新春展望2017

再生医療が切り拓くサクセスフル・エイジング時代

(2017.01.02 00:01)
戸田雄三=富士フイルム取締役副社長・CTO

 サイエンスの急速な進歩及び医療技術の発展にもかかわらず、未だに治療満足度が極めて低い病気がある。いわゆる、アンメット・メディカル・ニーズと呼ばれる、糖尿病、癌、アルツハイマー等である。これらは全て老化が直接関係している病で、事件で言えば単純犯が原因の病気ではない。遺伝子、生活・食習慣、ストレス、気候環境、人間関係等など肉体が長い時間を経て社会との関わりの中で齢を重ねその結果として表れた身体の変調なのだ。

 日本はイタリア、ドイツと共に、超高齢社会(定義は、65歳以上の人口比が21%以上を占める)に分類されている。実際の数字は26.7%(2015年)、4人に1人が65歳以上、ダントツの世界一である。老化は避けられないがサイエンスと社会システムも包含した知恵で、老化と上手く折り合っていくことは可能である。それをアンチ・エージングでは無く、サクセスフル・エージングと呼びたい。「医療」という課題を「加齢マネジメント」と広く課題化する時代なのだ。

 従来の医療のパラダイムは感染症治療が源で、悪玉を叩くことが主眼であった。これからは、老化と言う複雑系のサイエンスを究め、複数の悪玉予備軍を躾ける手段が必要である。それこそ、再生・細胞医療の出番である。細胞には、生体内の環境変化を認識、応答し正規化する機能が総合的に備わっている。悪玉を叩くのではなく、悪玉が出てこない、出てきてもおとなしくさせる体内環境制御を実現したい。

 その為のサイエンスの課題も明確である。病気になる前に兆候を検出する診断技術開発、早期介入する為の薬品、治療法の開発、そして発病後には事前の生活記録に基づいた個別化医療で無理無駄を省く。「高い、苦しい、治らない」よ、さようなら時代の実現である。日本には超高齢化を世界に先駆けて体験すると言う難関が有る。この難関を日本発・世界初に実現する義務と権利を与えられていると前向きに解釈したい。

 一方、科学や技術力だけでは世の中変わらない。この分野でグローバルに先陣を切る覚悟も必要である。成功のキーワードは「覚悟」かもしれない。

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