皆様、こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。来週月曜日のメールマガジンはお休みしますので、今年最後の日経バイオテクONLINEメールとなります。

 まず、12月1日に開催した日経バイオテクプロフェッショナルセミナーの内容をまとめた記事を日経バイオテクONLINEに掲載したので、その報告です。

日経バイオテク12月21日号「リポート」、製薬企業におけるトランスレーショナルメディシンの課題
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/100900002/121700009/

 セミナーでの議論などは記事に詳しくまとめていますので、ぜひそちらをお読みいただきたいのですが、製薬企業が研究開発を効率化するために、後期臨床試験を実施する前に、バイオマーカーなどに基づいて「プロジェクトを進めない」という判断をいかにして下せるか、といったことが議論されました。で、ここからは記事では触れてはいないのですが、そのようにしてフェーズIIの前半ぐらいで「No Go」の判断を下した化合物が増えると、安全性については確認されたものの、臨床試験で有効性をきっちり確認しないまま、お蔵入りしてしまう化合物が増えていくことになります。従って、トランスレーショナルメディシンの次の段階では、こうした化合物を有効に活用するための、ドラッグリポジショニングの研究が重視されることになりそうだといった議論もあったので、紹介しておきます。

 さて、話題は変わって薬価改定のことです。12月21日の大臣折衝で、2016年度の診療報酬改定率が決まりました。全体の改定率は1.03%の引き下げで、診療報酬本体部分は0.49%のプラスですが、薬価は国費ベースで1.22%の引き下げとなります。しかも薬価は通常の改定率とは別に、市場拡大再算定による薬価の見直しにより0.19%、年間販売額が極めて大きい品目に対応する市場拡大再算定の特例の実施により0.28%が上乗せして引き下げられます。これらにより引き下げられる金額は、国費ベースで1700億円に上ります。

 市場拡大再算定の特例は、年間販売額が1000億円を超えかつ予想販売額の1.5倍以上の場合、もしくは、年間販売額が1500億円を超えかつ予想販売額の1.3倍以上の場合に、薬価を大きく見直すという制度で、後者の場合は最大50%まで薬価が引き下げられることになります。本日の中央社会保険医療協議会で示された2016年度の薬価制度改革の骨子(案)によると、上記の特例再算定は、「イノベーションの評価と国民皆保険の維持を両立する観点から、」実施することが明記されています。つまり、革新的な医薬品の創出は促すとしながらも、国民皆保険制度が維持されることが前提であると、国は改めて示した格好です。

 今回の診療報酬改定・薬価改定は社会保障と税の一体改革の一里塚であり、医療システム全体を改革しながら、より効率的な仕組みに変えて、医療費を抑制していくことが狙いとしてあります。その中では、医療機関だけでなく、医薬品の研究開発や製造、販売も当然変革が求められることになるでしょう。従って、医薬品、医療技術をより効率的に患者に届けるために、医療システムはどう在るべきで、その中で医薬品産業はどう在るべきかを真剣に考えなければ将来の展望は開けない。そんな変革期に直面していることを痛感させられます。医療費高騰の問題は何も日本だけのことではなく、例えばオバマケアによる改革が進められている米国でも、やはり医薬品産業は新たな在り方を模索する必要に迫られているのだと思います。

 日経バイオテクは来年も、そんな変化を先取りしながら、読者の皆様の役に立つ情報を提供していきたいと思います。

 日経バイオテクONLINEでは1月3日まで、緊急性の高いニュースを除いてニュースの配信をストップしますが、1月1日から3日にかけて、恒例の識者による「新春展望」や「記者の目」を掲載していく予定です。

 どうぞ皆様、よいお年をお迎えください。

                      日経バイオテク編集長 橋本宗明