皆さまこんにちは、日経バイオテクの高橋厚妃です。寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。

 最近、再生医療の研究を行う研究者が、臨床応用の考え方について言及しています。本誌でも、先端医療振興財団臨床研究情報センターの福島雅典センター長や、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の臨床応用研究部門の高橋淳教授に自身の考えを語ってもらいました。関心を持った読者の方も多いと思います。

先端財団福島氏、「再生医療で治験外の臨床研究は行うべきではない」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/01/05/00013/

CiRA高橋淳教授に聞く、「iPS細胞を用いたパーキンソン病に対する再生医療、
臨床研究か治験かは検討中」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/01/05/00016/

 2015年1月25日に開催された日本医療研究開発機構(AMED)が主催する「AMED再生医療公開シンポジウム」では、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が講演。山中所長の講演を様々な機会で聞いていますが、スライド1枚を使って、臨床応用の方法には臨床研究と治験があり、どちらかを選べるのが大切であることを説明しているのは初めて拝聴し、議論が高まっていることを感じた瞬間でした。患者など様々な立場の人たちが出席していた公開シンポジウムでの講演だったからかもしれませんが。

山中所長、「臨床研究か治験かはケース・バイ・ケースで選ぶべき」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/01/26/00121/

 先日2月1日、AMEDが主催する「レギュラトリーサイエンス公開シンポジウム」に理化学研究所多細胞システム形成研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーが登壇しました。その中で、高橋プロジェクトリーダーも、安全で安い再生医療を早く普及させるためには、臨床研究を行うことが重要だとの認識を示しました。高橋プロジェクトリーダーが開発するiPS細胞を用いた網膜色素上皮(RPE)細胞の治療には、自家と他家iPS細胞由来RPE細胞それぞれを、シート状にして手術するもの、浮遊液にして目に添加するものがあります。高橋プロジェクトリーダーは、患者によって適切と考えられる治療を選択したり、シートの中でも単層のシートを利用したり、複合のシートでの治療を考えているといいます。実用化する際の様々な可能性を考えて開発品を揃えておく必要があり、そのためにも臨床研究が必要だという主張でした。全て治験で行うと普及までに30年くらい掛かってしまうので、あと10年でなんとか目処をつけたい、ということでした。

 臨床研究か治験か――。今後も、折に触れて様々な意見を聞く機会があると思いますが、そのたびに立ち止まって公平に考えていきたいトピックの1つです。