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ASGCT、相次いだゲノム編集療法の発表【日経バイオテクONLINE Vol.2442】

(2016.05.13 14:57)
久保田文

 こんにちは。3週に1度、メルマガを担当しています副編集長の久保田です。昨日まで、米国遺伝子細胞治療学会(ASGCT)の取材のため、米国ワシントンD.C.に出張していました。今回の学会で目立ったのは、何といってもゲノム編集の医療応用の研究です。

ASGCT、CRISPR/Cas9の臨床応用は「送達技術、修復機構制御、倫理的問題が課題」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/05/06/00659/

ASGCT、ゲノム編集の新規オフターゲット切断カ所同定法を開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/05/07/00663/

ASGCT、Sangamo社、ZFN用いたin vivoのゲノム編集療法を複数開発中
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/05/07/00661/

ASGCT、自治医山形教授がAADC欠損症の遺伝子治療について報告
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/05/08/00664/

 米Sangamo Biosciences社は、第1世代のZinc Finger Nuclease(ZFN)を用いてエイズ患者から取り出した造血幹細胞のCCR5遺伝子を破壊。拡大培養して患者に戻すex vivoのゲノム編集療法の臨床試験を新たにスタートさせるほか、血友病B患者に対して、ZFNを用いて血液凝固第IX因子遺伝子を組み込むSB-FIX、ムコ多糖症(MPS)1型を対象にα-L-イズロニダーゼ(IDUA)遺伝子を組み込むSB-318などin vivoのゲノム編集療法の臨床試験を実施します。in vivoのゲノム療法はいずれも、アデノ随伴ウイルスベクターを使って、ZFNと治療用蛋白質遺伝子を肝臓に送達し、治療用遺伝子はアルブミン遺伝子座に発現させる戦略で、実施されれば世界初のin vivoのゲノム編集療法となります。

 第2世代のTALENも同様です。フランスCellectis社は、他家のキメラ抗原受容体T細胞療法の臨床開発を進めています。健常者由来のT細胞にCAR遺伝子を入れた上で拡大培養し、その後、TALENを用いてT細胞受容体遺伝子とCD52遺伝子をノックアウト。改変された細胞を単離して、患者に移植する他家のゲノム編集療法です。会場にはアナリストやベンチャーキャピタルの姿も散見され、新しい技術を巡ってヒトやカネが動く国外の活況ぶりを肌で感じました。

 第3世代のCRISPR/Casは、まだまだ効率も悪く、課題も多いのですが、相当数の研究者がゲノム編集療法の研究をスタートさせています。これまで遺伝子治療の研究を手掛けていた研究者に加え、新たにCRISPR/Casを用いて治療法開発に乗り出す研究者も少なくなく、研究人口は着実に増えている模様。昨年のASGCTに比べて、ゲノム編集の発表は3倍以上に膨らんだそうで、臨床を見据えた活発な議論がなされていたのが印象的でした。ASGCTの模様は、近く日経バイオテクでも報告にする予定です。

 最後になりましたが、1点訂正があります。米Theranos社について書いた前回のメールマガジンで、同社が「90億ドルの資金を調達」と書きましたが、正しくは「90億ドルという評価を得ている」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。