こんにちは。三週に一度、メルマガを担当しています、副編集長の久保田です。

 iPS細胞由来分化細胞を始め、再生医療のリスクをどう推し量るのかという議論が活発化してきました。厚生労働省は先日、iPS細胞由来移植細胞の安全性の確保に向けて、「iPS細胞等を用いた臨床研究を実施する際の移植細胞の安全性評価の在り方に係る研究」を行う新たな研究班を設置。研究班では、最低限実施が望まれる検査や、疾患別のリスク評価、対象患者の選定方法、インフォームドコンセントの内容などが検討され、2015年度中に報告書をとりまとめる予定です。

厚労省、iPS細胞由来分化細胞の安全性評価で研究班設置
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/092800003/111900100/

 また、日本再生医療学会は明日、「安全な再生医療の実現化を目指して」と題するシンポジウムを開催するのですが、その案内文には再生医療について、「先端分野であるために、社会と現場を媒介するメディアの解説が十分ではなかったり、そもそも理解するために高度な知識が必要となることもあるなど、リスクやベネフィットが適切に認知されているのか、という問題があります」との問題意識が表されていました。

 いずれも、iPS細胞由来分化細胞などについて、(やろうと思えば)次世代シーケンサーを使った全ゲノム解析やメチローム解析、シングルセル解析など種々の解析を行うことはできるものの、その結果から臨床での安全性について結論を付けられるほど、現時点でサイエンスが蓄積されていない、ということを確認する作業のように思います。

 気になるのは、「研究のタイトルには、iPS細胞等とありますが、この『等』というのは何の細胞のことですか」と質問した記者に対し、厚労省の担当者が「ES細胞や体性幹細胞も分化させれば変異が入るので」とこぼしたこと。iPS細胞に比べ、世界で多数例に投与されてきた種類の細胞にも、何らかの影響が及ぶのではないかと、嫌な予感がしました。

 医療界では「使用経験」は安全性を評価するときの立派な根拠の1つ。だからこそ、再生医療新法でも、リスクに応じて第1種、第2種、第3種の分類ができたはず。iPS細胞の実用化を後押ししようとして、全体が停滞するのは避けたいところです。