キャリアアドバイザーの業務日誌(第11回)

タイミングを間違えてはいけない!転職における「給与交渉」【前編】

(2018.11.21 08:00)
増間大樹=リクルートキャリア LS & HC(Life Science & HealthCare)キャリアアドバイザー マネジャー

 「せっかく転職するなら、年収を上げたい」
――そう希望する人は多い。

 では、応募先企業に給与額アップの交渉を行うとしたら、皆さんはどのタイミングが適切と考えるだろうか。

1)1次~2次面接の段階
2)内定直前、最終面接の段階
3)正式に内定が出た後

 日々転職希望者の皆さんにお会いしている私の感覚では、(3)と考えている人が多い。結論から言うと、それは誤りだ。内定が出た後、あるいは内定が出る直前の段階で、企業側から提示された年収額に対してアップ交渉を始めると、最悪の場合、内定が白紙に戻されることもある。

 特に、製薬・バイオ業界に多い「外資系企業」に応募した場合は、早い段階から年収額のすり合わせを進めていった方がいい。内定前に本国の人事マネジャー・人事役員クラスが決裁した金額について、日本から差し戻して再検討してもらうのは現実的ではないからだ。

 年収交渉を始めるのは、1次面接が終わった辺りからが適切。そしてもちろん、企業側の反応を見ながら、適切なタイミングを計ることが大切である。

 年収アップ交渉を持ちかけて成功した事例、失敗した事例をご紹介しよう。

早い段階から目標額を定め、戦略を練ったKさん

 Kさん(30代)が転職にあたって希望した年収額は「前職より150万円アップ」。子どもが希望する私立に進学させるためにはお金がかかる、しかし奥さんが体調を崩して働けなくなったため、自分1人で稼がなければならない…というのが理由だった。

 Kさんは比較的給与水準が低い企業に在籍していたため、給与水準が高めの企業に移れば仕事内容はそのままでも50~100万円程度の年収アップは可能。しかし、150万もアップとなるとそう簡単ではない。

 応募初期の段階で、私はKさんに提案した。

 「年収150万円アップでも採用したい、と相手企業に思っていただけるように戦略を立てましょう」

 私とKさんは、志望先企業で活かせる経験・実績を掘り起こし、専門性のアピールを強化。また、企業側から出された課題に時間をかけて取り組み、徹底的に完成度を高めてもらった。この企業、課題の出来は合否にそこまで影響はないのだが、専門性の高い人材が評価されることは事前に確認をしていた。

 その甲斐もあり、相手企業はKさんを高く評価。それを確認できたタイミングで、私は企業側へ「実はKさんには家庭の事情があって…」と、Kさんの希望を伝えた。すると、事情を理解した採用担当者は本国に対し、Kさんの希望に沿う額で稟議を上げてくれた。結果、年収150万円アップの額には少し届かなかったのだが、特別に「入社一時金支給」という手厚い処遇で迎えられた。

 これは応募初期の段階から、求職者とエージェントが一緒に戦略を立てて進め、適切なタイミングで採用担当者を味方に付けられた好事例といえる。

 一方、給与交渉を始めるタイミングを誤ったがために、危うく転職失敗となりかけた事例もある。次回・後編ではその失敗事例とともに、給与交渉で心がけるべきポイントについてお話しする。

転職時の賃金変動状況
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転職時の決定賃金は右肩上がりの傾向
写真はイメージ(提供:PIXTA)  この連載は、製薬、バイオ関連の研究職の人材流動化が進む中で、研究者としてやってきた人にはどのようなキャリアチェンジの可能性があるのか、落とし穴はないのかなど、キャリアアドバイザーの経験を通して紹介してもらうものです。企業やアカデミアの研究者がこれからの自身のキャリアについて考える一助にしていただければと思います。リクルートキャリアのキャリアアドバイザーの方に持ち回りで執筆してもらいます(写真はイメージ、提供:PIXTA)。

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