国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年10月】

(2018.11.08 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年9月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

「遺伝子組換え種子は農業者が気候変動に対応する助けになる」とBill Gates氏

 Bill and Melinda Gates財団の共同理事長であるBill Gates氏は、2018年9月12日から14日にかけてサンフランシスコで開催された地球気候行動サミットの会議で、革新力を気候変動にまで及ぼすべきだと述べた。Gates理事長は、気候変動に直面し、影響を受ける人々を支援し、ますます高まるエネルギー需要に対応するためには、革新力が鍵となると考えを述べた。

 Gates理事長は、気候変動の影響で苦しみを受ける大部分は、「十分な食べ物がない状況に陥り、収穫の少ない年を乗り切るための十分な蓄えや備えを持たない小規模農家だ」と述べている。彼はその結果、飢えと栄養不良が起こると付け加えた。

 Gates理事長はインタビューで、「我々がなすべきことはこれらの農業者に農業技術と新しい種子を提供することである。つまり干ばつに対応し、洪水対応を改善し、基本的に生産性が高い種子を農家に提供することである。GMOと呼ばれるこれらの新しい種子は、先端科学を使って生産性を倍増させ、干ばつに対処し、飢餓を避けるものである」と語った。

アフリカ

ケニア大統領がBtワタ栽培を承認

 ケニアのUhuru Kenyatta大統領は、害虫抵抗性のBt遺伝子組換えワタの栽培がワタ業界の活性化につながる可能性を探るため、保健省、農業省、貿易、産業および企業省に指示を出した。Kenyatta大統領は、英雄記念日の講演で3省庁が協力して、Btワタを導入する可能性を含めて、ワタ産業を再生復活させる迅速な仕組み作るように指示した。

 大統領令により、現在、国家実績試験(NPT)を受けている作物は商業化への大きな一歩を踏み出すことになる。この発言は、国の経済成長を加速させることを目指した行動計画に新たな刺激を与えることになる。この計画の下、政府は繊維・アパレル産業を復活させ、2022年までに現GDPに占める製造業の貢献度を現在の9.2%から20%に引き上げるために、Btワタの導入を義務付けている。

 再生活性化プロセスの一環として、政府は、ワタ栽培を通じて直接雇用68万人、ワタ繰りで210人、統合工場6000人、衣類製造業者2万5000人の雇用を創出することを目指している。この再生活性化はさらに12億Ksh(シェケル:1187万米ドル)の輸入代替品を創出し、ケニアの外貨換算で87億5000万ドルシェケル(86百万米ドル)相当の輸出品の自給率を高めることになる。

 ワタ栽培農家は3万人に過ぎず、一方、ワタ産業は、20万人以上の農家を支える可能性がある。国の繊維作物統計によると、ワタの繊維であるリントの国内需要は2万1000ベール(梱包の単位)の現生産に対して14万ベールもある。 「ワタ農業は、かつてこの地域の多くの人々の収入と生活の主要な源泉だった」と大統領は嘆く。

 Btワタの導入は、現在の推定生産性572kg/haから2500kg /haに生産性を高め、生産コストを40%削減することが期待されている。GMワタ栽培に対する大統領のこの考えは、ケニアの政策立案者によるインドのワタ栽培地域の調査旅行の結果である。インドのGMワタの成功例は、改善された作物がワタ栽培の苦境を解決するために大きく貢献することを政策立案者が確信したことによる。

エチオピア政府、農業バイオを用いた経済発展を支援

 エチオピア政府は、国家経済成長を維持するために農業バイオテクノロジーを利用すると、科学技術革新国務大臣Shumete Gizaw博士が明らかにした。国務大臣は、アジスアベバでのバイオテクノロジーとバイオセーフティに関する科学者のための技術コミュニケーションワークショップのオープニングで、政府はバイオテクノロジー研究とイノベーションを支援する政策を通じて貧困削減へのコミットメントを再確認したと述べた。

 Gizaw博士は、気候変動の影響により、国の食糧安全保障の貧困状態に対する政府の懸念を表明した。 「これまでの歴史をみても、エチオピアの食糧生産は、降水量の変動、干ばつの長期化、作物の荒廃、飢饉などの影響を強く受けて来ている。農業バイオが我々の食糧システムに対する気候変動の影響をなくするために役に立つと信じている」とも述べた。彼はさらにEBTi(Ethiopian Biotechnology Institute)がコミュニケーション戦略の立ち上げを主導したと述べた。EBTiは、国の関係者の間でバイオテクノロジーとバイオセーフティの知識と意識を全国的に改善することを目標としており、また、作物バイオテクノロジーの利点、リスク、影響についての正確な情報を適時に提供することにより、一般市民がバイオテクノロジーの適切な利用について正しい情報に基づいた意思決定を行うことができるようにすることも目的としている。

 大臣は、効果的なコミュニケーション戦略と機能的なバイオセーフティシステムの重要性を認識し、これらなくしては、安全なバイオテクノロジー開発の追求、その技術が国や地域でもたらす利益を享受することが困難であることを再認識した。 「EBTiには、国内外の主要な関係者の関与と農業バイオテクノロジー研究とコミュニケーションの適切かつ効果的な実施を提供することが義務付けられている」とGizaw博士は改めて指摘した。

ウガンダでもバイオテクノロジーが成長を変える可能性

 ウガンダでは、未開拓だが大いに有望なバイオテクノロジーによる成長の可能性を持あると科学技術革新大臣Elioda Tumwesigye博士と述べた。大臣は、バイオエコノミーがウガンダに油よりも多くの資金をもたらす可能性を秘めているとした。

 Tumwesigye氏は、2018年9月19日、ウガンダバイオテクノロジー・バイオセーフティコンソーシアム(UBBC)が主催する「バイオテクノロジー科学年次大賞」で発言した。UBBC議長のErastus Nsubuga氏は、大臣の発言に呼応して、科学への投資はバイオエコノミーの発展を支え、これから長期にわたり続くものであると述べた。

 表彰式典でノルウェー大使代理のHans Peter Christopersen氏は、農業をより効率的かつ競争力のあるものにするためには、バイオテクノロジーが重要だと認識を述べた。「ウガンダは農作物から魚や動物に至るまで非常に豊かな可能性を秘めているが、時代遅れの慣行に依存しているため大部分は未開拓のままである」と述べた。

 このイベントでは、最も優れたバイオテクノロジーの革新家、起業家、コミュニケーターが、同国におけるバイオテクノロジーの研究開発を促進したことで賞を授与された。

南北アメリカ

2020年までにゲノム編集高食物繊維コムギが市場へ

 米Calyxt社は、ゲノム編集高食物繊維コムギの最初の収穫が完了したと発表した。高食物繊維コムギは、、うどん粉病抵抗性コムギ、高オレイン酸ダイズ、高オレイン酸/低リノール酸ダイズ、品質改良したアルファルファ、冷蔵保存可能ジャガイモ、還元褐変ジャガイモに並ぶ7番目のCalyxt社製品で、いずれも米国農務省(USDA)が規制不要と宣言している。

 「食物繊維が健康な消化に不可欠で、冠状動脈性心疾患や糖尿病などの食物関連の慢性疾患のリスクを低下させる可能性があるため、高食物繊維製品に対する消費者の需要はこれまでになく高い。大部分の成人消費者は、推奨されている食物繊維の半分程度しか摂取していない。しかし最近の進歩により、標準的なものよりも食物繊維を最大3倍多く含む製品の開発に一歩近づき、同じ食味を持ったもので消費者の好みに適合した健康的な選択肢となった」とCalyxt社 CEOのJim Blome氏は説明している。

 Calyxt社の高食物繊維コムギは、ゲノム編集技術であるTALENを使用して開発され、ヒトゲノムよりも約6倍のコムギゲノムに小さく正確な改変をもたらした。ゲノム編集コムギは、2020/2021年までに商業的に入手可能となる予定だ。

米国ではゲノム編集ダイズを収穫へ

 米国の3州の農家は、1万6000エーカー(約6475ヘクタール)の農場で遺伝子編集技術によって開発されたダイズを収穫している。 ダイズは、揚げ油、サラダドレッシング、グラノーラバーでの使用のために消費者に販売されることが期待されている。これは、新しい有望な技術を用いて開発された、米国における最初の商品化された作物である。

 2018年3月、米農務長官Sonny Perdue氏は、ゲノム編集などの新しい育種技術の製品は、この技術を使用する際にリスクがないため規制されないとの声明を発表した。 Perdue氏によると、新しい技術は、新しい特性を正確かつ迅速に導入することができるため、従来の植物育種ツールを拡張し、他の技術を使用するよりも早く農業者に改良された作物を提供することができる。

遺伝子組換え食品は“キモイ”感情に直面

 セントルイスのWashington大学のOlin Business Schoolの助教授Sydney Scott氏が率いる研究者らが行った新しい研究によると、遺伝的に改変された(GE)食品は「“キモイ”といった不快な感じ方」にさらされている。農業における遺伝子工学の歴史は20年以上にもなるが、消費者は依然として懐疑的か気持ちが悪いという感情を抱いていると結論している。

 Scott氏は、「消費者はDNAを突っつくことは問題ないとは言っておらず、むしろ不快だとしている。人々は、気持ちが悪い」と指摘した。つまり、人々は自然と自然なるものを神聖とみなして、遺伝子組換え食品は自然の冒涜とみなしているという。また研究者は、消費者が「うわさの魔法の法則」に従うことも示されている。これは、自然食品とそれ以外のものとのわずかな接触がそれを汚染するという考え方である。「スープのボウルのイエバエの羽で、食べ物全体を食べられないようになる」と同じことである。

 研究者らは、GE作物規制への4つの政府のアプローチには、振興(promotional)、許容(permissive)、予防(precautionary)、防止(preventative)と段階があると説明。欧州連合(EU)は制限的であるが、米国は許容的としている。この研究はまた、GE食品の賛成者とその反対者との間のギャップを明らかにすることを目的としていた。 Scott氏は、科学的な情報だけを考えていてはギャップの解消ができないと指摘。より良いコンセンサスに到達する方法を見つけようとすべきと付け加えた。

米財団が非GMO表示の禁止をFDAに請願

 米国の科学技術シンクタンクである情報技術と革新事業財団(ITIF)は、食品医薬品局(FDA)に非GMO表示使用禁止について、市民権を行使して請願した。このグループは非GMO表示について、「食品、食品添加物およびその健康への効果と安全性に関して誤りや誤解を招いて消費者を欺くことになる」と主張している。 ITIF上級研究者のVal Giddings氏は、「非GMOプロジェクトによって開始されたこのような表示は法律違反の行為である」と言い、FDAに対して、これらの虚偽の主張によって広がった混乱に対して反対するように求めている。

アジア・太平洋

豪南オーストラリア州のGM作物の一時凍結を見直しへ

 オーストラリアの南オーストラリア州で遺伝子組換え作物の栽培に関するモラトリアム(導入の一時凍結)について、独自の見直しが進行している。Kym Anderson AC名誉教授がこれを率いることになる。現在の南オーストラリアGM食糧作物モラトリアムは、貿易と市場アクセスのためのものである。

 この見直しは、南オーストラリア州のGM作物の商業栽培についてモラトリアムが市場利益をもたらす利用可能な証拠を評価するものである。また、南オーストラリア州における農場の影響、食品製造、サプライチェーンのコスト、研究開発投資への影響などに限定されず、モラトリアムの維持、変更、または削除の経済的コストと利益を定量化しようとするものである。

 この見直しは、様々な視点からの理解とモラトリアムの現在および将来の経済的影響をよりよく理解することを目的としている。この見直し完了後、南オーストラリア州のGM食用作物に関する政策決定が正しい科学情報に基づいて行われることが可能になる。

ヨーロッパ

英国の一般大衆が遺伝子組換え作物を支持するとの調査結果

 英国の国民は十分な情報を得ており、科学および技術を支持しているが、政治家は彼らの希望と恐れを無視している。 これは科学、技術、医学、環境に対する世論に対する2018新科学者の調査結果によるものである。

 この調査は、2018年8月に英国成人2026人を対象に英Sapio Research社がオンラインで行った。 結果は、国民の関心を集めている最優先課題は、遺伝子工学、人工知能、癌、気候変動であることを示した。 彼らは、これらの話題が「社会や人間の生活に最も影響を及ぼす可能性が高い」と述べた。 さらに、大部分(69%)が遺伝子組換え(GM)作物を支持しており、世界の食糧供給に役立つと述べている。 大きな割合(80%)は、遺伝子工学が病気の治癒や根絶に役立つとも信じている。

英EUSTICE環境・食糧・農村大臣が「ゲノム編集作物は必須」と指摘

 英環境・食糧・農村省(Defra)大臣のGeorge Eustice氏は、英国が化学農薬の使用を減らそうとするならゲノム編集作物が必須であると指摘した。同氏は、英国政府の'Chequers' Brexit plan(7月に閣内合意した計画)がどのようにゲノム編集研究に影響を与えるかについて明確にしてほしいと要求している科学者および業界リーダーのグループからの手紙に応え、この声明を発表したとしている。この手紙は、欧州司法裁判所(ECJ)がゲノム編集について、遺伝子組換えに適用されるのと同じ規則に従わなければならないと宣言した後に送付されたものである。

 「我々は、ECJが判断した意見に同意していない。我々は、ゲノム編集とシス遺伝子操作(cisgenesis)は、従来の育種技術の延長上にあり、我々が何十年も持っていたものだと考えている」とEustice氏はDefraを代表して述べた。「 EUでは農作物の栽培を許可していないにもかかわらず、GM食品がEU、特に動物飼料で広く販売されているケースがある。こうした決定は国家単位で行うものであり、共通のルールに影響されるべきものではない」と強調した

Brexit後の作物規制には健全な科学の導入が急務と民間報告書

 独立した分析報告書などは、英国は、作物バイオテクノロジーと新育種技術(NBTs)に関するEU規制から独立することに英国が失敗すると、利用可能な経済性およびより広い社会的利益を得る機会を逃することになると報告している。

 この報告書は、PG Economics社の農業経済学者Graham Brookes氏が執筆したもので、ゲノム編集作物および遺伝子組換え生物(GMO)の規制に関する3つのシナリオを検証している。報告書は、英国が独自の健全科学に基づく規制制度を設定すれば、第一級の食品安全性評価システムを提供し、農業者により良い種子を提供し、競争力を高め、消費者の需要を満たすことができ、長期的に最大限のベネフィットを英国にもたらすとしている。世界のほとんどの国で実施されている規制制度と整合的かつ健全な科学に基づいてGMOとNBTの両方を規制する独自の道を英国が設定すれば、メリットが最も高くなる可能性が高いとのことだ。

 現在、全ての作物バイオテクノロジーの革新は、EUの規制枠組みの対象となっている。 7月に欧州司法裁判所(ECJ)は、NBTが遺伝子組換えと同じ規則の対象となると裁定した。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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