読者の皆様、今年もよろしくお願いいたします。3週間に1回、金曜日のメルマガを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 新春早々、武田薬品工業が話題を提供してくれています。まず1月7日に、フランスEnterome Bioscience社との腸内細菌を標的とした共同研究開発契約の締結を発表しました。対象となる疾患は、潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患などの消化器系疾患です。

武田、仏Enterome社と腸内細菌を標的とする新薬創出で共同研究
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/01/07/00025/

 本日8日には、米NsGene社とパーキンソン病の細胞医薬に関する共同研究契約の締結を発表しました。この治療薬は成長因子の遺伝子を導入した細胞を有効成分としており、一種の遺伝子治療薬です。

 「腸内細菌を標的」と書くと何やらもっともらしく聞こえます。実際、腸内細菌は今最もホットな研究分野の1つでしょう。とはいうものの、要は排泄物に巣くう雑多な細菌集団を解析して、その結果を創薬に役立てようという話ですから、ちょっと前なら大手製薬企業は「なんだそれ?」と歯牙にもかけなかったのではないでしょうか。

 NsGene社との提携でも、リリースには「免疫遮断性のカプセルに遺伝子組換え細胞が充填されており」という語句があります。あのコンサバだった武田がよくこんなものに手を出すようになったなという感慨を抱くのは、私だけでしょうか。

 もちろん武田薬品をけなしているわけではありません。現在の経営環境では、実用性が不透明なプロジェクトでも少しの希望があるなら、積極的にリスクを取っていくのが製薬企業が生き残る道に思えます。

 少し前の話ですが、昨年の12月15日に、武田薬品と京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の共同研究プロジェクト、いわゆるT-CiRAの説明会がありました。当初、私は、これまでの武田薬品の研究方針からして、T-CiRAの主眼はiPS細胞を利用した創薬研究で、再生医療や細胞医薬はサブではないかと予想していました。

 しかし、12月に発表された具体的なプロジェクトを見てみると、意外と再生医療、細胞医薬に力が入っているなという印象を持ったのです。昨年4月にCEOに就任したChristophe Weber氏の意志が、目に見える形で現れ始めているのかもしれません。