高額薬剤は単価の議論だけでよいのか?【日経バイオテクONLINE Vol.2527】

(2016.09.23 08:00)
山崎大作

 日経バイオテク副編集長の山崎大作です。

 2016年9月13日、厚生労働省が2015年度の医療費の動向を発表しました。15年度の概算医療費が初めて40兆円を超えたことは大きく放送されましたし、印象に残っておられる方は多いのではないでしょうか。

 中でも伸びたのは、前年度比11.3%増の5兆9783億円だった薬剤料です。その背景に高額薬剤の登場があるとされ、単価に注目が集まっています。ただ、製薬会社サイドにとっても薬剤費が高いと言われて簡単に飲める話ではないでしょう。

 くしくも医療費の発表があった9月13日に日経バイオテクに掲載した、橋本千香氏の「メガファーマの“新薬当たりの研究開発費”はいくらか?」によると、概算で、開発効率のよいスイスNovartis社でも1つの新薬の承認を得るのに50億ドル、米AbbVie社では310億ドル掛かっていた計算になるそうです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/071100006/091200005/

 年々、医薬品の開発コストが増えているという米Tufts Center for the Study of Drug Developmentの調査データもあります。薬剤の単価が高額だからといって、一律に削るようなことをすれば、製薬会社の経営が成立しなくなります。とはいえ、このまま無尽蔵に薬剤料が増やすことは不可能です。そのためにも医薬品開発のコストを下げていくには何が必要なのかを議論していく必要があるのではないでしょうか。

 米保険福祉省(HHS)と米国立衛生研究所(NIH)は9月16日、2017年1月18日以降、フェーズII以降の臨床試験について、失敗した臨床試験も含めてより広く情報を集める新しいルールの義務化を発表しています。失敗した臨床試験の情報は、ドラッグリポジショニングにつながるのはもちろん、新薬の開発の効率化につながるはずです。HHSのリリースでも、臨床試験のデータを最大限活用することが強調されていました。失敗したものも含めた臨床試験情報の公表は、製薬会社からもこれまでも長年言及されてきながら、なかなか進まずにきた話です。

 特定薬剤の薬価の議論に終始することは、中長期的にみて医薬品産業だけでなく、新規薬剤へのアクセスが阻害されることになる国民にとってもプラスにはなりません。「無理なく医薬品の開発コストを下げるにはどうすればよいか」という議論をもっと真剣に行うべき時期が来ているはずです。

 バイオ研究者やバイオ産業に携わる方、約5万人に向けて月曜から金曜まで週5回配信している日経バイオテクONLINEメールに、水曜日と金曜日に掲載している記者によるコラムを掲載します。

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