国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年8月】

(2017.09.14 10:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年7月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

GM作物の副作用に関する研究報告の課題

 チリのバイオ業界団体であるChileBioのMiguel Sanchez氏と米University of GeorgiaのWayne Parrott氏は、GM食品と飼料による悪い影響の証拠としてよく使用される研究論文についての総説を発表した。この総説は、Plant Biotechnology Journalに掲載されている。

 総説では計35報の論文について評価を行っている。これらの論文は、GM作物の悪影響を強調するためにバイオテク評論家によって引用されることが多いものである(編集部注:具体的にはGM作物の副作用に関する4つの総説に引用された論文である)。ただし、科学的なジャーナルに掲載されていない研究と、食品全体やGM作物そのものの研究ではなく、蛋白質のみの免疫原性を評価した研究の論文は対象外とした。評価された35報のうち15報(43%)は、除草剤耐性ダイズ品種40-3-2の影響に関するものだった。害虫抵抗性トウモロコシMON810に関するのは23%、商業化されていない品種については9%だった。7つの報告(20%)は、特定のどのGM作物を使用されたが開示されてないので実験を追試することは不可能だった。35報告のうち11は、イタリアのUniversity of UrbinoのMalatestaグループとUniversity of Veronaの著作によるものだった。

 研究が数少ない研究室で行われ、あまりよく知られていない雑誌に掲載されたことが分かった。方法論上の瑕疵;例えば、実験で重要な内容を明らかにしなかったり、実際に測定した結果がなく、研究結果の結論は、無効なものであった。

 Plant Biotechnology Journal (2017) 15, pp. 1227?1234の当該論文は下記で読める。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pbi.12798/pdf

農業バイオの世界市場は2022年に395億米ドルへ

 世界の農業バイオ市場は、2015年から2022年にかけて年間10.1%の成長率を見込んでおり、2022年には395億米ドルに達する可能性がある。この内容はインドのHTF Market Intelligence Consulting社が発表した「農業バイオテクノロジー──2016-2022の予想」に収載されている。

 この報告は、北米、欧州、アジア・太平洋およびその他の世界の市場動向を分析した結果である。彼らはまた、業界の重要な担い手の動向も調査した。2016年から2022年の予測期間の成長見通しに焦点を当て、現在および将来の動向に関する洞察を提供することを目的としている。

 この報告書によると、農業バイオテクノロジー市場の成長は、アジア太平洋地域およびアフリカ地域における研究開発ならびに業界への資本流入および投資の増加によって促進されている。しかし、政府による厳しい規制や、バイオテクノロジー作物に対する抵抗は、市場の成長を遅らせる可能性があるとしている。

南・北アメリカ

第2世代Innateポテトをカナダ政府が認証

 カナダ保健省およびカナダ食品検査局(CFIA)は、米J.R. Simplot社が開発した第2世代のInnateポテトの食品、飼料および環境安全性評価を完了した。2016年にカナダで規制当局の承認を受けたInnate第一世代の3種類のジャガイモに続き、輸入、栽培、販売が可能となった。

 カナダ保健省は包括的な安全性評価を実施し、Innateの第2世代ジャガイモを食品に使用することを承認した。さらに、CFIAは、これらのジャガイモは家畜飼料用として、「これまでの非遺伝子組換え相当種のジャガイモと同等に安全で栄養価が高い」と決定し、またこのジャガイモは現在カナダで栽培されているジャガイモ品種と比較して環境へのリスクを増加させるものではないとした。

 第2世代のInnateポテトには、ジャガイモの栽培者、加工業者、消費者に関連する4つの有益な特徴がある。即ち疫病への抵抗性、打ち傷や黒斑の減少、アスパラギンの減少(調理後のアクリルアミドの減少に寄与)、還元糖の減少(より一層のアクリルアミドの減少と共に冷蔵保存能力を高めること)である。

 調査によると、カナダの全ての新鮮なジャガイモにInnate第2世代の形質があれば、ジャガイモの廃棄物(栽培地、貯蔵中や包装過程、小売り、食品サービスでの)は9300万kg削減できるという。CO2排出量を1400万kg削減でき、水使用量は130億リットル減少し、ヘクタール当たり15万4000gの農薬を削減できる。

ヨーロッパ

GM植物で魚油を大量生産

 ヨーロッパで最も古い油糧種子作物の1つであるカメリナ(Camelina sativa)について、遺伝子組換え(GM)作物の商業的栽培の可能性が研究によって示された。科学者らは、GMカメリナに海産物の脂質に類似した成分を生合成させ、種子中に大量に貯蔵させる可能性を確認するとともに、野外栽培でも再現できることを確認した。

 海洋微生物の遺伝子で遺伝子組換えされたGMカメリナは、オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFAs)、EPA(エイコサペンタエン酸)およびさらに長いDHA(ドコサヘキサエン酸)を生成できる。 EPAおよびDHAは、心臓血管疾患および代謝障害の世界的増加に対抗するために重要である。

 Nature誌に掲載された科学的結果は、2015年のGMカメリナの2年目の実地試験で、その前年度の結果がどのように確認されたかを示している。また、遺伝子組換え種子中の不要なオメガ6脂肪酸のレベルを、海産魚油のそれにさらに近づけるために研究チームがどのように削減できたかも示している。 Rothamsted研究所のカメリナプログラムリーダーであるJohnathan Napier氏は次のように述べている。「実際の条件下で当社のGMカメリナが働いていることを実証することで我々のアプローチは誤っていないことが裏付けられた」

3種の微量栄養成分を含む多重栄養付加イネ

 Navrich Bhullar氏と博士課程学生のSimrat Pal Singh氏が率いるZurich工科大学の研究者グループは、穀物中の微量栄養素の鉄と亜鉛のレベルを高めたばかりでなく、ビタミンA前駆体のβカロチンを生産する新しいイネ品種の遺伝子組換えに成功した。

 このグループの成功は、単一の遺伝子座としてイネゲノムに挿入できる微量栄養素の改善のための4つの遺伝子から成る遺伝子カセットの設計であった。これにより、微量栄養素とβカロチンのレベルを個々に異なる国のイネ品種と交雑させるのではなく、鉄、亜鉛、およびβカロチンのレベルを同時に増加させることができるようになった。

 新しい複数富栄養イネ系統はまだ温室で試験されており、その微量栄養素含量について分析されている。 Bhullar氏は来年、この新しい新品種が現場で試験されることを望んでいる。

遺伝子組換え作物以外の話題

日本人研究者が青色遺伝子組換えキクを作成

 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構植物生物学者野田尚信氏が率いる研究者らは、世界で初めて真の青いキクを遺伝子組換えで作成した。

 真の青い花は自然界ではまれで、アサガオやオオヒエンソウ(delphinium)のような限られた種にのみ現れる。真の青は複雑な化学反応を必要とする。花弁、茎、および果実の色素分子であるアントシアニンは、どの糖または他の原子団が結合しているかに応じて、花が赤、紫、または青に変わるような環状構造からなる。植物細胞内の状態も重要なので、オオヒエンソウのような青い花からアントシアニンを単に移植することでは実際には現れない。

 野田は、まず、青い花フウリンソウ(Canterbury bell)からキクに1つの遺伝子を挿入した。この遺伝子の蛋白質は、キクのアントシアニンを改変して、花が赤みを帯びたものの代わりに紫色に変えた。真の青色に近づけるために、野田氏と彼のチームは青い花のチョウマメ(butterfly pea)から2番目の遺伝子を加えた。この遺伝子の蛋白質は、アントシアニンに糖分子を付加する。研究チームは第3の遺伝子を追加する予定であったが、キクを真の青にするのに2つの遺伝子だけで十分だった。化学分析では、キクは既に無色成分を持っていてこれを修飾するとアントシアニンと相互作用して青色を形成できた。つまり青色はわずか2段階で可能であることが明らかになった。

世界で初めて遺伝子組換えサケがカナダの食卓に

 遺伝子組換え(GM)サケは、食品医薬品局(食品医薬品局)に最初の承認申請以来、25年以上たってようやく食卓に上ることになった。 その開発者である米AquaBounty Technologies社によると、2017年8月4日、カナダで約4.5tのGMサケを販売した。

 遺伝子組換えサケは大西洋サケの一種で、非遺伝子組換え相当種の約半分(18カ月)の期間で成魚になる。AquaBounty社の最高経営責任者(CEO)のRon Stotish氏によると、彼らは最初の市販品を1ポンド当たり5.30米ドル(kg当たり11.70米ドル)で販売した。Stotish氏は、「このサケは極めて生産管理が容易であり、持続的な供給が可能であることから、より大きな市場が見えている」「最初の販売は、極めて順調であり、我々を勇気付けるものであった」などと述べている。

文献備忘録


ISAAAがCRISPR/CAS9のポケットKシリーズを発行

 CRISPR/Cas9システムは、部位特異的ヌクレアーゼを使用して標的DNAを非常に正確に修飾する植物育種の革新技術である。University of California, Berkeleyの科学者らによって2012年に開発されたCRISPR/Cas9は、生物学的研究、農作物や動物の繁殖と育成、人間の健康への応用など、幅広い用途があるため近年注目を集めている。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)がリリースした最新のPocket Kシリーズで、CRISPR/Cas9システムの詳細を知ることができる。

 ポケットKシリーズ作物バイオテクノロジー製品および関連する問題に関する情報をパッケージ化したもの。 農業バイオテクノロジーに関するグローバルナレッジセンターによって開発され、重要な農業生物情報を分かりやすい形式で提供し、PDF形式でダウンロードして簡単に共有および配布することができる。

 ポケットKシリーズはISAAAのサイトでダウンロードできる。 http://www.isaaa.org/resources/publications/pocketk/default.asp
国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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