新春展望2017

変革前夜の2017年、方向性を告げる存在に

(2017.01.01 00:10)
岩田俊幸=SBI証券 投資調査部バイオテクノロジー担当 シニアアナリスト

 2017年は近代医薬品の誕生(サリチル酸をアセチル化して副作用を軽減した初の化学合成薬「アスピリン」)から120年目となる記念すべき年ですが、日本では16年12月20日に基本方針を決定した「薬価制度の抜本改革」に向けた議論が本格化する変革前夜の年になると予想しています。

 オプジーボ問題が象徴するように、抜本改革が試行される新たな時代では、治療効果が高いというイノベーションだけでなく、治療効果を高めることはもちろんですがトータル医療費も下げるという医療イノベーションが求められると予想されます。製薬企業・創薬ベンチャーは治療・延命効果を少しでも高めて高い薬価を確保するという発想から患者のトータル治療費を下げることが必要条件に加わるという発想の転換が必要となるでしょう。

 現在のバイオ薬の主流は抗体医薬です。しかし抗体医薬は効果が高いが医療費も高い薬の代表格であり、主力品の特許切れが19年前後に集中する「2019年問題」も抱えていますので、これからポスト抗体医薬、2020年代のバイオ薬の主流の位置をめぐる争いが激化してくると予想しています。日本にも主役となり得る創薬技術を持ったバイオ企業が複数社あるとみています。その中でもペプチドリーム社独自の創薬開発プラットホーム(PDPS)を用いて開発した特殊ペプチド医薬品群は、抗体医薬とほぼ同等の特異性をもちながら分子量が約100分の1であることから1人当たり薬剤費は抗体医薬の10分の1程度になることが予想され、2020年代の主流薬の有力候補と予想しています。

 本来であれば日本発の技術で、医療の究極の目標である「根治」を可能にし、世界の医療を根本的に変革するポテンシャルのあるiPS細胞を用いた治療薬を真っ先に挙げたいところです。しかし造腫瘍性試験のガイドラインの遅れ等により17年に複数社が臨床試験入りを計画していましたが、その多くは開始が遅れ、実用化の時期が不透明になっています。政府には実施要領が明確なガイドラインの作成とともに京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が作製する再生医療用iPS細胞ストックに対する全面的支援を強くお願いしたいと思います。ここが日本発のiPS細胞ビジネスの出発点であり、品質のよい親細胞が出発点になっていることこそが競合国との最大の差別化になると考えられます。欧米も国家ぐるみで力を入れてきましたのでせっかくの大量リードがほとんどなくなり、マラソンでいえば25キロ地点で並走される寸前の状態とみています。

 17年は酉年、夜明けを告げるニワトリの年です。バイオアナリスト17年の経験をもとに、来るべき新たな時代の方向性を正しく告げる存在でありたいと思っています。

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