国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2016年11月】

(2016.12.08 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年10月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

FAO、気候変動に対してバイオテクノロジーの促進を求める

 国連食糧農業機関(FAO)は、気候変動が農業に及ぼす影響と食糧安全保障への影響に焦点を当て、食糧・農業に関する年次報告書を発表した。報告書によると、小規模農業者が気候変動に対応することに対する支援が急務であるとしている。農業従事者、牧畜者、漁民、地域の林業者は、気候に影響される作業に依存しており、同時にこれらのグループは気候変動に対して最も脆弱である。従って、気候変動対応の生産システムとその実際の対応策をとるために、技術、市場、情報、投資への還元を手にできることの必要性が高まっている。

 「バイオテクノロジーは、ローテクであると同時にハイテクでもあり、特に小規模の生産者にはより応用性の高い気候変動への対応を助けるものである」と報告書は指摘している。報告書の他のセクションでは、主に経営実務による革新に焦点を当ており、「その実際の出口は、種子の改良などのバイオテクノロジーの成果に依存する」と強調している。

GM食品の禁止は食品価格高騰と10億tのCO2増加を招く

 Purdue大学の研究者らが行った研究では、遺伝子組換え(GM)作物を世界全体で禁止すると、食品価格は高騰し、さらにおよそ10億t相当の二酸化炭素を大気中に増やすことになるという。

 研究者らは、GM作物の経済的および環境的価値を評価するためのモデルを使用し、GMトウモロコシ、ダイズおよびワタを世界中の在来種に置き換えると、地域によって変動はあるが、貧しい国が最も厳しい打撃を受けることになり、0.27%から2.2%の価格上昇になるとした。また、GM作物の禁止は、在来作物の生産性低下を補うために牧草地と森林を農耕地に転換させることにつながり、大量の貯蔵炭素を大気中に放出することになると報告している。

 もし米国のGM作物栽培率に合致するように、その他の国も栽培するならば、世界的な温室効果ガス排出量は2億t相当低下し、80万ヘクタールの農地を牧草地と森林に戻すことができるという。

 Purdue大学の農業経済学科のWallace E. Tyner教授は、「温室効果ガスの排出を減らそうとしているグループの中には、GMOを禁止したいと思っているグループもあるが、これは両立しない。GM作物の栽培が農業による二酸化炭素排出量を削減する道である」と述べている。

南北アメリカ

USDAが打ち傷や褐変の出ない遺伝子組換えジャガイモ販売許可

 米国農務省(USDA)は、打ち傷・褐変の出ない遺伝子組換え(GM)ジャガイモの販売許可を発行した。USDAによると、このGMジャガイモは、植物有害生物の遺伝子を含まないため、連邦法の下で「規制されるものとはみなされない」とのことである。

 GEジャガイモは米Calyxt社が開発したもので、ポリエチレングリコール媒介形質転換によりTALEN試薬(転写活性化因子様ヌクレアーゼ、Transcription Activator-like Effectors Nuclease)をジャガイモプロトプラストに導入し、次いでTALEN試薬を一時的に発現させてPPO(ポリフェノールオキシダーゼ)の遺伝子ノックアウトを達成し、プロトプラストからカルスを誘導し、それから完全な植物体を再生して達成したもの。従って、最終的なジャガイモ植物ゲノムに外来遺伝物質が挿入されていない。

遺伝子組換え栄養補助食品は社会に受容されているとの調査結果

 米University of Nebraska-Lincoln (UNL)の農業経済学科の研究者は、一般的な健康に対する有用性または疾病の治療法を提供する遺伝子組換え(GM)栄養補助食品(nutraceuticals)に対する一般市民の意向と、購入意向を聞く調査を行った。

 GM栄養補助食品には、健康増進および/または疾病予防に関連する食品、ならびに病気を治療または治癒するためのワクチンおよび薬剤の製造に使用できる植物および動物製品が含まれる。

 結果は、回答者の大部分がGM食品を好意的に見ているが、GM表示を好むと回答した。回答者の60%以上が、一般的な健康に対する有用性を提供するGM栄養補助食品と、疾病の治療を提供するGM栄養補助食品に対して、同じような好意をもって購入するとした。全体として、回答者の大多数は、病気を治療し、健康を改善し、病気を予防するために開発されたGM栄養補助食品)を購入するとの意向を示した。

米連邦控訴裁判所がハワイ郡でのGMO禁止請求を棄却

 米国連邦控訴裁判所は、ハワイ郡が農薬や遺伝子組換え(GM)作物を規制することができないとする30ページの判決を発表した。 これはハワイ郡における、GM作物を栽培することへの部分的な禁止請求に対応するもので、この判決により、禁止請求は無効となった。控訴裁判所は、この禁止が州法と連邦法に違反していると述べた。 また、ハワイ州の農薬法は、安全措置が十分に包括的であり、それが「統一的で、追加的な現地の規則を満たしている」とした。

アジア・太平洋

日本人研究者が朝顔のゲノムを解読

 日本の朝顔(Ipomoea nil)は、日本で人気の伝統的な園芸植物である。約200年前から変わった形の花と葉を持つ朝顔が育種され、楽しまれてきた。このように「変種の朝顔」に人気があるところから、多くの自然変異品種が集められている。これらの変種を解析することで、花や葉の形、花の色やパターンを決定する幾つかの遺伝子が発見された。

 日本の研究グループは、日本の朝顔の全ゲノムを解読した。研究リーダーの一人、慶應義塾大学の榊原康史教授は、高品質でほぼ完全なゲノム配列により、約4万3000の朝顔の遺伝子の同定と色や形を決めるトランスポゾンの数を明らかにした。

 研究グループはまた、全ゲノム配列を使用して暗緑色で、厚くてしわのある葉で矮性を示す突然変異体の特性を明らかにし、またホルモン合成を阻害するトランスポゾンも明らかにした。
 本研究の指導者の一人である国立基礎生物学研究所の星野敦助教は、朝顔のゲノム配列がアサガオの研究だけでなくサツマイモを含む関連作物の研究にも役立つことを期待している。

ヨーロッパ

Brexitにより英国はGM作物を栽培することになると大臣答弁

 英国は欧州連合(EU)からの離脱により、すぐに遺伝子組換え(GM)作物を栽培することになると、George Eustice環境・食糧・農村地域大臣が述べた。

 英国がEUを離脱した後、農業省で遺伝子組換え生物(GMOs)の使用に関する方針を変更する予定があるかどうかについての書面での質問が議会に出されたのを受けてのもの。 EU議会の答えでは、政府はEUの出口準備の一環として、GMOの規制のための将来の取り決めを検討しているとEustice大臣は述べた。同氏はさらに、政府の一般的見解によれば、この分野の政策と規制は科学に基づいて行うべきであるとも述べた。

Rothamsted研究所がGMコムギの圃場試験を申請した

 英Rothamsted研究所は、2017年から2018年にRothamsted圃場で遺伝子組換え(GM)コムギの圃場試験を実施するために、環境・食品・農村地域省(Defra)に申請書を提出した。研究中のGMコムギは、Rothamsted 研究所、 英University of Essexと英Lancaster Universityで開発された、光合成効率が良く、高効率に光エネルギーを植物バイオマスに変換できるものである。圃場試験は、GMコムギの現場での性能を評価するために実施される。 現在、申請に関する公的協議が行われている。

英国での世論調査で3分の2がGM作物に賛成

 英国の調査会社Populus社が ドイツBayer Crop Science社に依頼されて行った調査により、遺伝子組換え(GM)に対する態度が過去2年間で著しく軟化していることが分かった。
 オンラインアンケートには2000人以上が回答し、その3分の2がGM食品が公衆衛生や環境に悪影響を及ぼさない限り、GM食品を支持すると表明した。 原則としてGM作物を受け入れると答えたのは約半数(54%)だった。また、GM食糧が増え続ける人口を養う唯一の解決策だと考えている人は10%に上った。 回答者のわずかな割合(27%)が、GM食品を受け入れないと主張している。

文献備忘録

ISAAAインフォグラフィック:承認されたGM植物種

 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、ISAAA GM承認データベースに基づいた遺伝子組換え(GM)植物種の数を特集した新しいインフォグラフィックをリリースした。 今日までに、404の品種がデータベースに記録されている。 GM品種の大部分はトウモロコシ、ワタ、ジャガイモである。

以下のサイトから無料でこのインフォグラフィックをダウンロードできる。

http://www.isaaa.org/resources/infographics/gmapprovaldatabase/gm-approval-infographic-01.pdf

GM作物の導入国と輸入国への影響に関するISAAAの動画

 ISAAAは、「GM作物の採取導入と輸入で得られる利益」と題したVoices and Viewsシリーズの新しいビデオをリリースする。 このビデオは、ブルキナファソ、ブラジル、南アフリカ、中国などのさまざまの導入国のバイオテクノロジー専門家および関係者の視点を提示している。 非導入国についても、GM作物の輸入により、バイオテクノロジーから潜在的利益を得ていると強調している。
 サイトでYoutubeをご覧下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=7MIUMEj3rFc

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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