新春展望2018

製薬産業は今こそ投資の拡大を

(2018.01.04 08:00)
橋本宗明

 年末に顔を合わせた何人かの製薬関係者から、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で了承された薬価制度の抜本改革案に対する恨み節を聞かされた。

 抜本改革の内容は、薬価改定の毎年の実施のほか、新薬創出等加算の対象品目を絞り込む、革新的新薬創出への取り組み状況に応じて企業ごとに加算にメリハリをつける、効能追加の際に速やかに薬価を引き下げる、長期収載品の薬価を後発品を基準に引き下げる、といったもので、この結果、2018年度には国費にして300億円程度の削減となるという。2018年度の診療報酬・薬価改定では、診療報酬本体が0.55%の引き上げとなったのに対して、薬価は通常の改定分で1.36%の引き下げに加え、抜本改革によってさらに0.29%引き下げることになった。一昨年に、抗がん剤「オプジーボ」の薬剤費が高額なために「国を滅ぼしかねない」と批判されて以来、薬剤費ばかりが医療費抑制のターゲットとして狙い撃ちされていると漏らす製薬関係者もいる。

 この結果懸念されるのは、日本市場における新薬の投入が滞ってしまうことだ。実際、中医協で抜本改革案が了承されたのを受けて、米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)は共同声明を発表し、「新たな医薬品を日本で開発しようというインセンティブが大きく損なわれ、日本の患者さんが新薬を早期に使用することが非常に難しくなる」「医薬品研究開発の投資先として、日本よりも、予見可能性が担保された環境の中でイノベーションを促進する他国が優先される」などと指摘している。海外の製薬企業が日本よりも他国への投資を優先するという問題に加え、日本市場でしか事業展開を行っていない国内中堅企業が投資余力を損なってしまいかねないことも気掛かりだ。

 その一方で、技術に目を転じれば、核酸医薬や中分子創薬、遺伝子治療、ゲノム編集、デジタルヘルスなど、まさにこれから投資を受けて発展していこうという分野が続々と登場している。確かに今後の人口減少や高齢化の進展を思えば、公的医療保険の財源は今後さらに逼迫しかねないが、だからといって今、この時期に投資を抑制していては、将来の命取りになりかねない。将来への不安を口にして萎縮するのではなく、医薬品産業はむしろ今こそ技術革新への投資を拡大すべきチャンスだと強調したい。

日経バイオテク お薦めの専門書籍・セミナー

  • セミナー「バイオベンチャーのエコシステム、その課題を激論!」
    2019年7月29日開催!伊藤レポート2.0「バイオメディカル版」の一橋大学・伊藤邦雄教授による基調講演をベースに、伊藤教授とVC、証券アナリストなどを交えて徹底討論します。新刊「バイオベンチャー大全 2019-2020」発刊記念セミナー。
  • 最新刊「バイオベンチャー大全 2019-2020」
    日本発の将来有望なシーズを実用化・事業化へつなぐ、未上場ベンチャー267社の詳細リポート集!提携先を求める製薬企業や、投資先を探るベンチャーキャピタルにとって、バイオベンチャーの企業価値、コア技術の展望を見通すために有益です。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧