アクテムラと我が研究人生(第38回)

バカに徹する

(2017.06.12 00:00)1pt
大杉義征=元中外製薬、 現大杉バイオファーマ・コンサルティング

 「アクテムラ」は2008年の日本に続いて、欧州で09年、米国で2010年に販売が開始された。2016年時点で、世界115カ国で承認され、約70万人の患者さんの治療に役立てられている。発売以来、売上高は順調に伸長し、2013年にはブロックバスターの仲間入りを果たした(図1)。それ以降も増加を続けており、2016年度は1697億円の売上高を達成したと報じられている。前回紹介した書籍「新薬創製」の中(p.16の表2)で、一橋大学による興味ある調査結果が示されている。調査対象となったのは日本で創製された11品目の画期的医薬品であるが、そのうち8品目のピーク時売上高は、当該会社全体の売上高の15%以上に達し、「アクトス」は27%、「クレストール」と「アリセプト」に至ってはいずれも40%を占めるということが分かり大変驚いた。ちなみに、この時の調査によると、アクテムラは中外製薬の売上高の17%だった。アクテムラはその後も売り上げを伸ばしており、会社の売上高により大きく貢献しているのは間違いないだろう。また、医薬品産業は著しい輸入超過産業であるが、アクテムラの売上高の多くは海外でのものであり、外貨獲得に寄与している(図1)ことも我々の誇れる点だ。

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大杉義征(おおすぎ よしゆき)
薬学博士 大杉バイオファーマ・コンサルティング代表取締役会長
大杉義征 1944年大阪府和泉市生まれ。69年大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了と同時に中外製薬に入社。78年から81年 米California大学Davis校医学部へ留学。92年 創薬第一研究所長、97年中外分子医学研究所代表取締役社長、2001年グローバルプロジェクトリーダー(アクテムラ)、04年定年退職後プロフェッショナル契約社員として勤務を継続、2010年退社。2011年から2015年 一橋大学イノベーション研究センター特任教授。東京医科歯科大学大学院、秋田大学大学院、日本薬科大学、北里大学などで非常勤講師。2010年以降現在までAMED-Astep評価委員、専門アドバイザー、AMED-CREST「慢性炎症」領域アドバイザーなど兼務。
日本で創製された初めての抗体医薬「アクテムラ」の発明者である著者が自らの研究人生を振り返る。新薬の成功率は、3万分の1ともいわれる難業である。科学的に極限まで考え抜いた末に到達した自説には強固な信念が宿る。その信念を粘り強く持ち続け、逆風に立ち向かっていく強靭な精神力が求められる。米国留学から数えて30年を費やし、この間幾つもの死の谷を越え、成功を勝ち取った経験を語ることで、若手研究者の皆さまに、イノベーション創出に挑戦する勇気を与えることができれば本望である。

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