こんにちは。日経バイオテク副編集長の久保田です。新しい年が始まってから、製薬業界の業界団体による記者会見が相次いでいます。 日本製薬工業協会(製薬協)が1月16日、定例記者会見を開催した他、米国研究製薬工業協会(PhRMA)は1月21日、在日執行委員会委員長の就任会見を開催しました。いずれの会見でも聞かれたのは、薬価を巡る国内政策への批判や限界を指摘する声です。

製薬協、2025年に向け初の産業ビジョンを策定
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/01/17/00069/

PhRMA、「毎年の薬価改定は日本市場の魅力をそぐ」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/01/21/00088/

 高齢化や医療の高度化に伴う医療費増大に直面する日本は、これまで国民皆保険を守るためという題目の下、あの手この手で薬剤費の抑制に努めてきました。長期収載品の薬価を引き下げるとともに、後発医薬品の普及を促進。2015年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針)」には、2020年までに後発医薬品の数量シェアを80%以上に引き上げる目標値が盛り込まれたことはご存じの通りです。

 加えて、2016年度の薬価制度改革では、1000億円以上の巨額な売り上げを上げた医薬品を対象として薬価を引き下げる特例拡大再算定
( https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/16/01/21/00002/ )を導入。費用対効果評価の施行的な導入も始まります。さらに2017年度に予定されている消費増税時に薬価改定を行うことも検討されており、2016年前半にも方向性が決まる見通しです。

 「イノベーションを評価するとしていたこれまでの政策に逆行する」――。後発医薬品の使用促進は別として、特例拡大再算定や消費増税時の薬価改定に対しては、内資か外資かを問わず、製薬業界から批判の声が上がっており、今後数カ月で業界と政府との間での綱引きが本格化しそうです。さらに最近では、業界関係者から「国民皆保険の下、現状の薬価制度は限界ではないか」との声が聞かれ始めました。

 先日の会見で、製薬協の多田正世会長は、2年に1度引き下げられる現状の薬価制度について、再生医療用製品や個別化医療を念頭に、抜本的なところから検討を始める考えを明らかにしました。具体的には製薬協として医薬品の給付と償還の在り方について検討を行い、政策提言を進める見通しです。一方で、1月20日にメディア意見交換会を開いた再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)も、戸田雄三会長が再生医療等製品の償還価格について、現状の償還価格では十分な利益を確保できないとして、「再生医療に合った計算方式が必要」との見方を示しています。

FIRMがメディア意見交換会を開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/01/22/00092/

 現状を維持しつつ、さらに薬価を抑える政策を続けるのか――。自由薬価制度も含めた根本的な改革を進めるのか――。国内の薬価制度は、そろそろ先のことを考え始めるところに差し掛かっていると言えそうです。

 最後になりましたが、今年もどうぞよろしくお願いします。