3週間に1回、金曜日のメルマガを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 「著者に印税が入るだけだ、買うんじゃない」という声がネットなどにあふれる中、読まないわけにもいかず、やはり買ってしまいました。小保方晴子氏著「あの日」です。

 ほとんどの主要な記者会見に出席した私としては、STAP騒動が収束した今でも理解できない、あるいは納得できない点が何点かあり、それについて本人がどう説明しているか、非常に興味があったからです。

 まず探したのが、最終版でない博士論文を提出してしまったという件について書かれた部分です。そこにはこう書かれています。

「下書き段階のものから、先生方に提出したもの、その後整形して仕上げたものまで何度もプリントアウトしていて、この時点ではまったく気がつかなかったが、最後でないバージョンのものをまちがえて製本所に持って行ってしまい、事務に提出された」。

 また、博士論文に掲載した写真をネイチャー論文にも掲載してしまった件についても触れています。

 「テラトーマの図表は、当初、学生時代から研究をしていた、さまざまなストレス処理によって変化した細胞という内容の論文から、酸処理のストレスによって変化した細胞へとストレスの種類が限定されて、論文の内容が書き直されていく過程で、私がテラトーマの写真の差し替えを忘れたことに原因があった」

 さて、当初から疑問に思い、今も解決していないのですが、大量のコピーペーストを残したままの博士論文をついうっかりと提出したり、一世一代の論文に掲載する写真の差し替えを忘れる研究者が、本当にいるものなのでしょうか。当時、数多くのライフサイエンス分野の博士号取得者に聞いてみたのですが、「こういうミスはあり得ない」という感想で一致していました。

 なぜ上記のようなミスをしたかについて、研究者コミュニティが納得するような説明があるかと期待したのですが。

 この本の中で最もインパクトがあったのが、再現実験についてのくだりです。小保方氏は、中間報告前の段階で5つの細胞塊を解析した結果、3つの細胞塊で多能性を示す遺伝子の発現を確認したと主張しています。この主張は、理研が行った中間報告会で説明された内容と、全く異なっています。この説明会でプロジェクトリーダーの丹羽仁史氏は、「22回実験をやったが多能性発現に特異的な蛍光も遺伝子発現の上昇も認められなかった」と明言しています。

 最終的にSTAP現象の存在が確認できなかった点についても小保方氏は「STAP細胞は変化しやすい細胞で、解析を迅速に行う必要があったが、解析のために細胞は別の場所に運ばれ、第三者によって行われ、即時に結果を見ることができなかった」と、未練がありありなのです。

 今はやりのクラウドファンディングで5億円くらい資金を集めて、とことんやってみたらいいと思ってしまうのは不謹慎でしょうか。彼女なら簡単に集められるはずです。