新春展望2017・記者の目

「薬に見合った価値」と「価値に見合った薬」を

(2017.01.04 00:01)
久保田文

 2016年、製薬・バイオ業界で東京工業大学大隅良典栄誉教授のノーベル賞受賞のニュースに次いで関心を集めたのは、厚生労働省が緊急で小野薬品工業の抗PD1抗体「オプジーボ」(ニボルマブ)の薬価引き下げを決定したニュースでした。新春展望2017で、同ニュースに触れた業界の識者も少なくありません。

 オプジーボの緊急薬価下げが妥当な政策だったかどうかはともかくとして、財源が限られる状況で、医療費の中で一定の割合を占める薬剤費に対し、今後ますます抑制圧力が強まることは間違いありません。その中で、再びドラッグラグを引き起こすことなしに、有用な新薬を日本で使えるようにするには、薬剤の安全性や有効性に見合った価値(薬価)を付ける仕組みを早急に確立し、企業のインセンティブを引き出すことが重要だと考えています。

 もっとも、こうした仕組みを本格導入するまでには、あまり重篤ではない疾患に対する薬剤や、有効が十分示されていない薬剤の薬価が、これまで以上に厳しい状況に置かれる可能性があります。また、それぞれの疾患に対する治療指針に、費用対効果の観点が組み入れられる動きも加速するでしょう。それでも、国内で薬剤の安全性や有効性に見合った価値(薬価)を付ける仕組みを作ることは、日本の製薬・バイオ業界が生き残るため、国民が革新的な薬剤の恩恵を受けるために、避けては通れないでしょう。

 創薬に携わる人々には、これまで以上に、価値に見合った薬を創る動機が生まれ、同時に責任も課せられます。革新的なサイエンス、様々なモダリティ(治療手段)、デジタル技術や人工知能(AI)の活用等、あらゆる知見を駆使して、希少疾病、難治性の癌、小児の難病等、まだまだ満たされない医療ニーズに応える必要があります。価値に見合った薬を出すため、時には“(どうなるか分からないけれど)やってみる”ことも重要になるでしょう。

 私たち日経バイオテクも、創薬に携わる人々をサポートする存在として、日々、皆さまのお役にたつ情報を提供できるよう、精進する次第です。本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

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