皆様、こんにちは。日経バイオテクの橋本です。昨日、東京・品川で開催した「製薬企業におけるトランスレーショナルメディシンの課題」をタイトルとするセミナーに参加いただきありがとうございました。

 日本人のコントロールDNAデータベースの構築を目標に、製薬6社をメンバーとする日本PGxデータサイエンスコンソーシアム(JPDSC)との共催で開催するセミナーは、今回で6回目となります。今回は、製薬企業において、ゲノムなどの基礎的な研究成果を活用することで、臨床開発の可否を早期に予測できるようになったり、SNPなどで患者を層別化して臨床試験を実施することで、医薬品開発の成功確率が高まるとされながらも、なかなかその成果が上がらない状況について、どこに課題があるのかを議論しました。特に製薬企業の方を中心に、非常に多くの方にご参加いただき、どうもありがとうございました。登壇いただいた講師の先生方を含めて、参加者は非常に忌憚なく議論していただくことができました。

 パネルディスカッションの時間はたっぷりと用意したつもりが、気付けば予定した論点の全部を議論することができず、ちょっと反省しています。何らかの形で第2弾、第3弾のディスカッションの機会を設けられないかと考えているところです。ディスカッションなどの一部を、日経バイオテク本誌などに記事として掲載することも検討していますので、どうぞお楽しみに。

 さて、2015年11月30日に、武田薬品工業がイスラエルのTeva Pharmaceutical Industries社と、日本で合弁を設立する基本合意契約を締結したと発表しました。来年4月以降に発足する予定の新会社では、Teva社の後発医薬品と、武田薬品の特許期間が満了した医療用医薬品(いわゆる長期収載医薬品)を日本国内で販売する計画で、Teva社が51%を出資します。

 Teva社は言うまでもなく世界最大の後発品メーカーですが、日本でのプレゼンスは十分とは言えませんでした。2008年11月に興和との合弁の興和テバを設立して日本市場に本格参入。2011年5月に国内大手後発品メーカーの大洋薬品工業を買収し、興和テバの数式も全て買い取った上で、翌年4月に興和テバと大洋薬品工業を合併させて、テバ製薬を設立しました。

 ただし、大洋薬品は2010年に承認規格外の製品を流通させるなどの不祥事を起こし、品質に関して医師などの信頼を損なった状態でした。テバ製薬となった後も、2013年10月に「多品目の生産体制を継続することが困難」などの理由で81品目の販売を中止し、安定供給力に課題があるメーカーと見られてきました。

 今回、武田薬品との合弁を設立することによって、Teva社は国内トップメーカーである武田のブランド力と、安定供給に不可欠な流通網とを手に入れることになります。一方の武田薬品は、政府の後発医薬品推進策により長期収載品の薬価引き下げや、保険償還ルールの見直しが迫られる中で、長期収載品事業を合弁に移管してコスト構造を改め、競争力を確保しようというわけです。

 もっとも、新会社の過半数はTeva社が握るわけで、武田薬品としては長期収載品事業を切り離して、新薬メーカーとして生き残りを図ることになります。長期収載品の売り上げに依存している会社にとってはなかなか容易なことではありませんが、長期収載品の薬価引き下げにより、採算が悪化すれば、追随する動きが出てくることでしょう。

 この結果、日本の製薬産業にどのような地殻変動が引き起こされるか? この問題は改めて考えてみたいと思いますが、武田薬品の今回の決断は、日本の新薬メーカーの今後の在り方を示唆する重要なものとなるかもしれません。

 最後に少しだけ宣伝です。日経バイオテク編集部では12月に2冊の本を発行しました。

 1つはおなじみ日経バイオ年鑑の2016年版。今年はキーパーソンのインタビューを掲載したり、トレンドを解説する特別リポートを充実させるなどした点がポイントです。12月16日の発行で、14日までのお申し込みには予約特価を適用します。

https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20151013/187919/

 もう1つは、日経バイオテク本誌に7年余にわたって連載してきた「審査報告書」を、第1回目から87品目分まで収録した「革新的医薬品 審査のポイント」。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査報告書を、審査官のOBなどに読み解き、そのポイントを解説してもらったもので、今回、書籍化に際して領域別に再編成し、領域ごとのトレンドの解説を、編著者である北里大学大学院薬学研究科の成川衛准教授に書き下ろしてもらいました。製薬企業、CROはもとより、レギュラトリーサイエンスに関わる研究者、臨床研究に携わる医師も必携の書籍です。12月7日の発行です。ぜひお求めください。