新春展望2018

2018を迎えて

(2018.01.02 08:00)
松本俊一郎=アステラス製薬研究本部I&I研究所所長

 アステラス製薬は2017年12月初旬に米国Massachusetts州Cambridge拠点のバイオベンチャー企業、米Mitobridge社を完全子会社化する独占的オプション権を行使した。2013年に複数の米国ベンチャーキャピタル(VC)と共同創設した同社に対しアステラス製薬は、将来の買収オプション権を獲得したうえで研究提携を続けてきた(Build-to-Buyモデルともいう)。アステラスではこの他複数の米国バイオベンチャー企業と同様モデルでの研究提携を実践しているが、個々案件の契約締結における検討過程では企業VCであるAstellas Venture Management LLCが15年以上にわたって培ってきた業界ノウハウを最大活用してきた。

 製薬企業にとって社内研究所だけに依存したR&Dの完全内製化では、イノベーションの継続創出がもはや不可能な時代になっている。アステラス製薬としても今後の持続的な企業成長を体現するためには、バイオベンチャー企業に加えて種々の機能セクター(アカデミア、VC、開発業務受託機関)とのR&D早期段階からの提携実現に向け、自社の企業VCを含めたビジネスノウハウを最大活用しながら数多くの萌芽イノベーションを追及することが重要と考えている。

 さて2018年である。前年2017年は、近年の先進各国での医療費抑制政策や中国経済の成長鈍化さらに英国のEU離脱決定がマクロ経済に及ぼす影響といった負の要因が懸念された中でスタートしたが、米国ではFDAの新薬承認件数、新製品の売上予想そしてNASDAQ Biotechnology Indexが堅調であった。そのため2018年初頭も製薬業界が好調な景況感を保持した投資対象と見なされると考えている。このトレンドは直近の数年間に大型資金を調達した米国VCにとって追い風となり、世界のバイオベンチャー産業の枢軸地である・米国東西海岸(ボストン・ケンブリッジ地域と、サンフランシスコ湾領域)に由来するがん領域案件を中心に積極的な資金投下がなされると、期待する。

 一方で2017年末のトランプ米大統領によるエルサレム首都認定や税制改革法案への署名がグローバル経済へ及ぼす影響は無視できない。こうした生命科学以外の諸要因によるバイオベンチャー投資環境への波及にも注視しつつも生命科学イノベーションの新しい種を積極的に追及する一年としたい。

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