キャリアアドバイザーの業務日誌(第17回)

稀有な転職チャンスをつかんだ、プライマリー領域のMRの成功事例

(2019.06.11 08:00)
峰本佳代子=リクルートキャリア ハイキャリア・グローバルコンサルティング部 医薬専門職担当

「これからもMRを続けたい。プライマリーの経験しかありませんが、応募できる求人はあるでしょうか」

Yさん(40代・男性)は20代の頃に異業種から医薬情報担当者(MR)に転職。CSO(Contract Sales Organization、医薬品販売業務受託機関)で経験を積んで30代で製薬企業に転職と、順調なキャリアを歩んできた。しかしパイプラインが減少する中、会社は早期退職へと動き始めた。危機感を抱いたYさんはリクルートエージェントに相談に訪れた。

その時点では、プライマリー領域のMR(以下、プライマリーMR)経験者を対象とする求人案件はなかった。プライマリーとは、主に生活習慣病領域をはじめとする薬の情報を取り扱う部門だ。近年のMR採用といえば、オンコロジー領域かスペシャリティ領域が中心。その他でも、バイオ医薬品もしくはバイオベンチャーでオーファンドラックを扱うような案件がほとんどを占める。

MR経験を生かして異業種に移る道もあるが、YさんはMRを続ける意思が固かった。異業種への転職では大幅な年収ダウンとなる可能性が高い。お子さんに教育費がかかる時期であり、収入を下げられないためだ。そして何より、MRという仕事に誇りを持っていた。

「応募できる求人案件が出るまで待ちます」。Yさんは長期戦を覚悟した。

非常にラッキーなことに、チャンスは3カ月後に訪れた。外資系バイオ医薬品メーカー・X社が100人近い大規模採用に乗り出したのだ。世界トップシェアを持ちながら、日本ではまだシェアが低い製品の営業強化が目的。応募条件では、プライマリーMR経験者も対象とされた。プライマリーMRの方にとっては、バイオ医薬品を扱うポジションに移れる、いわばキャリアアップのチャンスとなる。

「今日、ご希望の求人が出ました」。すぐにYさんに伝えると、即、応募を決意。無事、採用に至った。

Yさんの転職成功の要因を振り返ると、4つのポイントが挙げられる。

●求人が出たらタイムリーに情報を得られるようにしておいた

プライマリーMRを対象とするMR求人案件は少ない。しかし、X社のケースと同様、世界で売れている製品の日本市場での営業強化、あるいは発売するタイミングでの大規模採用案件が、年1回程度のペースで発生する。Yさんにようにエージェントに登録しておき、求人が出たらすぐに情報をキャッチできるようにしておくのが得策といえる。

●応募書類を準備しておき、求人が出た日に応募した

履歴書・職務経歴書の作成を事前に済ませておき、求人が出たその日のうちにエントリーした。Yさんと同じ状況に置かれているMRは多く、X社には応募が殺到したが、Yさんは最も早い段階で選考フローに乗れたため、スムーズに運んだ。選考も後半になると、既に内定を出した人と比較して選ぶことになるため、ハードルが高くなる傾向がある。実際、Yさんと変わらないキャリアの方々が、選考後半では続々と敗退した。

●職務経歴書で、成功事例がしっかり伝わるようにしておいた

最初に転職相談を受けたとき、Yさんが作成した職務経歴書を拝見すると、他のMR経験者とほぼ似たような内容だった。(※プライマリーMRは「人間関係構築力」や「フットワークの軽さ」などを自己PR欄に記す傾向が強い)。そこで、Yさん独自の成功事例をストーリー立てで記すようにアドバイス。課題設定から具体的な戦略や取り組み、それによって挙げた実績までを具体的に記載した結果、書類選考通過につながった。

●面接で、仕事に対する「想い」を語れるようにしておいた

面接前に、「自分の強みの『棚卸し』をしましょう」と提案。対話する中で、Yさんが扱う製品が患者さんの役に立ったことを実感したというエピソードが出てきた。その体験を語る様子から、「患者さんに貢献したい」という想いの強さを感じ、「それを面接でもしっかり伝えましょう」とアドバイス。面接の場で、MRの仕事への想いや使命感をしっかり語れたことが評価につながった。

MR経験を活かし、異業種へのキャリアチェンジも可能

YさんはMRの仕事にこだわり、転職を実現させた。しかし、プライマリーMRにとっては、これからも転職環境は厳しい状況が続く。そこで、MR経験を活かし、異業種に移る選択肢もお伝えしておきたい。

以下は、実際にMRから転職を果たしている事例だ。医療業界の知識、ドクターをはじめとする医療関連職とのコミュニケーションスキル、プレゼンテーションスキルなどが生かせる。

●人材業界の営業/キャリアアドバイザー

人材紹介会社で、ヘルスケア領域を担当。医療業界を専門とする人材会社も多い。製薬・医療機器メーカーや医療機関に対する法人営業、あるいはドクターや看護師など医療関連職を対象としたキャリアアドバイザーとして活動する。

●医療機器メーカーの営業

若手層を対象とした求人が多い。

●ヘルステック系企業の営業

ヘルスケア領域で、テクノロジーを生かしたサービスを提供するベンチャー企業など。

●M&A、事業承継関連のコンサルタント

開業医を担当し、医院の承継問題などにも向き合ってきたMRが、M&Aコンサルティング企業に転職し、事業承継なども含めたコンサルティングに従事する事例もある。フットワークの軽さや地域の医療現場の課題を捉えていることが評価される。

MRは、医療の専門知識に限らず、情報収集・コミュニケーション・プレゼンテーションなどの面で高いスキルを身に付けている。それらを活かせる可能性を、視野を広げて探ってみていただきたい。

著者プロフィール:
リクルートキャリア  ハイキャリア・グローバルコンサルティング部にてヘルスケア業界のハイキャリア(年収800万円~)求人を担当。 MR案件を中心に、研究、臨床開発、品質、生産、薬事、マーケ、学術(メディカル)など内資・外資の大手医薬品メーカーの案件を中心に、営業組織立ち上げやオーファン領域、医療×ITのヘルステックスタートアップ企業などの求人開拓などにも従事。

写真はイメージ(提供:PIXTA)  この連載は、製薬、バイオ関連の研究職の人材流動化が進む中で、研究者としてやってきた人にはどのようなキャリアチェンジの可能性があるのか、落とし穴はないのかなど、キャリアアドバイザーの経験を通して紹介してもらうものです。企業やアカデミアの研究者がこれからの自身のキャリアについて考える一助にしていただければと思います。リクルートキャリアのキャリアアドバイザーの方に持ち回りで執筆してもらいます(写真はイメージ、提供:PIXTA)。

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