国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2016年10月】

(2016.11.10 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年10月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

アフリカ

タンザニアで初のGMトウモロコシ試験圃場栽培を開始
 タンザニアで最初の遺伝的組換え(GM)トウモロコシの栽培が、同国中央部の半乾燥地域のDodomaにある試験圃場で2016年10月5日に始まった。隔離圃場試験は、「アフリカ向け水有効利用トウモロコシ(WEMA)」プロジェクトが開発した旱魃耐性GMトウモロコシの有効性と安全性を試験するために行った。タンザニアのWEMAプロジェクトコーディネーターであるDr. Alois Kullayaは、「研究者は隔離圃場を使って試験でき、しかも人々に示すことのできる具体的な成果を生み出すとともに遺伝子組換えトウモロコシが農家にどのようなベネフィットを生み出せるか示すことができる」と喜んでいる。一方、彼はGMトウモロコシがその価値を確立するためには少なくとも3年はかかるだろうと述べた。

 同国が環境管理バイオセーフティ規程の中の厳格なる責任条項を改訂してから1年かかった。責任条項には、科学者、投資家、研究に資金を提供パートナーはGM作物の研究中、またはその後にいかなる損害が発生した場合にも責任を問われることになると述べていた。タンザニアでのこのような発展が大陸全体にわたるための技術展望に大きな希望を提供することになる。アフリカはここ数年間、旱魃によって頻繁に収穫がダメージを受け、主な食料源としてトウモロコシに依存する3億人以上のアフリカ人が深刻な穀物不足や飢餓に陥っている。

 利用許諾金のない契約に基づき、タンザニア、ケニア、南アフリカ、ウガンダでは、既にWEMAプロジェクトにより、地域の状況に応じて開発された旱魃耐性のトウモロコシ「DroughtTEGO」が栽培され、販売されている。

南北アメリカ

Arcticゴールデンリンゴの最初の収穫が完了

 Okanagan Specialty Fruits (OSF)社は、褐変しない「Arctic」ゴールデンリンゴの最初の収穫を完了したと発表した。この最初の収穫による健康的な果実が2017年初めから北米のテスト市場で新鮮なスライスしたリンゴとして販売される予定である。

 OSF社の創設者であり、社長であるNeal Carter氏は、「20年以上もかけての厳しい努力で我々のArcticゴールデンリンゴが最初の実を結ぶことを喜んでいる。我々がもたらす利点に対して企業と消費者が興味を持つことで、我々は米国とカナダの全域の食料品店、スーパーマーケット、台所に当社のスライスリンゴが出回ることを強く期待している」と述べた。

 OSF社のArcticゴールデンリンゴとArctic Granny品種は、米国農務省(USDA)、米国食品医薬品局(FDA)、カナダ食品検査庁(CFIA)、およびカナダ保健省(HC)によって承認されている。 OSF社は最近USDAからArcticフジリンゴ品種についても承認を受けている。

米ダイズ生産者、遺伝子組換えの教育への支援を議会に要請

 米国のダイズ生産者からなるアメリカ大豆協会(ASA)とその関係者らは、米連邦議会の下院と上院に対して、バイオテクノロジーや農業生産について国民を教育するために300万米ドルの資金調達を支援するように農業予算歳出を促した。

 「我々は、現代農業のツールを農業従事者が取り込むことを妨げ、あるいは社会が現在および将来の食糧生産に関する課題を解決するための植物や動物の農業用途の進歩を中傷するあらゆる法的措置に反対し、農業技術の開発のための立法を維持することを促す」とこのグループは、文書で述べている。

 このグループは、国民の間に農業とバイオテクノロジーに関する広範囲の誤解があることを改めて強調し、農業従事者が持続的かつ低コストで作業するのに必要なツールを利用するには教育資源が不可欠であるとしている。国の食糧供給の安全性に関する重要な責任のある連邦政府機関がより簡単に国民に向けての科学及び事実に基づいた食品に関する情報を伝える上で、優れた教育資源が確実な手段となると述べた。

カナダが遺伝子組換え作物により20年間に得たもの

 2016年はカナダが遺伝子組換え(GE)作物を栽培し始めて20年になる。カナダではキャノーラ、トウモロコシ、ダイズ、テンサイの90%以上が遺伝子組換え(GE)作物であり、収量を低下させる雑草や害虫がうまくコントロールされている。GM作物の利用により、農薬の使用をよりターゲットを絞ることができ、消費者に対しても化石燃料の消費削減という直接的なベネッフイットをもたらした。

 Farm & Food Care Canadaによると、カナダでの食品の購入費は、1900年には家庭支出の50%だったが、今日では約10%になった。現在、食品に1ドル費やされると、農家は15セントを稼ぐことになる。これにより、カナダの農家は信頼性の高い収入を獲得し、国や世界のために安全で手頃な価格の食品を生産し供給できていることになる。これは遺伝子組換え技術の進歩のおかげといえる。

 カナダでの導入率が95%に達するGMナタネは、より少ない除草剤の使用をもたらした他、不耕地の増加ももたらした。Lethbridge Research Centreでの研究では、これらのことが土壌中の有機物および二酸化炭素の保持をもたらし、温室効果ガス排出量の直接減少につながることを示した。

ヨーロッパ

GM作物への懸念を論じるセミナーをEU議会が開催

 公的研究と規制イニシアティブ(The Public Research and Regulation Initiative 、PRRI)とEuropaBioは、「技術革新の束縛を解放する:ヨーロッパはGM作物を封鎖するのかそれとも活用するのか?」と題したセミナーを2016年9月27日にブリュッセル、ベルギーで開催し、遺伝的組換え(GM)作物に関する懸念について議論した。

 欧州は農業バイオテクノロジーの発明を支援してきたが、GM作物を阻止する取り組みを、どの国よりも行っている。欧州のGM作物に対するこの冷遇ぶりは、発展途上国の農業の近代化を妨げているのではないか? 欧州の科学者は、この技術革新が他の地域で定着しているのをどのように見ているのだろうか? 欧州は、他国の経験から何を学ぶことができるのか? どうすれば科学がその座を取り戻すことができるのか?

 上記のことがセミナーで取り上げられたのは、農業バイオテクノロジーの技術革新が束縛されており、増加する世界人口を養うために働く農業従事者を技術革新に触れるのを妨げることになるとの懸念からである。セミナーで講演したEU議会のメンバーのAnthea McIntyre氏と Lambert van Nistelrooji氏は、気候変動、人口増加、最小の環境影響と持続可能な農業の実践の必要性に照らしてGM作物の導入を呼びかけた。

 ノーベル賞受賞者であり、GM作物について反対するグリーンピースへの請願書を送ったRichard Roberts博士は、「世界の多くの地域で何百万人が栄養失調あるいは飢えているときにGM作物を無視できるものではない」と率直な見解を述べた。その他の公共研究部門、産業界からの講演者、農業者団体、および政府機関からの講演者は、農業、特にGM技術と新しい育種技術(NBTS)は、育種家の道具立てであるとの見解を共有した。彼らはまた、GM作物に対する反対行動は、健全な科学の裏付けのない人類に対する犯罪であると述べた。講演者はまた、ヨーロッパは農業にGM技術とNBTSを受け入れるように発展途上国のためにリーダーシップを発揮し、農村における高齢化、多くの国で食糧不安、および気候変動など、農業における課題に対処すべきであると述べた。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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