国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年8月】

(2018.09.13 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年7月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

HIVを中和無力化する遺伝子組換えイネを開発

 スペイン、米国、英国の国際研究者チームは、HIVを中和無力化する蛋白質を産生する遺伝子組換え(GM)株の作出に成功した。

 科学者は、HIV感染者の治療法を開発してきた。ウイルスに対するワクチンの製造には成功していないが、短期間に感染を防ぐことができる経口薬が開発されている。しかし、これらの薬は第3世界諸国では利用できていない。

 研究チームは、危険にさらされている人々を援助するために、HIVを中和無力化する抗体や糖蛋白質などを産生するイネの株を開発した。イネ種子を栽培すると、現地でその蛋白質を含む局所に使用するクリームを作ることができる。このクリームを皮膚に塗布して、蛋白質が体内に入るようにすることができる。

 GMイネは、HIVウイルスに直接結合する1種類の抗体と2種類の蛋白質を産生し、ウイルスがヒト細胞と相互作用するのを防ぐ。研究者は、イネが栽培された後、クリームを作るコストはかからないので、感染地域に住む人々は必要なだけイネを多く育て、ペーストを作ることができると指摘している。

詳細は、以下の学術誌に掲載されている。
http://www.pnas.org/content/115/33/E7854

GMコムギの必要性

 コムギは、世界の人口が要する1人当たりカロリーと1日当たり蛋白質の約20%を提供しているが、遺伝子組換え作物領域ではあまり研究されていない。 科学者は、この「放置状態」の問題をScience誌の記事で取り上げている。

 著者らは、伝統的な交雑および育種よりも、遺伝子組換えによるコムギの改良が短時間で行えるとし、また短時間での育種に加え、コムギの栽培用品種育種化の過程で失われた抵抗性や耐性遺伝子も回復できる可能性があるとした。GMコムギの必要性は、コムギ立ち枯れ病(コムギイモチ病)の壊滅的な影響によってその必要性がさらに叫ばれている。またこれは、イネの栽培にも悪影響を及ぼす可能性がある。

 GMコムギが開発されると、まず、(第一にアフリカとアジアの栄養失調と貧困の発生率が高い2つの最も人口の多い地域に恩恵を及ぼすことになる。
詳しくは、以下のサイトの論文に掲載されている。
http://science.sciencemag.org/content/361/6401/451

アフリカ

ナイジェリアが遺伝子組換えワタを登録

 アフリカで最も人口の多い国であるナイジェリアでは、遺伝子組換え品種であるBtワタ2品種(MRC 7377 BGIIおよびMRC 7361 BGII)の公式承認と登録を作物命名、登録、自主利用に関する全国委員会が行い、遺伝子組換え作物についての大きな進展を行った。この進展により承認を受けた業者が登録品種を増殖して、農業者に従来種子と同様に遺伝子組換え種子を供給できるようになる。ナイジェリアはまた、南アフリカ、スーダン、スワジランド、ケニア、マラウイ、エチオピアに続いてアフリカの7番目の遺伝子組換え作物の栽培国となった。最新の世界的な情報によると、遺伝子組換えワタの栽培面積は合計14カ国で2410万ヘクタールとなり、導入率は80%に達した。インドは、1140万ヘクタールの世界最大のワタ面積を有している。

 Oladosun Awoyemi委員長は、Ibadanでの公式発表で、GMワタの承認と登録が、他のGM技術の導入につながって、同国の農業開発に革命をもたらすに違いないと公式に述べた。両方の品種は、Mahyco Nigeria Private社がZaria にあるAhmadu Bello Universityの農業研究機構(IAR)と共同で開発されたものである。

 ナイジェリア国立バイオテクノロジー開発庁(NABDA)のAlex Akpa教授は、登録された品種は現地の従来品と比較して非常に有用であり、従来品種の600-900kg / haに対して4.1-4.4トン/ ha生産できると指摘した。また 「この発展により、ナイジェリアは農業分野で遺伝子工学を安全に展開するための制度的能力と人的資源を有していることを実証した」とAkpa教授は述べた。

 OFAB(アフリカ農業バイオテクノロジーオープンフォーラム)のコーディネーターであるDr. Rose Gidado氏は、「新しい品種を使用することで、農家は高品質の種子を入手し、50%以上の利益を上げ、繊維産業も改革される」と述べた。

 2016年に、NBMAは商業的栽培とBtワタの市場への上場を許可し、さらに様々の異なる地域での適合品種について選択試験が開始された。ナイジェリアでは、Maruca耐性Btササゲ、Bt / Htトウモロコシ、収穫後澱粉分解防止および窒素利用改造GMキャッサバ、水効率および耐塩性イネを含む様々な段階のGM作物が出てきている。

ナイジェリアの連邦最高裁判所は、BTワタの商業栽培を承認

 ナイジェリアの連邦高等裁判所(FHC)は、Btワタの商業栽培のためにナイジェリア国立バイオ安全性管理庁(NBMA)が発行した許可書に対して提起された訴訟を棄却した。擁護団体およびその他の市民団体16団体は、2017年9月に訴訟を提起し、2016年にMonsanto Agricultural Nigeria社にGMワタの商業栽培についての許可を取り消すよう裁判所に求めた。

 2018年8月15日に判決によるとA. R. Mohammed裁判官は、時効になっておりしかも法廷が審議する管轄権がなかったという理由で、事件を棄却した。裁判官は、この問題は原告が主張した基本的権利問題ではなく、訴訟の原因が発生してから1年以上経過したと主張した。この事件は、国の公務員法の規定に違反し、3か月以内にそのような措置が提起されることを要求しているものである。

 提訴人は、NBMA、国立バイオテクノロジー開発庁(NABDA)、連邦環境省、連邦司法省、Monsanto Agricultural Nigeria Limited、連邦農業省、および米国食品医薬品局(NAFDAC) を共同被告としている。

 NBMA理事長のRufus Ebegba博士は、「この勝利は、ナイジェリアでの現代のバイオテクノロジーの適切な規制のための試験であり、妥当である」と述べた。Ebegba博士は、「判決は、私たちの司法制度が希望の狼煙であることを証明している」と述べた。彼は、NBMAは、遺伝子組換え生物(LMO)の規制において公平な審議官であり、ナイジェリア人には、彼らの健康と環境の安全が絶えず当局の第1の責任であると確信していると述べた。

 2018年7月には、国の作物資材登録、登録、解放委員会が、2種のBtワタ品種(MRC 7377 BGIIおよびMRC 7361 BGII)を正式に承認し、登録した。 FHC判決はここに、農業者がバイオテク遺伝子組換えワタ種子を入手できるようになったことが設定されたことになる。

南北アメリカ

USDA-APHIS、新規遺伝子組換えワタ承認の公聴にむけた評価書公開

 米国農務省(USDA)の動物および植物健康検査サービス(USDA-APHIS)は、種子中のゴシポール(ワタが生合成する有毒の色素)を極低レベルになるよう遺伝子操作した遺伝子組換えワタ種子(TAM66274品種 )の環境アセスメント(dEA)および植物病害虫リスクアセスメント(dPRA)についての案を発表した。これらの文書は、遺伝子組換えワタ品種の規制緩和に向けての公開コメントを得るためのものである。

 ゴシポールは害虫や病害虫から植物を保護するワタにある天然色素である。パブリックコメントに出された遺伝子組換えワタは、種子を除いて植物体には保護レベルのゴシポールを含む。高濃度のゴシポールは潜在的に毒性があるので、食糧および飼料に使用されるワタの副産物である綿実粉は広くは使用されていない。従って、ゴシポールを超低レベルしか含まない遺伝子組換えワタが規制から外れると、綿実粉をより容易に使用できるようになる。

パブリックコメントの通知は連邦官報(Federal Register)に掲載されている。
https://www.regulations.gov/docket?D=APHIS-2017-0097

USDA、新しい複数遺伝子スタッキング技術を開発

 米国農務省(USDA)農業研究サービスの科学者は、複数の遺伝子を作物植物に挿入するために使用できる新しい方法を開発した。これにより、高度に強化された特性を持つ様々な作物の繁殖を容易にできる。新しい方法はThe Plant Journalに報告されている。

 GAANTRY遺伝子スタッキング技術と呼ばれる新しい方法は、高温や旱魃に対する抵抗性が改善され、より高い収量をもたらし、多くの病虫害に抵抗性のジャガイモ、イネ、柑橘類、および他の作物の新しい品種開発を早めることが期待されている。この方法には、重要な特性を発現するために必要な大きなDNAを「多重化」して安定化させることが含まれており、試行中に意図しないDNAが追加または除去されないように遺伝子を正確に望む位置に挿入できる。

 「予測可能な結果につながるような方法で、1つまたは2つの遺伝子だけでなく、複数の遺伝子を植物に挿入することができるため、以前は困難または不可能だった遺伝的改良をはるかに容易にすることができる。」と、ARSの分子生物学者であるRoger Thilmony氏は語る。 「この方法が出る前には、10個の遺伝子を組み立てて新しい系統に組み込むことは困難または不可能だったが、この技術は基本的に多重化遺伝子を安定化させ、結果をより安定して予測しやすくする」とThilmony氏は、付け加える。

詳細は以下のサイトに掲載されている。
https://content.govdelivery.com/accounts/USDAARS/bulletins/20406f7

アジア・太平洋

ニュージーランドで遺伝子組換え高代謝エネルギーのライグラスの試験実施

 ニュージーランドの農業企業であるAgResearch社によると、イネ科の牧草であるライグラスを遺伝的に改変した高代謝エネルギー(HME)ライグラスは、従来のライグラスよりも50%速く成長することができ、最適な動物成長のためにより多くのエネルギーを蓄え、旱魃に対してより抵抗性があり、家畜からのメタンの排出(ニュージーランドの温室効果ガス排出量に最大の寄与をする)が23%少なくなっている。

 この研究は、ニュージーランド政府と酪農団体であるDairyNZを含む業界パートナーの資金提供を受けている。このモデリング実験では、GMライグラスの導入は、ライグラスを食べる動物が環境に排出する窒素の量を減らし、硝酸塩の浸出を少なくし、もう1つの温室効果ガスである亜酸化窒素の排出を減らすことができると予測している。

 2017年に2カ月間の初期成長試験が行われ、GM作物の成長条件が適切であることが確認された。 5カ月の完全に成長する試験が現在進行中である。これらの試験が成功すれば、研究者は2年後に実施される動物飼料試験を申請する。

APECがバイオテクノロジーと植物の繁殖の革新に関する規制方針公表

 アジア太平洋経済協力(APEC)の農業とバイオテクノロジーに関する高級レベルでの政策対話ワークショップが2018年8月1日から3日にオーストラリアのブリスベンで締結された。16 のAPEC加盟国とAPEC以外の3カ国からの規制当局者と政策担当者は、 APECメンバー間の関係を構築しながら、革新的技術に影響を与える最も重大な問題に関する最新の情報交換を行った。

 プログラムの最初の部分は、専門家と経済関係者が、APEC参加国がAPEC参加国の基準と関連する国際基準とのより一層の整合を促進するために使用できるベスト実践策またはツールを特定した規制協力に関する議論に費やした。 2回目のワークショップでは、ゲノム編集などの新しいツールや科学と製品開発の状態の概要など、植物育種のイノベーションに関する2日間のディスカッションが行われた。選ばれた経済関係者が現在進展中の革新的な植物育種ならびに政策および規制面に関する国内の議論を共有するために招かれた。

 さらに、参加者が世界中の人々の意識を高められるよう、バイオテクノロジーと植物育種の革新から生まれる製品に関する広報活動と一般市民のそれらの受容性に関するセッションが行われた。

 このワークショップは、米国農務省、対外農業サービス庁(FAS,Foreign Agricultural Service)および地域統合を進めるための米国・APECの技術援助からの資金提供を受けて行われた。

アジアの食品安全協会が食品安全保障のための戦略を立案

 アジア食品安全協会(AFSA)が主催する第4回食品安全・食糧安全国際会議では、食糧確保のための様々な戦略が強調された。 2016〜2030年の国連持続可能な開発目標の達成に貢献することを目標として、18カ国が農業研究開発の慣習的方法から現代的方法について議論した。この会議で現代バイオテクノロジーが取り組まれたのは初めてのことである。

 ISAAAグローバル知識センター(Crop Biotechnology)のRhodora R. Aldemita博士は、遺伝子組換え/GM作物の商業栽培の現況:2018(ISAAAブリーフ53)のハイライトを発表した 。ISAAAブリーフ53のコピーが参加者に配布された。開かれたフォーラムで提起された食糧および環境安全に関する様々な問題が取り上げられました。同時に行われた食糧安全保障の部では、大部分が従来農業に当てられていたが、次回には参加者は、現代農業と新しい育種の革新についての情報が得られるように改善されることになろう。

 カンボジアのSiem Reapで8月9日から12日にかけて開催された会議は、アジア太平洋食品専門家協会(AFSA)の主催で、カンボジア王立大学、Mekong Institute Thailandの協力を得て、さらにAsia Pacific Institute of Food Professionals、国際微生物学会連合(IUMS),USAID-Horticulture Innovation Labの支援を得て行われた。これには国内外の専門家、起業家、科学技術者、政策立案者、一般市民が参加した。

ヨーロッパ

欧州委員会が5種の遺伝子組換え作物を承認

 欧州委員会は、5種類の遺伝子組換え作物を食糧および飼料として承認した。 これらは、トウモロコシ(MON 87427 x MON 89034 x NK603および1507 x 59122 x MON 810 x NK603)の2つの新しい品種を含み、トウモロコシ(2種)および甜菜(DAS-59122-7、GA21およびH7 -1)を承認した。

 委員会によると、認可されたGM作物のそれぞれは、GM作物の安全性について好意的な意見を出した欧州食品安全局(EFSA)によって評価された。 認可は10年間有効であり、「遺伝子組換え品」または「遺伝子組換え作物から製造された」と表示された製品の適切な表示を含む、EUの厳格な表示およびトレーサビリティの規則の対象である。しかし、製品のGM成分が0.9%未満である場合、またはGMの添加が意図せざるものであるか技術的に不可避である場合、そのような表示は必要ない。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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