みなさま、おはようございます。日経バイオテク編集の高橋厚妃です。本日、弊誌主催の「腸内菌叢の創薬応用セミナー」を開催します。どのような議論がなされるのか、今から楽しみです。

 さて、先週から海外の複数のメディアが、スイスNovartis社がキメラ抗原受容体T細胞(CART)療法を手掛ける「細胞遺伝子治療ユニット」を解散したことを伝えていました。弊誌でも昨日、ニュースとして取り上げています。

スイスNovartis社、CART療法の開発手掛けるユニットを解散
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/09/05/01454/

 Novartis社は、急性リンパ性白血病などを対象として、CD19を標的とした自家のCART療法であるCTL019(開発番号)の開発を米国や日本で手掛けています。同社は、CTL019の開発は続行するとコメントしていますが、同ニュースが伝えられた際には、CART療法を手掛ける海外の複数のベンチャー企業の株価が一時落ちるなど、業界に与えた影響は少なくなかったようです。

 こういった株価の動きを見ていると、CART療法はダメなのか、といった声が聞こえてきそうです。しかし、確かに今言えることは、まだCART療法が研究途上である、ということのみではないでしょうか。

 ちょうど今回の報道の1週間ほど前、日経バイオテクでは、ライフサイエンス分野の調査会社である英Evaluate社の編集チームEP Vantageが2016年6月に公開したCARTに関するレポートの一部をご紹介しました。

効果と安全性、CART療法が抱える問題その1
Evaluate社レポートより
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/08/24/01368/

製造過程とコスト、CART療法が抱える問題その2
Evaluate社レポートより
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/08/24/01369/

 これらのレポートには、現状明らかになってきたCART療法の課題点と合わせて、その課題を解決するための取り組みの方向性や各社の研究状況が記されています。課題とその解決方法の方向性が明らかになってきたということは、研究が進んできた証拠だと思っていた矢先、今回のニュースが飛び込んできました。今後のCART療法の研究開発の様子も、注力していきたいと思っています。

 なお、既に記事中では訂正させていただいているのですが、〈効果と安全性、カート療法が抱える問題その1〉の中で1カ所訂正のお詫びがあります。本文中、「急性骨髄性白血病(ALL)を対象とする研究では、90%以上の患者が再発を経験しており、多くが1年以内の再発だった」と記載していましたが、正しくは「急性骨髄性白血病(ALL)を対象にCART療法を実施した研究では、完全寛解率は高いが、多くの患者は1年以内に再発する」でした。改めてこちらでもお詫びと訂正をお知らせしたいと思います。

 レポートの出典は、英Evaluate社「EP Vantage Shifting CARTs Into a Higher Gear」で、原文は、Evaluate公式ウェブサイトよりダウンロード可能です。