1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。早いもので2015年もあとわずか1週間になりました。

 今回は、12月16日に都内で開催された科学技術振興機構(JST)のメディア懇談会の話題から紹介します。

 この10月にJSTの理事長に就任なさった濵口道成医学博士(前名古屋大学総長)のあいさつに続いて、お2人の研究者が話題提供の発表をしました。

 まずは、東京工業大学大学院理工学研究科教授/CRESTナノエレクトロニクス領域研究代表者の波多野睦子さんが「ダイヤモンド半導体の魅力」、次いで、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所教授/ERATO東山ライブホロニクスプロジェクト研究総括の東山哲也さんが「異分野融合がひらく未来:植物の受精のしくみ解明から」という演題名でした。

 このうちグリーンイノベーションと関係が深い話題は、後者の東山さんの講演でした。今年夏には、東山研究室の特任助教である丸山大輔さんに、日経バイオテクの連載「バイオイメージング最前線」の第3回の寄稿をいただきました。打ち合わせのときに、建物ができたばかりのトランスフォーマティブ生命分子研究所の最上階にあるライブイメージングセンターも、見学しました。

※日経バイオテクの関連記事

[2015-7-30]
日経バイオテク7月27日号「バイオイメージング最前線」(第3回)、
経時観察でまだまだ見つかる新現象
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150730/186582/

[2015-5-1]
日経バイオテク4月27日号「バイオイメージング最前線」(第1回)、
最先端の生命科学研究に不可欠なイメージング技術、日本の強みの最前線を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150501/184320/

[2014-2-25]
名大とJSTが非組み換えの遺伝子制御法、
S化オリゴDNAの培地添加で花粉管内の遺伝子発現を抑制
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140225/174376/

[2013-5-14]
名大WPIとJST、植物が花粉管の誘引を停止する機構発見、
人為的ヘテロ受精を実現
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130514/168106/

 今回の話題提供で東山さんは、今年秋に論文発表した植物を透明にするClearSee試薬の開発や、種の壁を担う分子であるルアー(LURE)ペプチドの研究の進捗などについてお話しでした。

 ルアーペプチドを改変することにより、あらゆる植物に使えるマスターキーとなるルアーの開発を進めているということです。現在のところ、ルアーを特定した植物は限られているのとのことですが、ルアーの開発は、交雑育種の効率を飛躍的に高めることに寄与します。

 種の壁を超えた交雑育種も可能になります。遺伝子組換え技術を用いているわけではありませんが、通常では交雑しない離れた種の交雑育種の場合には、カルタヘナ法の対象になる場合があるとのことです。

 今年は、ゲノム編集をはじめとするNPBT技術の進歩によって、トランスジーンを含まない育種が加速化していることと、カルタヘナ法との関連について記事をまとめることが多かったのですが、地球の人口を支える食料確保に寄与する科学技術の進歩はめざましい、と改めて思いました。

[2015-10-26]
日経バイオテク10月26日号「特集」、ゲノム編集育種の実用化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151026/188137/

[2015-10-22]
土浦の微生物生態学会、サントリーの青い花鉢植え、
「カルタヘナ近未来予測」特集【GreenInnovation Vol.294】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151022/188098/

[2015-9-25]
【機能性食品 Vol.206】仙台開催で水産学会500人と遺伝学会300人、
今日は日立市の森林総合研究所
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150927/187577/

[2015-8-27]
生物の多様性を守るためにゲノム編集技術を活用、
水産分野で進展【GreenInnovation Vol.290】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150827/187079/

 カルタヘナ法は、正式名称は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」であり、「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」を適切に運用するための日本国内の法律ですが、2015年は、生物多様性条約の3つの目的の1つ、遺伝資源のアクセスと利益配分(ABS)に関連する名古屋議定書(2010年のCOP10で採択)の批准をどうするか、も大きな問題になっています。

 12月の第1週には、東京大学弥生キャンパスの弥生講堂・一条ホールで開催されたシンポジウムやフォーラムを取材しました。

 12月2日の植物科学シンポジウム2015「ラボとフィールドを結ぶ植物科学」では、国立遺伝学研究所知的財産室ABS学術対策チームの鈴木睦昭さんが「海外遺伝資源のABSに関する現状報告」と題する発表を行いました。

[2015-6-3]
電源開発の海洋珪藻がインドネシアへ、JST-JICA事業でエビ養殖場を再生へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150602/185365/

 続く講演は、筑波大学生命環境系教授の江面浩さんの「ゲノム編集技術を使って農作物をデザインする」でした。江面さんらがその前の週末に筑波大で開催した植物ゲノム編集に関するシンポジウムについては記事まとめました。

[2015-11-30]
筑波大で植物ゲノム編集シンポ、
Minnesota大のVoytas氏と中国科学院Gao氏が2度目の来日
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/092800003/112900153/

 メール原稿の締め切り時間になりました。今年11月上旬に大筋合意したTPP(環太平洋経済連携協定)も、2015年の大きな話題でした。日経バイオテクの連載「機能性食材研究」でも、TPPの影響について記載しました。

[2015-12-9]
日経バイオテク12月7日号「機能性食材研究」(第24回)、
コンニャク(蒟蒻)イモ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/100900001/120300037/

 12月22日に農林水産省が発表した地理的表示保護制度(GI)の登録第1号も、ご覧いただければと思います。

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/index.html

 連載「機能性食材研究」でも、このGIの動向を反映してまいります。 来年(2016年)も、日経バイオテクをよろしくお願いします。

                   日経BP社
                   日経バイオテク編集
                   河田孝雄