皆さまこんにちは、日経バイオテク編集の高橋厚妃です。日経バイオテク2016年3月14日発行の最新号で「若手研究者の肖像」を担当し、東京大学理学系研究科生物科学専攻動物発生学研究室の入江直樹准教授にスポットをあてました。

日経バイオテク3月14日号「若手研究者の肖像」(第11回)
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/series/16/03/09/00056/

 入江准教授は、脊椎動物に共通する個体発生の学説を遺伝子解析から客観的に証明してみせ、2011年にNature Communications誌に成果を発表したことで注目されました。また、2013年には中国BGIや欧州の研究機関などを含む国際的な研究グループ「国際カメゲノムコンソーシアム」を率いて、世界に先駆けてカメの全ゲノムを解読し、Nature Genetics誌に成果を発表しました。カメが爬虫類系統樹の中で、ワニやトリ、恐竜に進化的に近いことを突き止めたことなどで注目を集め、当時、多数の新聞などで報道されたことから、ご存知の読者の方も多いかもしれません。

 どのようなリーダーシップで、中国BGIなどの研究者30人以上を率いて論文まで仕上げたのか、というところなどは、ぜひ本誌でお読みいただければと思います。

 発生学や進化の研究で、マイクロアレイや次世代シーケンサーで用いた解析で得られた遺伝子情報を利用するのは、当時画期的な試みでした。普段私は、医薬品や再生医療などどちらかというと産業応用を目指した研究を取材することが多いので、次世代シーケンサーを利用した基礎科学の研究の取り組みを取材する良い機会となりました。

 同取材を進めているのとちょうど同じ時期に、サントリー生命科学財団生物有機科学研究所で、基礎科学の研究を行う研究者の方にお話を聞く機会がありました。同研究所は、公益目的の研究・解析事業と、収益目的の企業からの受託研究事業を手掛けています。

 同研究所は、2012年に次世代シーケンサーを導入し、2014年には、同研究所を含む複数の企業や研究機関と共同で、日本で栽培されているホップ「信州早生」のゲノム解読を実施しました。次いで、同ゲノム配列を基に欧州の栽培品種のSaaz種と野生ホップ(カラハナソウ)のゲノム配列を解読して3種を比較し、異なる遺伝子配列を1000万カ所以上見つけたということです。さらに、ホップの成長段階別の遺伝子発現解析を行い、成長過程で香味成分が合成されていくメカニズムを推定しました(ホップについては、日経バイオテク10月13日号「機能性食材研究」(第10回)、ホップで紹介していますhttps://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20141017/179598/ )。

 同研究所の研究者が語るには、今後、このようなホップのゲノム解析の情報と、実際にそのホップで作ったビールの味や顧客の反応などのマーケティング情報を組み合わせて、ビールの商品開発を行う時代がくるのではないか、ということでした。次世代シーケンサーの解析がますます身近になっていると感じた次第です。