国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年9月】

(2018.10.11 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年9月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

地球温暖化で害虫による作物被害が増加

Scienceに発表された研究によると、地球温暖化により気温が上昇すると、害虫の代謝活性や個体数増加のために食用穀物収量の大幅に減少することになりそうだ。

「気候変動は作物に悪影響を及ぼすだろう」と、この研究の著者の一人であるUniversity of VermontのScott Merrill氏は語る。「気候変動による害虫の増加が見込まれる」

研究チームは、イネ、トウモロコシ、コムギなどの害虫が様々な気候変動シナリオにどのように対応するかを検討した。この結果、地球温暖化により、特に温帯地域における害虫被害による作物の損失が増加することを示した。損失は1度の温度の上昇ごとに10%から25%増えると予測されている。研究者らは、この損失は害虫の代謝活性および個体数の増加によるものであると説明している。暑くなると昆虫の体内における代謝が更新し、食べる量が増える傾向がある。個体数は最適な温度で最良に生育すること最も増加し、あまりにも寒すぎるまたは暑すぎると個体数の伸びは遅い。したがって、損失は温帯地域で最も大きいが、熱帯地域ではそれほど厳しくはない。

「温帯地方は害虫にとって最適な温度ではないので、そこの温度が上がると、個体数はより速く多くなる」と農作物相互作用の生態の研究者であるMerrill氏は語る。 「しかし、熱帯の昆虫は既に最適な温度に近いので、温度が上がると個体数増加はより遅くなるだろう。つまり害虫にとって暑すぎるのである」とMerrill氏は語っている。

 詳しい研究の内容は、以下のサイトを参照されたい。

http://science.sciencemag.org/content/361/6405/916

「世界の飢餓は継続して上昇する」と国連が報告

「世界の食糧安全保障と栄養状態に関する国連報告2018」とによると、飢餓人口は世界的に増加しており、2017年には8億2100万人、即ち9人に1人が飢餓に瀕している。

国連の報告によると、世界的な飢餓は3年連続して増加しており、10年前の水準と同等になった。報告書はまた、児童発育障害および成人肥満を含む複数の形態の栄養失調の対処に遅れがあり、何億人もの人々の健康を危険にさらしているとを強調した。これらの調査結果は、2030年までに飢餓ゼロにするという持続可能な開発目標を達成するためには、より多くの努力が迅速に行われなければならないと明確に警告している。

報告は、降雨パターンや農業季節に影響を与える気候変動、旱魃や洪水などの極端な気候条件だ、紛争や経済減速とともに飢餓の増加の主要な要因であると述べている。

詳しい情報は、以下のサイトにあるニュースリリースを参照されたい。

http://www.fao.org/news/story/en/item/1152031/icode/

アフリカ

ガーナの農業リーダーが農業バイオテクノロジーの支援に転向

ガーナのGhana貧農民農業協会(Peasant Farmers' Association in Ghana)の元会長であるMohammed Adams Nasiru氏は、農業バイオテクノロジーを支援する姿勢を表明した。この協会は、バイオテクノロジーに批判的として知られてきた。Nasiru氏は、技術に関する正確な情報を現場の科学者から受け取った後、支援へと態度を変えた。

 「私たちの多くは、遺伝子組換え作物(GMO)は悪であるとの誤解へと誘導されていたが、今は真実を知り、私はGMOに非常に満足している。 GMO何ら害がないと考えている」と述べた。彼は、2005年から2014年にかけて同協会の全国代表であり、バイオテクノロジーに対する強い反対を表明してきた。技術の実際の利点について学んだ後、Nasiru氏は、バイオテクノロジーの批判勢力が農家から大きな支持は得られないとの認識を明らかにした。「これまでのキャンペーンは、どこかからお金を集めててき、通りに出て大騒ぎするような人々によって行われてきた。この騒ぎの後、私たちはガーナ内外の科学界の人々に出会った。このような技術を受け入れないのは、彼らの独自の偏見的利益があるからだ」と述べた。 「首都アクラに住む一部の人々は、我々に『GMOは悪い』と思い込ませた。しかし、アフリカの農業関係者の団体である農業バイオテクノロジーに関するオープンフォーラム(OFAB:Open Forum on Agricultural Biotechnology)が私たちと話をして、草の根活動をしてくれたことで事態が変わった」と付け加えた。

ケニアの科学者、関心の低さがGM作物の商業化を遅延と懸念

ケニアの科学者たちは、遺伝子組換え生物(GMO)に関連する否定的な認識が、同国におけるGM作物の商業化を妨げる可能性があるとの懸念を表明した。キャッサバの利害関係者の研究期間中、GMのキャッサバ研究は沿岸地域の隔離野外試験場(CFT)で行われているGMキャッサバ研究を利害関係者が見学するツアーで、GMOは承認前に非常に厳しい安全性評価が行われているとして、科学者たちはバイオテクノロジー作物に関する懸念を否定した。

Kenyatta大学の生化学・生命工学科のRichard Oduor博士は、GMOへの認識が低いために2012年にGM食品の輸入禁止措置がなされたことを嘆いた。彼はそれを不幸であり、誤解だと説明した。彼は、GM研究に資金を提供し続けていながら、なぜ政府が禁止を解除していないのか疑問を呈した。 「科学者は、禁止について政府に助言する十分な機会を与えられていなかった」とOduor博士は述べた。 また、「GM食品は、世界保健機関(WHO)や米国食品医薬品局(FDA)などの評判の高い国際機関によって承認されている」と付け加えた。

ISAAA AfriCenterの代表であるDr. Margaret Karembu博士は、この禁止措置は、重要な意思決定者と政策立案者が持っているバイオテクノロジーに関する理解の程度の反映であると述べた。 「GM作物の安全性と利点について、私たちの社会のすべての人々に関心を持たせる時が来ている」と彼女は語った。Karembu博士は、この禁止措置がバイオテクノロジー作物の研究開発の阻害要因であるとした。

一方、Karembu博士は、年末までに運営される予定の穀粉混合ガイドライン作成のための政府の動きを讃えた。この取り組みは、キャッサバ、ソルガム、キビ、サツマイモなどの全ての穀粉混合を取り上げて、食料安全保障と栄養改善に貢献しようとするものである。「この取組みにより、キャッサバは国内の主要な食糧安全保障作物となる国家体制に移行することが期待される」と彼女は語った。

ブルキナファソの農業者はBTワタ栽培の再開を要望

 ブルキナファソの綿花栽培は、Btワタの栽培が禁じられてからこの2年間で急速に落ち込んだ。これは、2018年9月11日にOuagadougouで行われたISAAA報告書「遺伝子組換え/GM作物商業栽培の世界的動向2017」が公表された際にBurkinabéの農業者が報告したものである。ワタはBurkinabéの農業者にとって2008年から2015年にかけての7年間アフリカ第1位の生産国であり、最も重要な換金作物であった。これは、同時期にBtワタがブルキナファソで商業的に栽培されていたのと偶然の一致ではない。

 30年以上のBurkinabéでワタ農業者を務めているFrancois Traore 氏の場合、従来種では農薬噴霧が6-15回必要だったのに対して、Btワタでは噴霧が2回に減少し、農薬コストは大幅に減ったという。「Btワタを栽培できた2年間は、素晴らしいものだった」と彼は述べた。 Btワタの栽培は、短繊維長に関する懸念が出て停止された。その結果、この報告書によると、アフリカワタキバガ(African bollworm)が再興して化学薬剤の70%使用量増加が起こり、多くの農業者がこの国での第一の外貨獲得物質の栽培から手を引いた。「労働力を減らし、利益を上げ、農薬との常時接触を避けられるこの技術を諦めことは極めて不幸なことである」とTraore氏は付け加えた。この会合に参加した農業者は、こぞって遺伝子組換えワタプログラムを復活させて、問題を迅速に解決するよう政府に全面的に促した。

 ブルキナファソ、エチオピア、ガーナ、ケニア、モザンビーク、ナイジェリア、タンザニア、ウガンダの8カ国がブルキナファソの首都Ouagadougouで、アフリカの農業バイオテクノロジーに関するオープンフォーラム(OFAB)の関係者に報告書を提示した。ISAAA AfriCenter代表のMargaret Karembu博士は、この技術を農業者に適切に伝えて農業投資の収益を最大限に活用する必要性を強調した。この行事の打ち上げはOFABの年次計画会議の主催で開催された。農業者、報道関係者、科学者を含む合計55人がこの会議に出席した。

南北アメリカ

南米の農家は遺伝子組換えダイズ栽培で大きな利益獲得

 除草剤耐性と害虫抵抗性を有するダイズ品種Intactaの栽培により、南アメリカの農業者には導入最初の5年間で収入が76億4000万ドル増加した。これは、GM Crops and Food journalに掲載されたPG EconomicsのGraham Brookes氏が行った調査によるものである。

 この研究では、ダイズ品種Intactaを導入して最初の5年間に、その利用が南米にもたらした経済的および環境的影響を評価した。この期間中、総計7360万ヘクタールにIntactaが植え付けられた。Intactaの種子に対して、従来の種子に比べて1米ドル多く費用を投じるごとに、3.88ドルの追加利益が得られた。これらの所得の増加は、収量の増加および雑草および害虫の防除のための費用の削減によるものである。さらに計算上は、農薬散布量を1044万kg削減し、温室効果ガスの排出を削減し、道路から330万台の車を取り除くことになる。

アジア・太平洋

少ない窒素資源で植物の成長を促進する分子を発見

 窒素を吸収する植物の能力を向上させる遺伝子があることがNatureに掲載された。イネ、コムギ、その他の重要な作物の肥料を減らす可能性があるという。

 中国科学アカデミーの植物遺伝学者Xiangdong Fu氏と共同研究者によると、現在使用されている作物は従来の作物ほど効率的に窒素を吸収することができないため、現在の作物の栽培には肥料が必要である。しかし、農地からの窒素に富む流出物が河川、湖沼、海洋に達すると、大量の藻類を繁茂させて酸素を消費し、水生生物を窒息させる事態を招いている。「それ故に、高収量だが肥料で生育する新しい品種を探す必要がある」とFu氏は付け加える。

 Fu氏らは、現行作物の窒素吸収不良や低植物長の原因として指摘されているDELLA蛋白質の役割を研究した。これらの蛋白質は在来種の作物では成長ホルモンによって破壊されているが、現行作物ではDELLA蛋白質はホルモンに対する耐性を持つため豊富に存在している。そこで、研究チームはDELLA蛋白質と戦う方法を探した。彼らは、36種の矮小イネ品種のDNAを調べ、窒素消費を支配する2つの遺伝子を発見した。遺伝子の1つはDELLAをコードし、他の1つは成長調節因子4(GRF4)をコードした。GRF4は粒度および収量のみに関与することが知られている。Fu氏とそのチームはさらに、GRF4がDELLAの影響を打ち消すことで窒素と炭素を吸収、代謝し、成長に良い影響を与えることを発見した。その後、彼らはイネ育種してGRF4蛋白質をより良い濃度になるようにした。この方法により従来種よりも少ない窒素で高収穫・短稈種育種につなげられた。

 詳しくは、以下のサイトを参照されたい。

https://www.nature.com/articles/d41586-018-05980-7

藍藻類が重要な食用作物の収量を向上

 Australian National University (ANU)の科学者たちは、藍藻類(シアノバクテリア)が持つ炭素固定機構を植物に導入することに成功した。この画期的な進歩は、コムギ、ササゲ、キャッサバなどの重要な食料作物の収量を増やすことにつながるものである。この研究のリーダーであるBen Long博士は、シアノバクテリアが有する植物の成長と収量が60%増加する可能性のあるシステムの一部を作物植物に初めて挿入した。シアノバクテリアのカルボキシソーム(carboxysomes)と呼ばれる区画は、二酸化炭素のエネルギーの豊富な糖への変換を非常に効率的に行っている。Long博士のチームは、シアノバクテリアを模倣することによって、あたかもターボチャージされたような炭素捕捉エンジンを植物に挿入することを果たした。

 大気中の二酸化炭素を固定する酵素であるRubiscoはその反応速度が遅く、しかも二酸化炭素と酸素を区別することも難しく、無駄なエネルギー損失を生じている。しかし、シアノバクテリアは、大量のガスをカルボキシソームに送達するために「CO2濃縮メカニズム」を使用し、糖へのCO2変換速度を高め、酸素反応を最小限に抑える。シアノバクテリア内のRubisco酵素は、二酸化炭素を捕捉し、植物中に見出されるRubiscoより約3倍速く糖を生成する。

 詳細は、以下のサイトを参照されたい。

http://www.anu.edu.au/news/all-news/blue-green-algae-promises-to-help-boost-food-crop-yields

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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