国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2016年9月】

(2016.10.13 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年8月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

GM種子市場はバイオ燃料用途の増加で2020年まで拡大続く
世界規模の技術研究・顧問会社であるTechNavio社はその新しい報告書の中で、世界の遺伝子組換え(GM)種子市場は2020年まで10%に近い複利成長率(compound annual growth rate, CAGR)で成長すると述べている。 同社の最新レポート「世界の遺伝子組換え種子市場:2016年から2020年」には、2020年に向けた世界の遺伝子組換え種子市場の成長見通しが描かれている。

報告書は、4つの要因が世界の遺伝子組換え種子の市場の成長に寄与すると述べている。1.バイオ燃料への利用の拡大、2.動物飼料の需要増加、3.世界規模の食品企業からの非GM食品に対する圧力、4.非GM食品のプレミアム価格設定──の4つだ。

予測期間(2016年から2020年)中のバイオ燃料の需要は、消費者の環境への関心が高まるのに伴い増加する。バイオ燃料としては、コムギ、ダイズ、サトウキビ、トウモロコシなどのエネルギー作物が利用される見通しだ。アジア・太平洋とアフリカの政府が、バイオ燃料の利用を奨励するようになると、エネルギー作物の生産が増加し、世界的なGM種子の市場の上昇を後押しすることになる。国際エネルギー機構(IEA)は、予測期間中にバイオ燃料のための農地が1%増加すると見込んでいる。

報告書によると、北米によるGM市場の優占が続き、2020年までに総市場シェアの約30%を占める可能性がある。北米の農業バイオテクノロジーの導入率の上昇は、この市場を革新し、環境条件─例えば旱魃、塩害、および病害など─が多くの作物の収量と生産に大きな影響を与えることに解決策を提供することになる。除草剤耐性と害虫抵抗性GMトウモロコシやダイズ種子の需要は、着実にこの領域での市場の成長を押し上げる。

FAOはトウモロコシ、コムギ、コメの生産増を予測

国際連合食糧農業機関(FAO)の食料価格指数によると、2016年8月は穀物価格が低下し、世界的な穀物生産の見通しが改善した。8月の食品価格指数は165.6ポイントで7月から1.9%上昇し、前年同期比約7%の増加だった。8月はコムギ、トウモロコシ、コメは低下したが、このつきの増加は主にチーズ、パーム油の動きによって引き起こされた。 FAOは、また、穀物の供給・需要の概要を出したが、これによると2016年の世界穀物生産予測は、25億6600万トンに上り、7月の予測よりも2200万トン上昇している。この予測によると世界的なコムギの収穫は、これまでにない増加となり、米国のトウモロコシも大きな上方修正が期待される。期待される穀類の増加によって在庫が多くなり世界的な在庫と利用の比率を25.3%押し上げることになり、これは、今シーズンの開始時に予測よりもさらに快適な需給状況になっているとFAOが述べている。

人々はなぜ遺伝子組換えのような革新的技術に反対するのか

Harvard大学教授のCalestuos Juma氏は、人々が遺伝子組換えのような新しい技術になぜ反対するのかを検証した書籍「革新とその敵:なぜ人々は新技術に反対するのか」を出版した。

本書は遺伝子組換え作物や遺伝子改変サケを取り巻く課題について、数章を割いて議論している。Juma氏によると、人々はその新規性の故に革新を見下しているのではなく、生活を混乱させ得るものが入ってくることに反対するのである。革新は、人の経験に不可欠な自然やその感覚から人々を引き離す傾向にある。

Juma氏はGM作物の規制に関する国際交渉を目の当たりにした1990年代後半の経験からこの書物を書く発想を得た。彼は対抗グループの議論を聞き、正反対の考えを持っていたとしても、共通のゴールにたどり着くことを認識した。

南北アメリカ

米国環境保護庁、Syngenta社の新規トウモロコシスタック品種を承認

 スイスSyngentaの新規スタック品種Agrisure 3120 E-Z Refugeが、米国環境保護庁(EPA)からの登録の承認を受けた。Agrisure 3120 E-Z Refugeは、地上部の害虫制御を提供するものである。これは、トウモロコシアワノメイガと実を食する害虫の両方を制御するための避難品種である。

Agrisure 3120 E-Z Refugeは、2017年栽培度からSyngenta社及びその種子販売会社との合意を得て利用でききるようになる。また、生産者は、Agrisure Artesian技術とAgrisure 3120 E-Zの組み合わせで水利用最適技術の利用も可能になる。

コーンルートワーム制御のための非Bt蛋白質を発見

 DuPont Pioneerの研究者が、北米とヨーロッパのコーンルートワーム(ハムシモドキの幼虫、WCR)に殺虫制御を示す非Bacillus thuringiensis(BT)蛋白質を発見した。

 研究者は、IPD072Aaと命名した殺虫蛋白質をPseudomonas chlororaphisから単離したと述べた。IPD072Aaを発現する遺伝子組換えトウモロコシは、圃場でコーンルートワーム(WCR)からの食害を防いだ。研究者らは、この蛋白質が、将来のトウモロコシのコーンルートワームを制御するための印紙となると述べている。またBt以外の細菌が害虫制御形質開発のためのこれまでとは違った源になることを示唆している。

米国政府は、バイオテクノロジーに関する連邦規制政策を更新
 米国連邦政府は2016年9月16日、バイオテクノロジー製品のための規制制度に対する国民の信頼を確保する上での重要な一歩を踏み出し、その制度下での透明性、予測性、協調性、及び制度の効率性を改善する。米国環境保護庁、米国食品医薬品局、米国農務省は、バイオテクノロジー製品のための連邦政府の規制システムを近代化するために、2つの文書を発表した。

 第一の文書は、1992年に更新された「協調枠組み」の更新であり、連邦政府がバイオテクノロジー製品の規制について3つの主規制機関の役割と責任の包括的な概要を作成した。この30年で初めてのものである。この改正では国民に堅牢かつ柔軟な規制構造の全体像を提供して、現代のバイオテクノロジーによる全ての成果物についての適切な概要を提供している。

 第二の文書である「バイオテクノロジー成果物の規制制度の近代化のための国家戦略」では、連邦規制制度は、将来のバイオテクノロジー成果物に伴ういかなるリスクをも効率的に捕らえるとともに、革新性、健康と環境の保全、規制制度に対する国民の信頼を保ち、透明性と予見性を高め、かつ不要なコストと負担を軽減するものとする。この戦略では、連邦政府機関は、バイオテクノロジーのこれからの成果物の安全性、規制制度の国民信頼の向上、将来の技術革新と競争力への不必要な障壁を防止するために、不断の努力をするというものである。

アジア・太平洋

インドの技術委員会が遺伝子組換えマスタードの安全性認める
 インド遺伝子工学鑑定委員会(GEAC)の技術小委員会は、遺伝子組換えマスタードハイブリッド(Dharaマスタード11またはDMH-11)が「ヒトや動物に公衆衛生や安全上の懸念は全くない」と述べた。小委員会は、作物の安全性を評価し、2016年9月5日から10月5日に行われた環境、森林省と気候変動(MOEF&CC)のウェブサイトへのパブリックコメントを集めた食品と環境安全(AFES)報告書を評価したものである。

 インド初の遺伝子組換えマスタードハイブリッドDMH-11は、1996年から2015年にかけて行われたUniversity of Delhiの南キャンパスのプロジェクトで開発された。公的セクターにより初の遺伝子組換え食用油糧作物を開発したこのプロジェクトは、インド科学技術省(MOST )のバイオテクノロジー本部と、インド最大のミルク及び乳製品の生産・供給業者である国立酪農開発委員会(NDDB)、マスタード、食用油企業であるインドDhara社の資金で行われた。

研究

シダ由来蛋白質を発現する遺伝子組換えワタがコナジラミを防御

 コナジラミBemisia tabaciは、畑作物の悪名高い害虫である。それはまた、ウイルス性疾患の媒介として機能する能力がある。現時点では、コナジラミに抵抗性を持っている遺伝子組換え作物はない。そこでインドの科学産業研究や他の研究機関の科学者たちは、この有害な害虫への耐性を持つ遺伝子組換えワタを開発する研究を行った。結果は、Nature Biotechnologyに掲載された。

研究者は、天然食用シダTectaria macrodontaに存在するTma12として知られている蛋白質を同定した。 Tma12のコナジラミに対する半数致死濃度(1.49μg/ml)で、致死量以下の用量でコナジラミのライフサイクルを妨害する。この蛋白質を遺伝子組換えワタで発現させると、隔離圃場でコナジラミ侵入に抵抗性を示した。トランスジェニックワタ系統はまた、コナジラミによって媒介されたコットンリーフカールウイルス病に抵抗性を示した。また、Tma12を与えたラットは、組織学的または生化学的変化を示さなかった。

研究の結果に基づいて、蛋白質Tma12は、コナジラミ、それが媒介するウイルスに抵抗性のGM作物を開発するために利用できる。

雌蚊を減らす遺伝子を発見
米Virginia Polytechnic Institute and State University (VirginiaTech)の研究者は、多くの世代にわたって雌蚊の個体数を減らすことができる遺伝子を発見した。雌蚊は産卵のために血液を吸うのであり、その故にマラリア、ジカ、およびデング熱を引き起こす病原体の媒介となっている。

Zhijian Tu氏とその共同研究者は、ハマダラカ蚊(Anopheles stephensマラリアを媒介する蚊)の常染色体上に特定のY染色体の遺伝子を配置すると、この遺伝子を継承する全ての雌の胚が死滅することが分かった。Guy1と呼ばれるこの遺伝子の余分なコピーは雌雄ともに渡されるが、雄は生き残る。

Guy1の余分なコピーは、遺伝子を継承していなかった幾つかの雌を残し、子孫の半分に受け継がれる。全てを雄の蚊とするためには、全ての子孫がGuy1の余分なコピーを継承する必要があるが、これはゲノム編集の技術を用いることで将来達成できると述べている。

新育種技術

トウモロコシの標的突然変異誘発のためのアグロバクテリウム配送型 CRISPR / CAS9

 CRISPR / Cas9は、いくつかの生物における強力なゲノム編集ツールである。他のヌクレアーゼベースのゲノム編集ツールよりも簡単であるが、CRISPR / Cas9の最適化がDNA送達および編集する種の組織再生法でやりやすい。Iowa State UniversityのSi Nian Char氏と共同研究者のチームがISU Maize CRISPR法、すなわちアグロバクテリウム配送型 CRISPR / CAS9使ってトウモロコシの高い頻度での標的突然変異誘発を達成した。

 このシステムは、大腸菌クローニングベクターとアグロバクテリウムのバイナリーベクターで構成されている。この系は、単一または複数の標的遺伝子にむけて4つのガイドRNAまでをクローン化できる。チームは2重複ペアで4つのトウモロコシの遺伝子を用いて突然変異誘発頻度とその遺伝伝達についてシステムの評価を行った。 2つの遺伝子座のいずれかにおける変異の任意の組み合わせでT0世代のトランスジェニック事象を、70%以上の速度で発生した。

 T1世代では、唯一の望みの突然変異対立遺伝子をもち、CRISPR / Cas9導入遺伝子のない個体を生成することができた。異なるCas9 / gRNAモジュールをもつ二つの個別のアグロバクテリウム株を組み合わせることによる胚の二重感染も実施され、これで資源の節約が可能になる。ISUトウモロコシCRISPRは、トウモロコシにおける標的突然変異誘発のための有効なツールとなり得る。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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