新春展望2018

新薬と高額保険薬価、日本の薬価制度の限界?

(2018.01.02 08:00)
荒井好裕=ソレイジア・ファーマ社長

 2017年は、薬価に関する大きな話題がありました。スイスNovartis社より開発されたキメラ抗原受容体T細胞(CART)療法である「Kymriah」(CTL019)が、小児及び若年者の再発・難治性(r/r)B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対する効能効果で承認されましたが、驚くべきは、その治療費が一人当たり47万5000ドルという超高額であったことに加え、治療費について「成功報酬型」を取り入れると表明したことです。即ち、1ヵ月以内に治療効果が認められなかった場合には治療費を請求しないというものでした。

 この成功報酬型治療費の考え方が、例え米国における医療保険システムに適用可能であり、また全米一部地域での導入だとしても、皆保険医療制度が充実している日本においては、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(ニボルマブ)に関する緊急薬価改定の実施による50%ダウンのニュースと共に、製薬企業の存続に関る重大ニュースであるだけでなく、日本の薬価制度を根底から揺るがすトピックです。

 この問題の根底には、医学・科学の進歩による新たながん免疫治療(免疫チェックポイント阻害やCART療法など)の実現という患者にとっての大きな福音がある反面、研究開発型製薬企業としては莫大な開発費を補てんしなければ経営が成り立たないという企業論理から、高額治療費(薬価)が避けられない両面性があります。

 2018年はがん免疫療法だけでなく、遺伝子治療や再生医療など、最先端の知見と研究結果を基に新たな治療方法や新薬の開発が進む流れはますます大きくなり、翻って、超高額医療や超高額保険薬価の問題は、医療費削減が大きな問題として取り上げられている中でより重大な局面を迎えるものと思います。患者のためによりよい治療を提供するという大きな理念を共有しながらも、立場と責任が異なるために、根本的な解決には相当の時間と苦労が伴うと思いますが、政府、規制当局、及び企業の大いなる知恵で乗り切ってもらいたいと思います。

 ソレイジア・ファーマ株式会社は、2017年3月に会社としての大きなマイルストーンである株式上場を果たし、事業面では3号製品「episil」の日本での承認及び4号製品「PledOx」のアジア権利を獲得し、大きく前進できたと思います。2018年は、2017年中に達成できなかった1号製品「Sancuso」の承認の他、「episil」の中国での承認などのマイルストーンの達成、また2号製品「Darinaparsin」や「PledOx」の開発など、当社のミッションである「患者の明るい未来のためにより良い医薬品を提供する」の達成のために、さらに事業を進めていきたいと思います。引き続いてのご支援並びにご指導の程、宜しくお願い申し上げます。

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