新春展望2017

人類が癌との戦いに勝利する日―癌免疫療法で死に至る病から慢性疾患へ-

(2017.01.03 00:00)
角田卓也=昭和大学臨床免疫腫瘍学講座教授

 2016年5月に10年ぶりにアカデミアに復帰しました。医者になってから癌免疫療法の研究を続けて今年で30年となります。ずっと免疫療法に携わってきました。この間、大腸癌の外科治療と実臨床、癌ペプチドワクチンの医師主導の臨床試験・研究、創薬バイオベンチャーで癌ワクチン療法や新規癌治療の第I相から第III相臨床試験(治験)、大手製薬会社で上市後の薬のライフサイクルと適正使用など、携わり方は種々雑多ではありましたが、「癌免疫療法」「新規癌治療」をライフワークにずっと研究してまいりました。

 アカデミアに戻り、自分の研究も含め、より広く客観的に「癌免疫療法」「新規癌治療」と接する機会が増えました。私の経験が患者さんのためにお役に立てばと常に考えております。

 2016年10月、肺癌において30年来破られることがなく不変であったファーストラインでの癌治療である抗癌剤による治療法よりも、癌免疫療法の方が強力で効果的であるという臨床試験の結果がでました。これにより、我々の体が自然に備わっている癌に対する防御能である免疫反応は、とても強力であり、従来の抗癌剤による抗腫瘍効果をも凌駕するほどであることが分かりました。
 
 2017年は「癌免疫療法」の保険適応拡大に伴い、昨年一昨年にもまして一般臨床で使用する機会が増すと考えられます。「癌免疫療法」の臨床効果の特徴である「カンガルーテール現象」、すなわち3年生存されている癌患者は5年も10年もご存命で、もはや完治といってよい長期生存される患者さんを診させていただくことで、実臨床に携わる先生方に実感として根付いていくと考えられます。今はまだ20%程度ですが、進行癌に対する癌治療で既存の3大癌治療法のどれもなし得なかった「完治」を達成できる可能性を秘めているのが「癌免疫療法」であり、我々人類が癌との戦いに勝利する道筋がついたといって過言ではありません。今後の癌治療の方向性は、「カンガルーテール」の「テール」を50%、80%、100%と上げていくことです。今まさに、癌が今までの「死に至る病」から糖尿病や高血圧のように「慢性疾患」となるパラダイムシフトが起きている時代です。

 医療経済的に大変ではないか? 破綻するのでは? との意見があります。しかし、私はこう考えます。例え進行癌であっても、完治すると社会復帰でき、経済活動を再開できるようになります。このように、治療が必要なくなった癌患者さんの「TRF(Treatment Free Survival)」を癌治療の評価指標とするのは如何でしょうか? すなわち、医療経済を医療費と消費だけと見るのではなく、社会に対する先行投資とみなせないでしょうか? 社会の財政全般として見た場合、癌免疫療法や画期的な癌治療により、完治し、TFSを得ることによって再度社会復帰していただくことによる新しいシステムの構築は如何でしょうか?「全ては癌患者さんの笑顔のために」、それ以外ないです。

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