新春展望2018

「話せばわかる」かは分からない。でも、話す必要と価値はある

(2018.01.03 08:00)
野村広之進=みずほ証券エクイティ調査部シニアアナリスト

 あけましておめでとうございます。

 2017年は我々がリストしている40社強の上場バイオ企業の時価総額は+21.5%(12月22日時点)と日経平均並みのパフォーマンスでしたが、マザーズ指数は下回り、全体としては「そこそこ」の相場となりました。ただ、ここで詳述は避けますが、2018年は上場バイオ企業で多くのピボタル試験の結果発表が期待されます。2018年が、日本のバイオセクター飛躍の1年となることを期待しています。

 2017年には2つの象徴的な出来事がありました。バイオ企業の経営陣と資金調達のグローバル化です。2016年にPeter Bains氏を社長に迎えたそーせいグループに続き、2017年9月にペプチドリームもPatrick Reid氏が新社長に就任、これで創薬ベンチャーの時価総額上位2社のトップはいずれも日本人でなくなりました。また、11月にそーせいグループは、約200億円の資金調達を海外投資家に限定して行いました。

 これらはバイオ企業がグローバル化する中で当然な流れである一方で、バイオに詳しい投資家が日本にほとんどいない、日本の資金調達環境が整っていないことを受けた「ジャパンパッシング」だといった声も聞かれます。日経平均株価がバブル崩壊後の高値を25年ぶりに更新した日本の株式市場も、まだまだバイオ企業に対して十分に機能していないということでしょう。一関係者であるアナリストとしては、2018年に向けより気が引き締まる思いです。

 12月に米国投資家を訪問した時には「日本はバイオ企業がIPOできるのにPO(上場後の資金調達)できないのはおかしい」「なんでバイオ企業の株価が赤字/黒字で判断されるのか?」と厳しく追及されました。一方、別の投資家は日本でバイオ企業を集めた投資家向けイベントに参加した後に「中身は面白いが何社かのプレゼンテーションが伝わりにくい。あれだとJP Morgan HealthCare Conferenceでは誰も振り向かない」「英語版のHPが貧弱で海外投資家が投資するのは難しい」と言い残して帰国していきました。

 当然、企業も投資家も個社/個人でステージや戦略が全く異なり、個別事情も多いことでしょう。一方でバイオセクターは、企業側からみれば資金調達の面から、投資家側からみれば期待リターンの大きさから、企業と投資家の対話の必要と価値が最も大きいセクターの一つです。また私自身、11月に経済産業省が立ち上げた「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会」に参加させていただいており、バイオ企業の事業成功や株価成長はもとより、セクターの課題整理やバイオ企業と投資家の相互理解が進む1年になるよう、微力ながら精一杯、励んで参ります。

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