18日に出荷の自粛を要請しました。今回問題となったエンセバックについては、その後化血研からなされた報告内容を厚労省で精査した結果、品質及び安全性等に重大な影響を及ぼす齟齬はないと判断されたことなどを理由に、今年2月26日付で、出荷自粛要請を解除しました。ところが9月6日、7日に行った立ち入り検査で「製造販売承認書の記載と一部異なる製造を行っていたことが確認された」ため、報告命令を行ったと厚労省は発表しました。

 これに対して化血研は10月4日付で、「一部報道機関において、本年9月の厚労省の立入検査で本件が発覚したと報道されているが、立ち入り検査以前に厚労省に自主的に報告したものである」「現在の当該製品の製造方法は審査を受けたものであるが、製造販売承認書の記載の正確性を一部書いていたため、その点について厚労省に報告し、対応についての協議をしていた」などと釈明するリリースを発表。すると今度は厚労省がこの化血研のリリースに対して、「厚労省の事実認識が誤っているかの如き印象を与える表現があるが、厚労省の認識とは大きく異なるものである」とするリリースを出して、事態は泥沼化しつつある状況です。

 実はワクチン部門でもGMP違反があったとなると、化血研の再建は極めて深刻な事態に陥る可能性があります。昨年11月に化血研が公表した第三者委員会の報告書では血漿分画部門では製造販売承認書との不整合やその隠蔽工作があったが、ワクチン部門においては不整合や隠蔽工作は無かったとし、不祥事の原因を血漿分画部門の閉鎖性によるものと説明してきたからです。ワクチン部門でもGMP違反があったとすると、第三者委員会の報告書すら信じられなくなってしまいます。

 その第三者委員会報告書には、ワクチン部門に関する調査結果として、製造販売承認書と製造実態の間に幾つも「齟齬」があったことが記されています。となると、そもそも「齟齬」と「不整合」はどう違うのかという疑問がわいてきます。今回厚労省が指摘した病原体不活化処理工程を経ていない問題も、「法違反行為」ではなく「齟齬」の範疇として厚労省に相談してきたことなのか? だとしたら厚労省との言い分はどうして異なっているのか? こうした疑問にきちんと答えてもらわないと、化血研の現経営陣の言も信用できなくなってしまいます。正しく情報公開のなされることを願ってやみません。

 本日はこの辺りで失礼します。

             日経バイオテク編集長 橋本宗明