日経バイオテク編集部では、2016年12月7日から21日にかけて、第3回バイオ村の住民投票と題して、読者を対象に2016年、国内の製薬・バイオ業界でインパクトの大きかった重大ニュースに関する調査を実施した。
今回の有効投票者数は298人。投票者には、編集部が厳選した45個のニュースまたはその他のうち、最大5個を選んでもらった。投票数の合計は1247個で、投票者当たり約4個を選んだ計算だ。その他を選んだ投票者の自由記述の中には、選択肢に挙げた45個のニュースも一部含まれていたため、その場合は該当するニュースに票を加えた。
投票の結果、第1位に決まったのは、オートファジー研究で世界を牽引してきた東京工業大学大隅良典栄誉教授のノーベル賞受賞のニュースだ。投票者数の半数以上が1票を投じ、合計187票を獲得した。大隅栄誉教授のノーベル賞受賞は、日本の基礎研究のレベルの高さを世界に示すとともに、応用研究ばかりを重視した昨今の国内の政策に一石を投じ、基礎研究の重要性の再確認を促している。
第2位は、厚生労働省が緊急で小野薬品工業の抗PD1抗体「オプジーボ」(ニボルマブ)の薬価引き下げを決定したニュース。こちらも投票者数の半数以上が1票を投じ、合計177票を獲得した。ノーベル賞受賞のニュースにはわずかに及ばなかったものの、イノベーションを妨げかねない政府の政策に対し、幅広い製薬・バイオ業界の関係者が危機感を募らせている表れとも取れる。
第3位にも、「オプジーボ」のニュースがランクインした。2016年度、国内の「オプジーボ」がブロックバスターに成長する見通しであるという話題だ。2017年2月1日からの薬価下げの影響もあり、小野薬品は「オプジーボ」の売上高の見通しを下方修正したものの、1000億円を超えることは間違いないと見られる。
なお、その他を選んだ投票者からは、さまざまな自由意見が寄せられた。自由意見で、2016年度の薬価制度改革で導入された特例拡大再算定により薬価が下げられた「C型肝炎治療薬『ハーボニー』の薬価下げ」と答えた投票者からは、「薬剤の価値を考えられば『オプジーボ』よりも理不尽な薬価下げだ」とし、費用対効果に見合った薬価の設定の重要性を訴える声が寄せられた。また、「伊勢志摩サミットで保健分野の議論」「製薬企業が腸内細菌の解析法の標準化に向けコンソーシアムを立ち上げ」「東京大学が複数の論文について不正疑惑を調査(関連記事2)」などのニュースを挙げた投票者もいた。年末になって急きょ決まった「毎年の薬価改定(関連記事3)」と答えた投票者もいた。
投票者の背景は、男性が82.9%、女性が17.1%。勤務先は、製薬企業が35.6%と最も多く、次いで、大学・研究機関(17.8%)、その他(12.1%)が多かった。年齢は、50歳代が33.6%と最も多く、次いで40歳代(27.2%)、60歳代(18.1%)、30歳代(13.4%)が続いた。最終学歴は、国内大学の博士修了が39.3%で最も多く、次いで国内大学の修士修了(30.5%)、国内大学の学部卒(24.2%)が多かった。