新春展望2018

ベンチャーキャピタルによる医薬品創出のエコシステム構築への挑戦

(2018.01.03 08:00)
長谷川宏之=三菱UFJキャピタル執行役員ライフサイエンス部長

 三菱UFJキャピタル(以下MUCAP)は、2017年2月にライフサイエンス分野に特化したファンド(三菱UFJライフサイエンス1号投資事業有限責任組合、以下LSファンド)を立ち上げ、大きな一歩を踏み出しました。

 私は2004年に製薬会社からベンチャーキャピタル(以下VC)業界に飛び込み、13年以上バイオベンチャー(VB)への投資活動に関わってきましたが、このLSファンドの新設はたいへん感慨深いです。せっかく「1号」と命名しておりますので、インパクトある投資ポートフォリオを築き、業界に対しさらに質量ともに存在感を示す「2号」の立ち上げにつなげていきたいと考えています。

 MUCAPはあらゆる業種に対する投資を行っており、これまで1つの総合ファンドからライフサイエンス(LS)分野に対しポートフォリオの一部として投資しておりました。新設したLSファンドの規模は100億円、三菱東京UFJ銀行とMUCAPとで50対50で出資した二人組合です。ファンド期間は12年と一般的なVCファンド(10年)よりも長めに設定しています。投資対象は、医薬品、再生医療製品、医療機器(デジタルヘルス含む)、診断薬であり、MUCAPの投資活動を通じてアンメット・メディカル・ニーズへの対応に対し貢献していきます。

 LSファンドは、VBの王道である「創薬」への投資に注力していきます。国内のファンドで創薬に注力すると標榜しているファンドはまだ少ないと思います。医薬品創出のエコシステムのどこにリスクマネーが必要かを考え、「アカデミア創薬」「製薬カーブアウト」「製薬プロジェクトファイナンス」の3つの領域としました。また、従来通りの既に設立されたVBに対するフォロワー投資も行っていきます。

 「アカデミア創薬」は公的資金を活用し、臨床段階あるいは臨床段階に向けた準備している開発品に対して、将来の適応症の広がり、製薬会社との提携可能性を高めるためにVBを新設し投資していくものです。「カーブアウト」は、製薬会社の組織再編やパイプライン絞り込みの中でノンコア分野となった開発品のカーブアウトVBに対する投資です。「プロジェクトファイナンス」は、製薬会社の自社開発プロジェクトにおける外部資金活用ニーズに対応するものです。

 過去の大学発VBに対する投資活動から、研究開発の進展や製薬会社との提携を進める上で、(1)知的財産、(2)非臨床試験パッケージ、(3)製造/CMC、(4)開発戦略、(5)医薬ニーズ──の5つが課題になることを経験しています。「目利き」を行う一人のスーパーマンに委ねることは現実的には難しく、持続可能性にも懸念があります。MUCAPは専門会社・組織に支援いただき、VB投資・育成のためのアドバイザリー体制を構築することといたしました。

 武田薬品工業のCMC部門の一部を別会社化して現在は武州製薬グループとなったスペラファーマと、同じく武田薬品の創薬研究部門の一部を承継したAxcelead Drug Discovery Partnersと、それぞれ医薬品製造/CMC、非臨床研究についての実現可能性評価を行うための包括的な委受託契約を締結しました(9月7日、12月21日)。また、開発戦略についてはEPSホールディングスと契約を締結しました(9月29日)。さらに医療ニーズについては現在準備中で近々リリースする予定です。知的財産は契約した特許事務所に特許調査等を依頼しております。

 これまでに「カーブアウト」は、武田薬品で癌領域創薬研究のメンバーにより創業されたChordia Therapeuticsに対し京都大イノベーションキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルとともに投資いたしました(11月22日)。また、「プロジェクトファイナンス」については、あすか製薬が実施している子宮筋腫治療薬の開発加速化のため投資スキームを構築し投資いたしました(12月20日)。現在、「アカデミア創薬」については案件構築中です。

 MUCAPにとって、OiDE ファンドによるオープンイノベーション活動も重要です。MUCAPは第一三共とともにアカデミアにある新規創薬基盤技術となり得る研究成果に対しリスクマネーを活用し育成することを目的に、2013年にOiDEファンドを開始しました。同ファンドでは、2016年に「毛細血管幹細胞」をテーマに旭川医科大と共同研究を行うためにOiDE CapiSEAという新会社を設立し、2017年には「新規癌免疫療法」をテーマに医薬基盤研究所と共同研究を行うために2つ目の新会社OiDE Adjubileeを設立しました。3件目については既に投資決定しており、近々リリースができると思います。

 2018年は、医薬品創出に繋がるアカデミア創薬に注力しVCの立場でより盛り上げていく年にしたいと考えます。

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