皆様こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 11月5日、先週木曜日に日経バイオテクONLINEの心臓部である、記事や写真などのコンテンツの管理システムを更新しました。システム更新の際には、前日のアクセスランキングに同じ記事が複数表示されるなど、一時的に表示に誤りが生じましたことをおわびします。今回のシステム変更では、皆様に提供しているサービスを大きく変更するものではありませんが、システムの入れ替えに伴い「Webマスターの憂鬱 Premium」で行っていた月間100本までの記事閲覧数の制限を廃止しました。また、今月のポイント残数が更新のタイミングでリセットされています。

 今後、編集部では皆様により多くの記事を読んでいただけるように、サイトのデザインを見直したり、新しい連載記事を企画したりしていくつもりです。より役に立ち、満足いただける記事の提供を心掛けていきますので、今後とも日経バイオテクをよろしくお願いします。

 さて昨日、アステラス製薬が総額は37900万ドル(約467億万円)を投じて米Ocata Therapeutics社を買収すると発表しました。Ocata社は、ヒト胚性幹(hES)細胞を網膜色素上皮(RPE)細胞に分化させて網膜下に注入する眼科領域の再生医療製品を開発中で、萎縮型(ドライ型)加齢黄斑変性を対象にES由来RPE細胞のフェーズIIを米国で実施しているほか、スタッガード病を対象に同じ細胞を注入するフェーズI/IIを実施していています。

アステラス、約467億円で米Ocata社を買収へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/092800003/111000039/

アステラス製薬、Ocata社買収の説明会詳報
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/092800003/111000044/

 RPE細胞を用いた加齢黄斑変性(AMD)の治療は、ご存じの通り日本では理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらがiPS細胞由来の細胞を用いて滲出型(ウエット型)AMDを対象とした臨床研究を実施している他、バイオベンチャーのヘリオスが大日本住友製薬と共同で、やはりiPS細胞由来の細胞を用いて、ウェット型、ドライ型AMDそれぞれに対する開発を進めています。今回、アステラスが買収することになったOcata社は、前身を米Advanced Cell Technology社といい、2011年に米食品医薬品局(FDA)の承認を得て、hESC由来のRPE細胞をドライ型AMDに移植する臨床試験を開始しています。つまり、細胞がES細胞由来かiPS細胞由来か、などの違いはありますが、大日本住友とアステラスという日本の製薬企業同士が再生医療製品の開発でしのぎを削ることになったわけです。

 ちょっと前まで日本の製薬企業における再生医療関連の研究というと、患者由来のiPS細胞を用いた病態研究や、化合物のスクリーニング系の開発が目的で、細胞医薬や再生医療製品を自ら手掛けようとするところはほとんどないと言われていました。ところが、大日本住友がヘリオスやサンバイオと提携し、今回はアステラスがOcata社買収を通じて再生医療製品の開発に進出。今年4月に京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と包括的共同研究契約を締結した武田薬品工業も、再生医療製品の研究を進めているものと見られます。

 一方で欧米の製薬企業はというと、スイスNovartis社が自家遺伝子治療であるCART細胞療法の臨床開発を進めている他、米Pfizer社やフランスSanofi社傘下の米Genzyme社、米Bristol-Myers Squibb(BMS)社、スイスRoche社などが遺伝治療の開発に乗り出しています。製薬産業において、再生医療、細胞医薬、遺伝子治療の研究開発を手掛けるのは今やニッチやユニークな戦略ではなく、1つのトレンドとなっているといっていいのです。低分子化合物から抗体医薬や蛋白質医薬、さらには再生医療、細胞医薬へという研究開発の大きなトレンドが見て取れます。

 逆に言うと、これから再生医療や細胞医薬の研究開発競争が激化するのは必至です。その意味で、今回のアステラスの決断は吉と出るか、凶と出るか。その行方に注目していきたいと思います。

 最後になりますが、12月1日に東京・品川で開催するセミナー「製薬企業におけるトランスレーショナルメディシンの課題」は鋭意参加者募集をしています。パネルディスカッションにたっぷりと時間を取って議論したいと考えており、皆様の参加を心よりお待ちしています。詳細は下記サイトをご覧ください。

http://nkbp.jp/1POleZW

 本日はこの辺りで失礼します。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明