オープンラボとかオープンイノベーションという言葉をよく聞くようになりました。

 たびたび引き合いに出される成功例がスマートフォンです。1つのブランドとOSをプラットフォームにして、多くの異なったソフト会社がアプリケーションを提供し、総合的に新しい価値を生み出す製品を構成しています。
 商品設計から、その競争力を確保する様々な要素技術を単独で開発することがだけが画期的な製品を開発するスタイルと言えなくなっているようです。

 新薬開発の分野ではどうでしょうか?
 産官学の連携が画期的で実用的な製品やサービスを生み出す上での重要との指摘がなされて久しいのですが、少し具体的に考えてみると、それぞれのセクターの利害関係の調整という課題が見えてきます。研究成果に関する貢献を評価することは時に困難を伴います。どこからどこまでが誰の発案であったのか、アイデアを実践できたのは最終的に誰のおかげかなど、プレーヤー達の不満の種にならないような処理が、オープンイノベーションが成果を生み出す鍵かと思います。

 次号の研究室探訪で取り上げる「スマートライフケア社会への変革を先導するオープンイノベーション拠点」(COINS)はその試金石になるのではないかと個人的に確信しています。プラットフォームに相当する革新的アイデア、すなわちCOINSの達成目標とは、高度な医療機能を超蜜微細集積したウイルスサイズ(50nm以下)のスマートマシンを創製することです。

 詳しくは次号の「研究室探訪」を読んでいただければと思いますが、COINSプロジェクトの受け皿には公益財団法人川崎市産業振興財団がなっています。川崎市の思惑は、市内殿町の国際戦略拠点(通称「キング スカイフロント」に多数の企業を誘致することであり、COINSプロジェクトの研究所であるナノ医療イノベーションセンター(iCONM)はキング スカイフロントの中核であり、オープンイノベーションの実体であります。
 そしてCOINSには既に5つの大学に加え、帝人や味の素、ニコン、ナノキャリア、日油、島津製作所などが参加しています。

 

オープンイノベーションの帰趨に興味のある方はもちろん、新薬開発と聞くとまっさきに新規化合物の合成や、官能基付け変え作業を思い浮かべる方々にもぜひ読んでいただきたいと、現在関係者に取材を重ねています。(小崎丈太郎)