国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年11月】

(2017.12.14 10:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年11月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

米国の大規模研究ではグリホサートと癌の間に関連は無し

 米国のアイオワ州とノースカロライナ州の農業従事者、農業者およびその家族に対して実施された大規模な前向きコホート研究によると、グリホサート使用と、あらゆるタイプの癌リスクまたは非ホジキンリンパ腫を含む全リンパ造血癌(NHL )および多発性骨髄腫との間には全く関連が無かった。

 長期間にわたる研究で以前のグリホサートのガン発生率の評価が更新された。これは、農業者およびその家族の健康状態を追跡する大規模かつ重要なプロジェクトである農業健康調査(AHS)の一環である。 AHSの主任研究員であるLaura Beane Freeman氏によると、試験結果によれば、5万4251人の被検者のうち4万4932人(82.8%)がグリホサートを使用していた。 「グリホサートは、どの部位の癌とも統計学的に有意に関連していなかった。」と述べた。

南北アメリカ

コムギの茎サビ病耐性遺伝子を同定

 California大学Davis校(UC Davis)の研究者らは、1999年にウガンダで発見された茎サビ菌株UG99に対する耐性を付与する遺伝子を同定した。茎サビは、アフリカとアジア全域のコムギ生産を害し、世界中の食糧安全保障の脅威となっている。

 UC Davisのコムギ遺伝子学者Jorge Dubcovsky氏と彼のチームは、Ug99に対して効果的なパスタコムギ由来の遺伝子のSr13と、イエメンとエチオピア由来の病原性茎サビ種の別のグループの3種類の抵抗性形態を同定した。 2013年、Dubcovsky氏らは、Ug99にも耐性を持つSr35と呼ばれる別の遺伝子を発見した。チームは、茎サビ病゙への耐性を与える第3の遺伝子の同定に近づいている。

 「コムギは、ヒトのカロリーと蛋白質の大きな給源である。この壊滅的な病原体を防除する新しい戦略の開発は、コムギ - サビ病の関係について理解を深めると願っている」と、Dubcovsky氏は語っている。

ビタミンAおよびE含量が高い組換えゴールデンジャガイモを開発

 Ohio州立大学およびイタリア国立新技術局の科学者たちは、ビタミンAおよびEのレベルを改善した「ゴールデン」ジャガイモを開発した。研究の結果はPLOS ONE誌に掲載されている。

 ジャガイモはヒトで最も広く食べられている作物の1つであるが、ベータカロテン(プロビタミンA)やビタミンEなどの必須栄養素が低レベルにある。従って、ポテトチップスのカロチノイドやキサントフィルを増強するために、模擬消化器系で煮た野生型およびゴールデン(黄 - オレンジ)塊茎の栄養素の生物学的利用性を研究した。

 結果は、ゴールデンジャガイモを与えると子供の推奨1日摂取量の42%のビタミンAと、ビタミンEでは推奨摂取量の34%を供給できることが示された。また、妊娠可能年齢の女性では、推奨1日摂取量の15%のビタミンAと17%のビタミンEを5.3オンス(150グラム)のジャガイモから得られることを見出した。

カボチャの遺伝子配列を決定

 Boyce Thompson Institute (BTI)と北京の国立野菜工学研究センターの科学者たちは 2つの重要なカボチャ種、Cucurbita maxima とC. moschataのゲノムを配列決定した。

 研究チームは、2つのカボチャ種を比較対象して望ましい特性をよりよく理解できるようになった。 C. moschataは、病気やその他のストレス(異常な気温など)に対して耐性があることが知られているが、C. maximaは果実の品質と栄養価の良さでよく知られている。 「Shintosa」と呼ばれるこれらの2つの種のハイブリッドは、C.moschataよりもさらに大きなストレス耐性を有し、広く他のカボチャ系作物の根茎として使用されている。

 遺伝子塩基配列決定プロジェクトはまた、カボチャ種の興味深い進化の歴史を明らかにした。 研究者らは、カボチャ種のゲノム配列を他のカボチャ種の配列と比較すると、カボチャのゲノムは実際には2つの古代のゲノムの組み合わせであり、それが古典的な二倍体であることを発見した。

マルカマメシンクイ蛾を防除するBT蛋白質産生組換えササゲを開発

 Plant Cell Tissue and Organ Culture (PCTOC)に収載されて論文によると、アフリカサハラ以南の地方の家庭で植物蛋白質の最も重要な源の一つであるササゲを遺伝子組換えでBacillus thuringiensis(Bt)蛋白質を生産するように改変して、ササゲに大損害を与えるマルカマメシンクイ蛾に抵抗性を持たせた。Btは数十年にわたり有機農薬として使用されてきたが、小規模農家には利用できないか、高価すぎた。

 Btササゲはこれまでのものよりも25%収量が上がるとこの研究を率いた連邦科学産業研究機関(CSIRO)の研究者であるTJ Higgins,氏が語った。Btササゲは、2018年にはナイジェリア、 ブルキナファソ、ガーナの農業者に無料で提供される。

アジアと太平洋

オーストラリアでは世界初のパナマ病耐性バナナを作成

 オーストラリアQueensland工科大学(QUT)の研究者は、パナマ病としても知られている壊滅的被害を起こす土壌萎縮病菌フザリウム熱帯種4(Fusarium wilt tropical race 4、TR4)に耐性のある遺伝子改変キャベンディッシュバナナを開発している。

 QUTの熱帯作物と生物多様性センターのJames Dale特命教授の指導の下、2012年から2015年にかけてTR4の被害を以前に受けた商業用バナナ園で野外試験を実施した。土壌には、試験のために大量の病原菌を再投入した。

 TR4を多量に投入した土壌で実施された世界初のGM野外試験では、Cavendish Grand Nain 種にTR4耐性の野生の東南アジアのバナナ亜種であるMusa acuminata ssp malaccensisからの遺伝子を導入したキャベンディッシュ系統(RGA2-3)は、3年間TR4に感染しなかった。また他のRGA2で改変した3系統も強い抵抗性を示し、3年後でも20%以下しか病徴を示さなかった。

 対照的に、3年後の対照バナナの67%から100%は、枯れるかTR4が感染した。台湾の組織培養によって生成され、TR4に耐性であると報告されたGiant Cavendish変異体218も枯れるかTR4感染がみられた。研究者らは、改変バナナにおけるRGA2遺伝子活性レベルがTR4耐性と「強く相関する」ことを見いだした。

遺伝子工学により高抗酸化能のトマトを開発

 香港大学(HKU)の研究者は、植物分子生物学研究所(CNRS、Strasbourg, France)とともに、健康促進ビタミンEを6倍に高め、プロビタミンAとリコピンの両方を同時に2倍に高め、トマトの抗酸化特性を大幅に向上させた。

 研究グループは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル - コエンザイムAシンターゼ(HMGS)の変異体を用いて、植物イソプレノイド経路を操作した。トマトにおけるHMGSの過剰発現は、フィトステロール、スクワレン、プロビタミンAおよびリコペンだけでなく、ビタミンE(α-トコフェロール)も494%増加させた。この実験で使用されたHMGS DNAは、食用作物であるIndian mustard(Brassica juncea)由来である。

 このグループは以前に、組換えHMGS変異体S359Aがモデル植物シロイヌナズナにおいて10倍高い酵素活性を示し、フィトステロール含量を増加させることを報告した。研究者はトマトにS359Aを導入した。形質転換されたトマト果実の外観および大きさに差はなかったが、プロビタミンAおよびリコペンを含む総カロチノイドはそれぞれ169%および111%と大幅に増加した。カロテノイド抽出物は対照より89.5-96.5%高い抗酸化活性を有し、形質転換されたトマトはビタミンE(α-トコフェロール、494%)、スクアレン(210%)およびフィトステロール(94%)の上昇も示した

バングラデシュ政府がBTナス農業者に奨励策を提供

 バングラデシュ政府はBtナス農業者に奨励策を与える予定である。ナス(brinjal)はバングラデシュの主要な野菜の1つであり、この地域の他の国々でも使用されている。

  Bt ナスは、害虫の攻撃に抵抗するように強化された作物の品種を指す。 現在、バングラデシュで栽培可能なBtナスは以下の4種類(Bt Uttara、Bt Kajla、Bt Noyontara、およびBt ISD 006)である。 Matia Chownhury農業大臣が主宰する会合では、来シーズンにBtナスを栽培するために64地区の農業者に種子と肥料を提供する予定であると述べた。

 この計画に、政府は、1,630,800ルピーを提供する。

中国の科学者は海水で栽培可能なイネを開発

 中国の科学者は、潜在的に2億人の食糧を供給することができる海水で栽培できるイネ品種を開発している。

 科学者たちは海水中で成長することができるイネについて長年研究しており、最終的に商業的に実行可能な品種について現在、試験を行っている。 中国黄海海岸沿いの山東省(Shandong province)の青島(Qingdao)付近で約200種のイネを試験してベストのものの選別試験を行っている。 海水は畑にポンプで注入され、希釈された後、水田に送られている。 研究者らは、イネ品種は1ha当たり4.5tを生産すると予測したが、1品種は既に1ha当たり9.3tを生産する有望な結果を示した。

 「試験結果は、我々の期待を大幅に上回った」と研究者の一人であるYangzhou Universityの農業研究者Liu Shiping教授が述べた。

ヨーロッパ

欧州食品安全機関がEUでの組換えテンサイを再承認

 欧州食品安全機関(EFSA)の遺伝子組換えパネル(GM Panel)は、欧州連合(EU)において遺伝子組換え(GM)テンサイの再認証を行った。

 ドイツの植物育種企業であるKWS SAAT SE社と米Monsanto社によって開発されたGMテンサイH7-1は、除草剤耐性に改変されている。 規制(EC)No 1829/2003に基づく申請EFSA-GMO-RX-006の公表されたリスクアセスメントは、EU内での栽培を除き、輸入および加工のためのGMテンサイH7-1の承認を更新するためのものである。

 GMOパネルによれば、更新対象となるテンサイH7-1のDNA配列は、最初に評価された配列と同一であるとして、GMOパネルは、テンサイH7-1の元のリスク評価の結論を変える新しいリスク、変わった性質、新たな科学的不確実性を示す証拠はないと結論した。

コムギのゲノム配列解析が完了

 コムギゲノムは、ヒトゲノムの5倍以上の巨大で複雑なものであり、何十年にもわたって科学者にとって大きな謎になっていた。 10年にわたる大規模な国際研究の結果、科学者グループはついに断片化された解読情報からコムギゲノムの完全な復元(アセンブリ)を完了した。

 ゲノムの復元に要するコンピュータの処理時間は53.7年相当とされていたが、わずか5カ月ほどで完了した。一般的なパンのコムギであるTriticum aestivumのゲノムは、その6倍体構造のため、2017年10月23日に公開された論文によれば、「科学的に最も複雑なゲノム配列の1つ」である。

 T. aestivumは、各染色体6コピーで、しかもほぼ同一の配列の膨大な数が全体に散在している。また半数体の塩基配列は150億塩基以上ある。最終アセンブリには、15,344,693,583塩基を含み、連結断片(コンティグ)のサイズは加重平均(N50)で232,659塩基である。これは現在までにコムギゲノムの最も完全で連続的な集まりを表し、この重要な食物作物の将来の遺伝子研究のための強力な基盤を提供することになる。

疫病耐性ジャガイモの開発

 アイルランド飢饉を起こしたジャガイモ疫病病原体に対抗する技術が開発された。英Norwich Research ParkにあるThe Sainsbury LaboratoryのJonathan Jones教授が率いる研究チームは、野生ジャガイモの疫病耐性遺伝子を人気のあるマリスパイパー種(Maris Piper)に導入することによって、壊滅的な病気である疫病に抵抗性を付与することに成功した。

 疫病は世界的に深刻な問題であり、1840年代のアイルランドのジャガイモ飢餓の原因だった。Jones教授は、「改変マリスパイパー種の圃場試験の初年度成果は、素晴らしいものだった。我々は全ての系統において疫病抵抗性を見ることができた」と語った。

 マリスパイパー(Maris Piper)に導入されたこの新しい耐病性遺伝子は、その作物強度をさらに向上させ、その栽培における化学殺菌剤の使用を使わないでよい可能性まで示した。Norwichでの野外試験は継続しており、来年、チームは塊茎の品質の向上を図る遺伝形質の探索を開始する予定である。チームは、打撲による傷の被害を受けにくいものを生産し、英国のジャガイモの品質と持続可能性の向上に役立つことを願っている。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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