アクテムラと我が研究人生(第7回)

逃した大魚

(2016.10.24 00:00)1pt
大杉義征=元中外製薬、 現大杉バイオファーマ・コンサルティング

 前回記した内容と重複するが、ミコフェノール酸の免疫抑制作用に関して、マウスへの皮膚移植実験の際にその投与時期を変えて効果発現との関係を調べ、免疫が既に成立した時期から投与を始めても拒絶反応が抑制されることを見いだした。つまり、ミコフェノール酸は免疫の誘導を抑制する作用の他に、既に成立した免疫反応によって誘起される炎症、あるいはアレルギー反応を抑制することが示唆されたのである。移植前から薬物を投与した場合には、免疫反応の阻害に伴い拒絶反応が抑制されるのは当然だが、免疫が成立した後に投与を始めても拒絶反応が抑制されるというのは予想外の結果だった。

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大杉義征(おおすぎ よしゆき)
薬学博士 大杉バイオファーマ・コンサルティング代表取締役会長
大杉義征 1944年大阪府和泉市生まれ。69年大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了と同時に中外製薬に入社。78年から81年 米California大学Davis校医学部へ留学。92年 創薬第一研究所長、97年中外分子医学研究所代表取締役社長、2001年グローバルプロジェクトリーダー(アクテムラ)、04年定年退職後プロフェッショナル契約社員として勤務を継続、2010年退社。2011年から2015年 一橋大学イノベーション研究センター特任教授。東京医科歯科大学大学院、秋田大学大学院、日本薬科大学、北里大学などで非常勤講師。2010年以降現在までAMED-Astep評価委員、専門アドバイザー、AMED-CREST「慢性炎症」領域アドバイザーなど兼務。
日本で創製された初めての抗体医薬「アクテムラ」の発明者である著者が自らの研究人生を振り返る。新薬の成功率は、3万分の1ともいわれる難業である。科学的に極限まで考え抜いた末に到達した自説には強固な信念が宿る。その信念を粘り強く持ち続け、逆風に立ち向かっていく強靭な精神力が求められる。米国留学から数えて30年を費やし、この間幾つもの死の谷を越え、成功を勝ち取った経験を語ることで、若手研究者の皆さまに、イノベーション創出に挑戦する勇気を与えることができれば本望である。

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