新春展望2017

iPS細胞の医療応用に向けて

(2017.01.03 00:01)
山中伸弥=京都大学iPS細胞研究所所長

 2016年は、東京工業大学の大隅良典先生がノーベル生理学・医学賞を受賞されるという大変喜ばしいニュースがありました。大隅先生のオートファジーに関する長年の基礎研究の成果が評価され、また、社会に基礎研究の重要性を改めて訴える契機となったように思います。

 基礎研究の結果生まれたiPS細胞も、2006年にマウスiPS細胞の開発を報告してから10年が経ちました。当初の想定よりもかなり速いスピードで研究が進められており、再生医療への応用に向けた研究に加え、創薬に関してもいくつかの疾患で薬の候補となり得る化合物が見付かってきています。

 ヒトiPS細胞の報告から10年を迎える2017年は、より実用化に向けた研究が本格化していくと予想しています。例えば、再生医療においては、加齢黄斑変性について、iPS細胞を用いた他家移植での臨床研究が計画されており、いくつかの疾患がそれに続くと期待されます。また、マウスiPS細胞から生体外で精子・卵子の作製に既に成功するなど、iPS細胞を用いた生殖細胞研究も進んでいます。さらにゲノム編集技術を用いた研究も急速に進展しています。これらの研究がもつ倫理的な課題や規制などを社会全体で議論する必要性が高まっているように思います。

 私は京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の所長として、2017年も引き続き、国や法人・個人の皆さまより研究へのご理解やiPS細胞研究基金を含むご支援を賜りながら、研究所の安定的な運営やさらなる研究の推進に注力して参る所存です。そして、「一日でも早く患者さんにiPS細胞技術を用いた新たな治療法を提供する」というミッションの遂行に励んで参ります。

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