国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年9月】

(2017.10.12 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年7月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界


米団体が、発展途上国における農業革新を支援するキャンペーン開始

 米Cornell UnivarsityにあるThe Cornell Alliance for Scienceは、米Bill & Melinda Gates財団から640万ドルの助成金を授与されて「2020年までに1000万米ドル」のキャンペーンを開始した。

 キャンペーン中に調達された資金は、発展途上国の小規模農業者が農業革新を幅広く取り込むことを確保するためのアライアンスのグローバルな取り組みを支援する。

 The Cornell Alliance for ScienceのディレクターであるSarah Evanega,博士は、「小規模保有農民の生計を改善するという使命をもって、最も有望な革新の多くが公共部門で開発された。 全ての農業者が改善された種子と作物を導入するかどうかを選択できるはずである」と述べている。

 The Cornell Alliance for Scienceは、Gates財団から560万ドルの助成金を得て2014年に設立された。以来、35カ国を代表する科学者約400人を指導して国際ネットワークに成長した。指導を受けた科学者は、それぞれの国で科学及び根拠に基づいた農業政策をより効果的に伝えるために働いている。

 「The Cornell Alliance for Scienceは、その核となる役割である開発途上国の飢えや極貧から抜け出し健康で生産的な生活を送くれるよう支援するという我々の使命を反映している」

アフリカ


遺伝子組換え作物の承認の遅れがアフリカでの栄養失調を増加

 科学誌Plos Oneに掲載された研究によると、アフリカでの遺伝子組換え作物商業栽培の遅れは、経済的なだけでなく、健康と栄養においても大きなマイナスとなっている。

 オランダWageningen大学のJustus Wesseler氏および他の科学者は、アフリカの小規模農家の特定の懸案事項に対処する重要な特性を持つ遺伝子組換え作物の承認の遅れが与える影響を説明するための選択肢モデルを開発した。それによると例えば、ナイジェリアでの害虫抵抗性ササゲの承認が遅れると年間に、約3300万から4600万米ドルと100から3000人の命を失うことになるという。

 商業栽培遅延がもたらす損失に関するこれまでの研究と比較して、Wesseler氏の研究は、栄養失調への影響に焦点を当て、それが非常に大きなことを示した。「ケニアにとって、栄養失調の影響は、生産者への影響や消費者の受益よりも大きいものである。栄養失調が重要課題である国では、福祉効果の大きさを考慮するべきであることを示している。遺伝子組換え作物による栄養失調改善や収量増加戦略については、経済的および人道的な影響が

南北アメリカ


南米6カ国の農業大臣がEUと中国にGMO輸入承認の遅れを避けるよう要請

 2017年8月29日にブラジルのサンパブロ南部農業評議会(CAS)の第34回定例会議に参加したアルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、パラグアイ、ウルグアイの南米6カ国の農業大臣は、EUと中国に対し、遺伝子組換え作物(GMO)輸入承認の遅れを避けるよう要請した。

 閣僚は、8月29日に署名した共同声明で、「農業生産システムに悪影響を及ぼす時間的ずれのある承認の遅れによる国際貿易の障壁を最小限に抑えるべき」と述べた。閣僚会談では、世界保健機関(WTO)交渉、GMOの承認を得て情報交換を強化するために鳥インフルエンザの防除と防止のための共同措置、第3市場への遺伝子組換え(GM)製品の改善と取得に関する新技術開発──の3つの声明が署名された。

 共同声明である3番目の宣言は、第3市場へのGM製品の改善と取得に関する新技術開発に関するもので、地域内の各国が遺伝子組換え製品の承認に関する情報交換を一層密にする必要性を述べた。またさらに域内でのこれらの承認の時間的ずれを減少し、域内で関心の高いものの承認を早めるように進めるとしている。

 6人の閣僚は、パラグアイ農業大臣Juan Carlos Baruja氏、評議会の議長であるBlairo Maggi氏,ブラジルの家畜供給大臣ブレイロ・マギーチリ農業大臣Carlos Furche、ウルグアイの畜産農業漁業大臣TabaréAguerre、アルゼンチンの畜産農業漁業局長官であるリカルド・ネグリ(Ricardo Negri)である。

ヨーロッパ


EFSAがグリホサートには内分泌かく乱性がないと審査付きレビューで結論

 欧州食品安全機関(EFSA)は、グリホサートの潜在的な内分泌撹乱性リスク評価のレビューを発表した。

 現在の評価で、毒性学領域で利用可能な包括的なデータベースに基づいて、エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺、またはステロイド生成の作用様式を通じて、グリホサートに内分泌かく乱作用がないことを結論づけた。今手にできる生態的毒性(ecotox)研究についてこの結論と矛盾するものはなかった。

EU裁判所は遺伝子組換え生物に関する偏見には根拠がないと判決

 「科学的な社会を本当に望んでいるのか、偏見や誤解によることを望んでいるのか?」との質問をイタリア国立研究評議会の分子微生物学者Roberto Defe氏とスウェーデン農業大学の研究員Dennis Eriksson氏が提示した。両氏は、Euractivの記事をEU裁判所が、遺伝子組換え生物(GMOS)に関する偏見には根拠がないと判決した後で出版した。

 この記事では、GMトウモロコシを栽培したいイタリア東北部の2人の農家の話を語った。その中の一人の農業者Giorgio Fidenat氏は、2013年に成立したイタリアの法律のゆえに遺伝子組換えトウモロコシ(MON810)の栽培権を否定されたと訴えていた。9月13日に欧州連合裁判所(CJEU)は、イタリアの法律は法的根拠がなく、無効であると判断した。

 「この判決は一里塚である。遺伝子組換え生物(GMO)は、これまでヨーロッパにおける一種の心理劇(psychodrama)となっている。欧州連合(EU)加盟国の間で何年にもわたって論争が繰り広げられた後、2015年にEUは白旗を浮き彫りにし、指令2015/412でMON810やEUでの栽培が承認されるこれからのGMOの栽培を許可しないかどうかを各国に引き渡すことにした。 欧州連合裁判所(CJEU)の判決は、合理的で科学的なアプローチを回復する素晴らしい機会を提供することとなった。GMOを作り出す技術は既に古くなった。ゲノム編集技術が育種家の手段を広げ、容易で、速く、正確で、力のある方法により、農薬投入量の減少のみならず植物の気候変動に直面する助けとなっている」と研究者は、論文で結論付けている。

研究


中国CAASの科学者たちはコナガに抵抗性のある遺伝子組換えキャベツを開発

 中国農業科学アカデミーの研究者は、キャベツに対する破壊的害虫であるコナガ(diamond moth, Plutella xylostella)に抵抗性を持たせるためにBt遺伝子を入れることに成功した。研究結果は、Horticulturaeに掲載されている。

 研究者らは、Agrobacterium tumefaciensを介して、Bacillus thuringiensisのcry1Ia8遺伝子をキャベツに形質転換することで、遺伝子組換えキャベツを開発した。出来上がったキャベツはコナガへの感受性の高いキャベツや、Cry1Ac耐性のコナガの幼虫を防除できた。その後、4つの単一コピー系統およびそれらの性的に誘導された子孫におけるBt遺伝子の発現および遺伝を分析した

 分析の結果、遺伝子はキャベツのゲノムにうまく挿入され、メンデルの法則に従って子孫に伝わることが示された。これらの結果は、遺伝子組換え体は安定した遺伝形質を示し、キャベツの育種プログラムにおいてドナーとして使用できることを示している。
 

遺伝子組換え作物以外の話題


遺伝子組換え蛾の場試験をニューヨーク州で実施

 米Oxitec社が開発した遺伝子組換えコナガの雄の圃場試験を、ニューヨーク州北部で行われることとなった。

 Oxitec社が研究室で開発した雄の遺伝子組換え蛾は、子孫を殺す「時限爆弾」遺伝子を持っているため、害虫制御農薬の使用を減少できる。コナガは、毎年数十億ドルの作物の被害をもたらしている。

 Cornell Universityの研究者は、次の数カ月間、冬に蛾が死ぬ前に野生の蛾と接触した遺伝子組換え蛾がどのように行動するか観察することになる。 この試験が肯定的な結果をもたらすと、遺伝子組換え蛾の商業化への良いステップとなりうる。

ブラジルで遺伝子組換え蚊を疾病防止のために放出

 デング熱、ジカ、チクングニャなどの蚊が媒介する伝染病に対抗するために、ブラジルで遺伝子組換え蚊の新しい群が放出された。

 この遺伝子組換え蚊は、新しい子孫の再生を妨げるWolbachia細菌を含み、それによって集団および病気の蔓延を根絶する。研究リーダーのLuciano Moreira氏によると、この計画の有効性は3年から5年後にのみ評価されることになる。 彼はまた、自らの努力によって病気に対処することも住民に呼び掛けた。

 「住民は、自分の持ち分を行うことが大切である。例えが自分の周りの世話や、蚊が繁殖するための容器や容器に水を残さないようにすることで繁殖地を排除することが大事なことである」とMoreira氏は語っている。

 約200万個体の蚊が、2018年末までに放出されることを目標としている。

文献備忘録


遺伝子組換えで改良された動物に関する新しいISAAAポケットK

 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、遺伝子組換えで改良された動物というタイトルの新しいPocket Kシリーズを発行する。このミニ出版物は、病気伝染、食糧生産、環境汚染などのさまざまな問題に対処するために開発された遺伝子組換え動物を紹介している。遺伝子組換え動物の例として遺伝子組換え蚊、遺伝子組換えサーモン、光る魚、環境にやさしいブタ、および鳥インフルエンザ耐性の鶏がある。以下の ISAAAのサイトから無料のコピーをダウンロードできる。

http://www.isaaa.org/resources/publications/pocketk/55/default.asp

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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