アクテムラと我が研究人生(第17回)

片桐先生との縁

(2017.01.10 00:02)1pt
大杉義征=元中外製薬、 現大杉バイオファーマ・コンサルティング

 米国留学を終える頃まで、時間を少しさかのぼる。



 1981年3月末、デービスの町に別れを告げ、家族と共にレンタカーでサンフランシスコ空港に向かった。日本では4月から長男が小学3年生、長女が小学校に入学というタイミングに合わせて旅程を立てた。空港に近接した町メンロパークにはStanford大学が在り、キャンパス近くにStanford Research Institutes(SRI)があった。AB50やAM682を合成した森陸司さんと高久栄さんがそこに派遣中で、その夜は森さん宅で盛大に送別会を催してくれることになった。レンタカー返却の方法などで、Gershwin研究室のテクニシャンWilfred Saitoさんと電話で会話している様子を聞いていた高久さんが、「英語、ペラペラだね!」と言った。英会話も度胸だけは身に付けたようだ。その日のうちにレンタカーの返却を済ませ、翌朝、森さんがマイカーで空港まで送ってくれた。周囲の方のアドバイスもあって、時差ボケ軽減のために途中ハワイに1泊し、ワンクッションおいて帰国した。ハワイ空港の出発ロビーのギフトショップで、ムームー姿の日本人の子供二人が流ちょうな英語でペチャクチャおしゃべりしている様子を見て店員が驚いていた。当時、末娘は5歳で、日本語が全く話せなかったのである。

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大杉義征(おおすぎ よしゆき)
薬学博士 大杉バイオファーマ・コンサルティング代表取締役会長
大杉義征 1944年大阪府和泉市生まれ。69年大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了と同時に中外製薬に入社。78年から81年 米California大学Davis校医学部へ留学。92年 創薬第一研究所長、97年中外分子医学研究所代表取締役社長、2001年グローバルプロジェクトリーダー(アクテムラ)、04年定年退職後プロフェッショナル契約社員として勤務を継続、2010年退社。2011年から2015年 一橋大学イノベーション研究センター特任教授。東京医科歯科大学大学院、秋田大学大学院、日本薬科大学、北里大学などで非常勤講師。2010年以降現在までAMED-Astep評価委員、専門アドバイザー、AMED-CREST「慢性炎症」領域アドバイザーなど兼務。
日本で創製された初めての抗体医薬「アクテムラ」の発明者である著者が自らの研究人生を振り返る。新薬の成功率は、3万分の1ともいわれる難業である。科学的に極限まで考え抜いた末に到達した自説には強固な信念が宿る。その信念を粘り強く持ち続け、逆風に立ち向かっていく強靭な精神力が求められる。米国留学から数えて30年を費やし、この間幾つもの死の谷を越え、成功を勝ち取った経験を語ることで、若手研究者の皆さまに、イノベーション創出に挑戦する勇気を与えることができれば本望である。

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