新春展望2018

社会の持続的な成長に寄与するイノベーションを目指して

(2018.01.02 08:00)
塩田武司=塩野義製薬執行役員・医薬研究本部長

 先進国の中でも高齢化の最先端を走る日本において、医療・社会保障費の高騰は国家の存亡をも左右する解決すべき喫緊の課題となっています。そのような中、薬価に対するプレッシャーは年々厳しくなり、2018年度国家予算においては薬価が医療費抑制の標的となり、これまでにない強い薬価抑制の力学が働く結果となりました。また新薬創出等加算の適用もより厳しく制限される方向に改定されており、今、将に創薬型製薬企業が創出すべきイノベーションの価値、また企業そのもののあり様が問われています。

 塩野義製薬は現在、「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」という全社ビジョンを掲げ、 2020年に向けた中期経営計画を進めています。単に将来の医療ニーズに応えることだけを考えていてはもはや創薬型製薬企業の成長は行き詰まり、社会ニーズに応えられる創薬イノベーションを創出することで、私たち創薬型製薬企業は生き残り、成長して行けるものと考えます。

 社会ニーズに応える創薬とはどのようなものでしょうか?

 健康寿命の延伸に寄与し、働き手となる人々を支え、また在宅治療などの将来の医療体制ニーズに応えられることなどが考えられ、そして何よりもそれらを経済的に研究開発することで、社会保障制度と共存できる価格で提供することが求められます。あるべき創薬イノベーションとは製薬企業の独りよがりではなく、社会が納得する、社会の持続的な成長に寄与するイノベーションであるべきだと考えます。

 シオノギにおいては、感染症、疼痛・神経疾患をコア疾患領域として定め、超高齢社会、或いはグローバルヘルスにおける課題解決に向けた創薬研究に取り組んでいます。企業としても成長して行くためには、革新的な新薬を継続的に創出し続けることが求められ、そのためには、連続的に新薬を創出し得る独自の創薬プラットフォームを獲得する必要があります。創薬プラットフォームとは、低分子創薬、キナーゼ創薬、抗体創薬、核酸創薬、細胞医療といったもので、一度構築出来ると、同じノウハウから複数の開発品が創出出来るような社内研究アセットを意味します。シオノギにおいては、低分子創薬を基本プラットフォームとし、さらにその上に感染症βラクタム創薬や抗ウィルス創薬といったよりフォーカスした強みを構築することで、Cefiderocol(緑膿菌強化型抗グラム陰性菌セファロスポリン:フェーズ3)やS-033188(抗インフルエンザ薬:国内申請中)といった革新的な感染症治療薬を連続的に創出することに成功しています。

 ただし、低分子創薬の難度は年々高まり、これまでの延長線上の取り組みでは継続的なアウトプットの創出は難しくなっています。急速に進む技術革新を取り入れつつも、自社研究力を常に高めることで、シオノギならではの技術活用から他社では生み出し得ないイノベーションを創出する、そのような取り組みが必要となっています。シオノギにおいては、低分子を基軸としつつも、強みである化学力を活かした中分子創薬(ペプチド及び核酸)への展開について、オープンイノベーションを活用しつつ加速しています。合成化学力は日本の強みといえる研究領域であり、この強みを活かせる中分子創薬は日本の創薬研究の活路という意味でも産官学が連携しながら進めるべき取り組みだと言えます。

 超高齢社会の到来による急激な社会環境の変化を見据え、将来の社会ニーズに応えられる新薬を連続的に創出するためには、強い創薬プラットフォームを持ちつつ、将来の社会ニーズを的確に捉えて創薬コンセプトに落とし込める想像力、構想力を有する人財が何よりも求められます。IoT、AIの活用は当然進めるにしても、溢れる情報に振り回されず、将来の医療・社会ニーズに新たな価値をもたらすような創薬研究が進められる、センス溢れる創薬研究者の育成を進め、社会から必要とされる製薬企業に成長することを目指します。

日経バイオテク お薦めの専門書籍・セミナー

  • 製造業ゲームチェンジ ― 「バイオエコノミー」の衝撃 <テクノロジーNEXT 2018>
    2018年6月13日(水)開催 [東京・御成門]
    セルロースナノファイバー、スマートセルインダストリー、DIYバイオなど、製造業でも台頭してきたバイオ関連技術が、自動車や電機、素材、エネルギー業界などに与えるインパクト。その将来性、応用可能性を探る。
  • 「日経バイオ年鑑2018」<新刊>
    最新データからわかる、バイオ分野の[開発][市場][産業]動向。バイオ事業戦略の頼れる味方。自社のR&D戦略を描くために、マクロな視点で将来を展望する一冊です。
  • 「バイオベンチャー大全 2017-2018」
    国内の未上場バイオベンチャーの企業データをすべて網羅しました。提携先を探し求める製薬会社にとって、投資先を探るベンチャーキャピタルにとって、自社の経営戦略を見極めるうえで有益となる重要情報を開示します。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧