新春展望2018

日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC)誕生

~ヒトマイクロバイオーム研究の産業応用の促進・加速を目指して~
(2018.01.01 07:00)
寺内淳=JMBC運営委員長(小野薬品研究プロジェクト統括部プロジェクト評価室室長)

 新年あけましておめでとうございます。昨年の本新春展望においてもマイクロバイオームが多くの方から取り上げられており、さらに今回本寄稿の機会を頂きましたことは引き続き注目すべき研究領域と認識されていると感じています。

 さて、2017年はヒトマイクロバイオームの産業応用における促進・加速を目指して企業によるコンソーシアム「一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアム(Japan Microbiome Consortium, JMBC)を設立した記念すべき一年でした(http://www.jmbc.life/)。JMBCは現在34団体が参画して4月より活動を開始しております。

 JMBCでは、ヒトマイクロバイオームの産業応用における前競争領域であるマイクロバイオーム解析プロトコルの標準化とそのプロトコルに基づいた日本国内における健常人データベースの構築を目指しています。研究データに基づいた産業化においては、得られるデータの信頼性・再現性や安定性が最も重要です。さらには様々な施設で標準プロトコルを採用し、データを取得することで、施設間でデータを統合して解析することが可能となると考えます。豊富なデータを基にすることでエビデンスレベルが上がり、その結果として新規サービスや医薬品・食品・化粧品等の新製品創出が期待できます。これらを実現するために産業化に向けたプロトコルの標準化を目指していますが、最先端の研究を進めておられるアカデミアの諸先生方のプロトコルを標準化することを想定しているわけではないことをご理解いただきたいと思います。

 海外、特に米国においては、すでにHuman Microbiome Project (HMP)が開始されて10年以上が経過し、2番目のiHMPも終了しています。HMPの成果の多くは公開されており、そのような環境下ですでに多くのベンチャー企業が生まれています。中でも製薬業界では、糞便移植に端を発した医療のパラダイムシフトに向けた革新的な創薬アプローチやバイオマーカーへの応用への動きが一層加速しています。残念ながら、国内においては、本研究領域に関して、注目度は高いものの、米国のスピード感と比べると物足りない部分は大きいと感じているところです。しかしながら、本研究領域では、民族・地域による影響が大きいことが知られており、国内において、地域・年齢・性等について多様かつ精緻な健常人データベースを構築することが、将来の産業応用に向けた大変重要な基盤になると感じています。可能な限り早急にデータベースを構築し、得られるデータを活用することにより、我々産業界が新たな革新的製品を創出し、健康・医療に貢献したいと願っています。

 現在、JMBC内に設置した研究開発部会において標準化を目指した推奨プロトコルの策定を進めており、測定フローにおいてバイアスが出るリスクの高い点に着目したプロトコル検証試験や大規模健常人データ取得の実現性を小規模で検証するパイロットスタディについて精力的に意見交換し、詳細に検討しております。また、研究活動を実施する上で必要な倫理等の制度を整備する制度部会も立ち上げ、本年度中の研究実施、データ取得に向けて精力的に準備を進めています。さらには、様々な測定においては、データの信頼性や再現性を担保するためのバリデーションのツールが必要となるため、JMBCでは国内ヒトマイクロバイオーム測定のバリデーションツール、例えば汎用の日本人用Mock Communityの開発に関しても何らかの形で関与することで、迅速な開発と供給に繋げたいと考えています。

 JMBCのもう一つの役割として、国内における産学官の連携強化に貢献できればと考えています。すなわち、JMBCが企業コンソーシアムである特徴を活かして、産業の視点からの産学官連携を促進し、様々なステークホルダーを巻き込むことで、本領域における国内の研究開発を活性化することができればとも思っています。既に設立記念シンポジウムや産業総合技術研究所との交流会を開催し、さらに定期的にアカデミア交流会・企業交流会等も進める計画にしております。

 本コンソーシアムは前競争領域において、参画企業が“協奏“的に活動することで、研究基盤構築という“共創“を目指しています。最終的には個別企業が基盤を活用し健全な”競争“をしながら革新的で”競争“力のある製品を次々に創出できることを期待しています。ヒトマイクロバイオームでホストとマイクロバイオータが共生しているように産業界において各企業がJMBC活動を通じて共生し、発展していくことを目指していきたいと考えています。JMBCでは昨年ホームページを立ち上げました(http://www.jmbc.life/)。ホームページを活用しながら、活動や方針などをより積極的に発信していきます。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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