アクテムラと我が研究人生(第31回)

驚異的な有効率

(2017.04.17 00:05)1pt
大杉義征=元中外製薬、 現大杉バイオファーマ・コンサルティング

 1995年、大きな組織改正が実施され5つの創薬研究所が1つにまとめられた。私は、7年半の単身赴任生活を終えると同時に、入社後初めて研究所組織の外側に出ることになった。新しい所属は本社の研開企画部である。東京都小平市中島町の自宅から本社まで、最寄り駅の西武拝島線東大和駅で乗車し、高田馬場駅で地下鉄東西線に、日本橋で地下鉄銀座線に乗り換えて京橋駅に出た。1時間15分も満員電車に揺られ通勤するのもそうだったが、それよりも何よりも、だだっ広いオープンスペースに沢山の机が並んだオフィスで前に座る人と向かい合わせで仕事をするのは、大きなカルチャーショックだった。周りでの話し声が耳に入るし、他人の目が気になって科学論文や資料などを集中して読むのが難しかった。それでも毎日のように午後になると自席ですやすやとお眠りする豪傑がちらほら見受けられたが、すごい人だと変に感心したりもした。

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大杉義征(おおすぎ よしゆき)
薬学博士 大杉バイオファーマ・コンサルティング代表取締役会長
大杉義征 1944年大阪府和泉市生まれ。69年大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了と同時に中外製薬に入社。78年から81年 米California大学Davis校医学部へ留学。92年 創薬第一研究所長、97年中外分子医学研究所代表取締役社長、2001年グローバルプロジェクトリーダー(アクテムラ)、04年定年退職後プロフェッショナル契約社員として勤務を継続、2010年退社。2011年から2015年 一橋大学イノベーション研究センター特任教授。東京医科歯科大学大学院、秋田大学大学院、日本薬科大学、北里大学などで非常勤講師。2010年以降現在までAMED-Astep評価委員、専門アドバイザー、AMED-CREST「慢性炎症」領域アドバイザーなど兼務。
日本で創製された初めての抗体医薬「アクテムラ」の発明者である著者が自らの研究人生を振り返る。新薬の成功率は、3万分の1ともいわれる難業である。科学的に極限まで考え抜いた末に到達した自説には強固な信念が宿る。その信念を粘り強く持ち続け、逆風に立ち向かっていく強靭な精神力が求められる。米国留学から数えて30年を費やし、この間幾つもの死の谷を越え、成功を勝ち取った経験を語ることで、若手研究者の皆さまに、イノベーション創出に挑戦する勇気を与えることができれば本望である。

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