皆様、こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 昨日、日本バイオテク協議会の記念講演会で講演を依頼され、バイオベンチャーの経営者や、バイオベンチャー振興に関わる行政の方々の前で話をする機会がありました。

 日本バイオテク協議会は、国内の主要なバイオベンチャーが共同で2009年に発足した団体で、現在は22社で構成され、定期的に厚労省、文科省、経産省との意見交換などの活動を行っているということです。当初は11社が集まったので、「士(サムライ)の会」と言っていたそうで、これまでに臨床研究や薬価制度、医療イノベーションなどに関する提言を行ってきました。

日本バイオテク協議会が発足、制度改革などを積極提言
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3729/

 協議会から要請されたテーマは「バイオベンチャー振興の課題」というものだったので、日頃の取材を通して感じていること幾つか提案させていただきました。そのうちの1つが「バイオベンチャーの人材をいかに確保するか」という問題です。

 最近でこそ、製薬企業をやめてバイオベンチャーに転職したという方に出会う機会も珍しくは無くなりましたが、それでもバイオベンチャーの経営者と話をすると、「優秀な人材をいかにして確保するか」が極めて大きな問題であることが分かります。昔に比べると、大企業志向は薄らいでいると思いますが、それでも昨今のように就職環境が大きく改善する中で、バイオベンチャーが大企業と競って人材を確保するのは簡単ではありません。しかも、規模が小さなベンチャーでは、専門能力を持った人材が必要ではあるものの、フルタイムで雇用するほどまでにはその専門性に対する社内需要がないといったことも生じがちです。

 そこで私が提案したいのは、大企業などからの出向や兼業により、専門能力やスキルを持った人材をベンチャーが活用できるようにすることです。例えば、企業側がコンサルティング事業などの形で優秀な人材の能力を貸し出し、その対価を受けるといったやり方でもいいかもしれません。

 さらに言うと、企業側は社員が副業としてベンチャーなどで働くことを公式に認め、むしろ奨励するような社会環境にしていくべきだと思います。就業規則で副業を禁止している企業も多くありますが、就業時間外に副業を行ったことを理由とする懲戒処分が無効とされた裁判例もあります。もちろん、本業に支障を来すような副業では企業側も認めにくいとは思いますが、ベンチャーなどで様々な経験を積むことが発想を豊かにし、本業に寄与する可能性もあるでしょう。また、だらだらと残業する人が減って、人件費の圧縮につながることも期待できます。最近では、隠れて副業をされるよりは、届出制にして管理する方がいいと考える会社もあれば、むしろ社員に副業をすることを奨励している会社もあると聞きます。副業が公に奨励される社会になれば当然、国民の所得は増えますし、人口減少に伴う労働力人口の不足も多少は軽減されるはずです。場合によっては、一億総活躍社会どころか、1.2億活躍社会にも、1.5億活躍社会にもなるはずです。

 このところ、マイナンバー制度のスタートによって「会社にばれるので副業を続けられなくなる」といった声を聞きますが、これを機会に政府は経済界に対して副業を奨励するよう呼び掛けるというのはどうでしょう。経済界としても賃上げの要請よりよほど受け入れ易いのではないかと思います。

 日本バイオテク協議会の講演では、この他にも幾つか提案をさせていただいたのですが、それはまた別の機会に紹介させていただくことにします。本日はこの辺で失礼します。