皆様こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 厚生労働省の中央社会保険医療協議会の議論を通して、2016年度の診療報酬改定、調剤報酬改定、薬価改定の中身がかなりあきらかになってきました。1月20日には薬価制度見直しの内容が明らかになり、市場拡大再算定などの対象となる医薬品も明らかになりました。とりわけ、新たに設けられた特例拡大再算定の対象となる医薬品を有する企業は、経営に大きな痛手を被ることになりそうです。

キーワード解説、特例拡大再算定、ギリアドのC型慢性肝炎治療薬などが対象に
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/16/01/21/00002/

 さらに本日27日開催の中医協では、いよいよ改定の個別項目について、点数は未定ながら厚労省の考えが示されました。資料は厚労省のホームページに掲載されているので、そちらも合わせてご覧ください。一昨日、昨日は厚労省のホームページがサイバー攻撃を受けていたようで、長時間アクセスできない状態が続きましたが、幸い本日は問題なくアクセスできました。

 まず全体を通して見ると、地域包括ケアシステムの推進や医療機能の分化、連携が評価されるというのは前々から言われていた通りの内容です。入院から在宅への移行を促し、かかりつけの医師、かかりつけ薬剤師などが地域住民の健康、医療に関わっていくことを評価するといった具合です。医療サービスを提供する場として、病院よりもクリニックや薬局、在宅の占める割合が大きくなるわけで、そこで提供される医薬品や医療機器の在り方、そのコンセプトにも変化が求められるのではないかと思います。例えば医薬品の場合、高齢者が在宅で自己管理しやすいよう工夫した製剤などへのニーズが強まると思います。

 後発医薬品については、後発品の調剤割合が低い薬局では基準調剤加算を算定できないようにしたり、院内処方向けの後発品使用体制加算を設けたり、一般名処方の加算を上乗せするなど、経済的なインセンティブ、ディスインセンティブにより、あの手この手で使用促進を図ります。薬価制度改革と併せて、後発医薬品シフトがさらに加速するのは必至で、長期収載品に依存した製薬企業の経営はますます厳しくなりそうです。

 さらに、多剤投薬を受けている患者に対して、薬の種類を減らす指導を行った場合の点数が設けられました。また、多剤投薬だけでなく複数の医療機関からの重複投薬や、薬をもらっても服用しない残薬も問題視されてきましたが、かかりつけ薬局、薬剤師の取り組みとして、残薬の削減や、医師と連携した重複投薬などの回避についても評価がなされます。これらの内容は、製薬企業にとっては売上高の減少につながるのかもしれませんが、医療費の無駄を削減するという意味で、メーカーも対策を講じていくべきことだと思います。コンプライアンスをよくするための工夫や、残薬を減らすための工夫を製品側ですることで、他社製品との差別化ができるかもしれません。

 そのほか、資料を斜め読みしていくと、「人工腎臓について、包括化されるエリスロポチン等の実勢価格が下っていることを踏まえ、評価を適正化する」とあり、人工腎臓の点数が大きく引き下げられそうです。医薬品の適正化としては、一定枚数を超える湿布薬を処方する場合に理由の記載が必要になります。指定難病の診断に必要な遺伝学的検査が数多く点数化されるようです。この他にも、380ページ全体に及ぶ資料を詳細に見ていけば、読者のみなさんのビジネスに影響することがもっと数多くあるに違いありません。

 いずれにしても、地域包括ケアの推進や、後発品の使用促進、重複投薬や残薬の解消など、製薬企業にとって向かい風になる要素が多いのは確かです。このトレンドは、2016年度の診療報酬改定だけでなく、社会保障財源が圧迫される中で、長期間にわたって続くことでしょう。ただし、医療費の無駄を減らし、効率化していくために、医薬品、医療機器、再生医療等製品を作るメーカーの立場でできることもまだまだ数多くあるはずです。むしろ、そこにこそビジネスチャンスはあるぐらいの思いで、アイデアを出していきたいものです。

 本日はこの辺りで失礼します。
                         日経バイオテク 橋本宗明