国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2016年8月】

(2016.09.08 08:05)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年8月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

科学誌Scientific AmericanがWORLDVIEW2016を出版

 米科学誌Scientific Americanが例年発行しているWORLDVIEW(世界のバイオテクノロジーの展望)の2016年版が出版された。この中で、バイオテクノロジーの関与と革新について国別のランキングを作成しているが、2009年に開始して以来、米国がトップにある。特に、生産性と教育/労働力の分野で断トツの1位である。第2位はシンガポールで、デンマーク、ニュージーランド、オーストラリアと続く。

 特定の分野では他の国も顔を出す。例えばデンマークはその強さで1位、香港は企業支援で3位。サウジアラビアは教育/労働力で12位の座にあるが、これは海外で博士課程を得た者の帰国が多く、「頭脳流出が低い」ことによるものである。

Purdue大、遺伝子組換え生物禁止の経済的・環境的影響を評価

 米Purdue大学の研究者らは、2つの相反する事実を基にシナリオをモデル化し、それぞれ別々のものと組み合わせて評価することにより、遺伝子組換え(GM)作物がもたらす世界的な経済的効果と温室効果ガス(GHG)排出量への影響を調べた。第1シナリオは、GM生物が世界的に禁止された場合の影響を調査した。第2シナリオは、GM生物の浸透が物価、福祉と、GM技術に伴う温室効果ガスの排出量にどう影響するかに焦点を当てた検討を行った。

 結果は、食品価格は地域によるが、0.27から2.2%に増加する可能性があることが示された。 GM技術の禁止に関連する総福祉損失は9.75億米ドルになる。重要なバイオテクノロジー形質の損失の経済的影響に加えて、環境への影響も出ている。この研究では、完全な環境分析研究に行われなかったが、GMO形質を使わないことによる土地利用の変化と温室効果ガス排出量の損失の可能性について分析した。GMO技術が禁止で温室効果ガス排出量の大幅な増加が発生することを予見した。

南北アメリカ

米国農業生産者の遺伝子組換え作物導入状況を米農務省が調査

 米国農務省(USDA ERS)の経済調査サービスの最新の報告によると、消費者の受容性に不確実性があるものの、米国の農業生産者は1996年の商業的栽培導入以後、遺伝子組換え(GE)作物を広く導入している。ダイズ、ワタが最も広く導入されており、これに続くのはトウモロコシである。

 GE大豆の導入は、2016年には米国の総ダイズの94%に達した(ダイズは、除草剤耐性[HT]品種のみである)。HTと害虫耐性/Btの単独または両方の作付面積を含む全てのGEワタの導入は、2016年で93%である。GEトウモロコシは、2016年にトウモロコシの作付面積の92%を占めた。

 米国は、他のどの国よりも多くのGE作物を栽培し、2016年には世界の総耕作地(1.797億ヘクタール)の40%を占めた。

オバマ大統領がGM食品表示法案に署名

 米国のBarack Obama大統領は、遺伝子組換え(GM)食品表示法案に署名し、法律とした。法案は表示義務の法律の発効を防止し、食品メーカーはGM食品のための3つの異なるラベルのいずれかを使用することを必要とするとして、上院議員Pat Robertsと Debbie Stabenow氏によって起草された。3つの表示法とは、(1)米国農務省(USDA)のGMOの存在を示すラベル、 (2)平易な言葉を使ったラベル、または(3)詳細成分にリンクしたスキャンコードである。

 USDAは、法律の実施に必要なガイドラインを作るワーキンググループを結成した。新しい法律はまた、2016年7月1日に発効したバーモント州のGMOラベリング法を無効にすることになる。

遺伝子組換えフジリンゴArcticの米規制当局による承認が間近に

 米国農務省(USDA)動植物衛生検査サービス局(APHIS)は、Okanagan Specialty Fruits社の褐変の起こらない遺伝子組換えフジリンゴ「Arctic」の最終申請(OSF)に関して、規制当局の承認を求めていることを発表した。他の品種についてAPHISは以前に検討し、規制緩和を行っている。

 2016年8月10日の発表では、USDA APHISはOSF社の褐変の起こらないフジリンゴArcticにも非規制状態を当てはめるという予備的な決定に達していると述べた。 OSF社の嘆願書を公開することに加えて、APHISはまた、有意な影響の予備的な知見、および予備的な規制決定と植物病害虫リスク評価に影響を与えるものではないとしている。

 APHIS公的なサイトでは2016年9月12日まで、 文書は2016年8月12日から、30日間のパブリックレビューとコメントのために公開されている。

ヨーロッパ

EU、3種の遺伝子組換え作物ダイズの輸入を承認

 欧州委員会は、3種の遺伝子組換え作物ダイズの輸入を承認した。遺伝子組換え作物ダイズMON87708 X MON 89788で、MON 87705 x MON 89788、およびFG72は、昨年の欧州食品安全機関(EFSA)から、良好な科学的意見を受けた。またこれらの品種はまた、欧州連合(EU)の28加盟国から「ノー意見」票を受けた。承認は、10年間有効である。欧州委員会の声明によると、承認された遺伝子組換え品種は、EUの厳しい表示法とトレーサビリティ法の対象となる。

研究

国際ポテトセンター、ジャガイモ葉巻ウイルス耐性ジャガイモを開発

 ジャガイモ葉巻ウイルス(PLRV)は、世界的に深刻な経済的収率損失を引き起こすジャガイモの最も一般的な病原体の1つである。生産者は、認定された種子を使用し、殺虫剤を適用することにより、PLRVを制御している。しかし、この手法は高価であり、このよう殺虫剤は、小規模農家には、常用可能でない。そこで国際ポテトセンター(CIP)の科学者は、PLRVに強い抵抗性のマーカーフリーの遺伝子組換え(トランスジェニック)ジャガイモ品種を開発した。

 研究者らは、構成的プロモーターの制御下にPLRVコートタンパク質遺伝子の一部に対応する逆方向反復構築物を作成した。その後、彼らは、nptII抗生物質耐性マーカー遺伝子を切断するためのCre-loxPシステムを用いた形質転換ベクターをもちいて形質転換した。その結果、58の遺伝子組換え(トランスジェニック)ジャガイモ得て、その中で高い耐性を示す7品種を得た。 7品種のうち、4つの品種は、以前の研究で報告されていない非常に高い耐性を示した。さらなる分析の結果、サイレンシングRNAの蓄積とPLRVに対する抵抗性のレベルに相関性のあることが分かった。

新育種法(NBT)

スイスアカデミー、新育種法(NBT)には厳しい規制が不必要との声明

 「新育種法(NBT):スイスの農業に大きな潜在的可能性と予測できないような未来 をもたらす」とした新しいファクトシートを公表した。スイスのアカデミーによると、新植物育種技術によって品種改良された植物に厳しい規制をかける理由はないとした。この結論は、他の科学アカデミーの声明と同様である。

 ファクトシートによると、新育種法(NBT)を介して行われたものは、自然におこることと同じであり、外来遺伝物質は、植物中に残っていない。したがって、新育種法(NBT)は、より環境に優しく、経済的に実行可能で、しかもスイスの農業のより持続可能性を提供するものであるとしている。新育種法(NBT)によるさまざまの製品が今後数年間にだされることが期待される。

CRISPRを用いてキュウリで広いウイルス耐性の品種を開発

 植物におけるゲノム編集がCRISPR / Cas9技術の発展に伴い進んでいる。 Jeyabharathy Chandrasekaran氏は、イスラエルのVolcaniセンターの研究者とともに、劣性eIF4E遺伝子の機能を破壊Cas9 /サブゲノムRNA(sgRNA)技術を使用してキュウリ(Cucumis sativus L.)のウイルス抵抗性の開発を発表した。

 Cas9 / sgRNA構築物をeIF4E遺伝子のN 'とC'末端を標的とするように設計した。小さな欠失および1塩基多型(SNP)が形質転換されたT1のキュウリのeIF4E遺伝子の標的部位で観察された。非形質転換(トランスジェニック)ヘテロ接合性のeIF4E突然変異植物を非非形質転換(トランスジェニック)ホモ接合性T3世代植物の生産のために選択した。

 両方のeIF4Eサイトを標的としたCas9 / sgRNAに続いて、ホモ接合性T3は、キュウリ葉脈黄変ウイルス(Ipomovirus)感染、ポティウイルスズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZMV)耐性に抵抗性を示した。対照的に、ヘテロ接合変異型および非変異植物は、これらのウイルスに対して非常に感受性だった。

 この研究は、ウイルス抵抗性がCRISPR / Cas9技術により、キュウリに非形質転換(トランスジェニック)的に開発された初めてのことである。このアプローチは、その他の作物にも適用できる。

作物バイオテクノロジー以外

遺伝子組換え(GE)蚊がCAYMAN諸島とフロリダで疾患を制御

 CAYMAN諸島政府は、遺伝子操作された蚊を放出することによって蚊媒介性疾患から住民を保護するための努力を強化した。

 活動は、ケイマン諸島モスキート研究とコントロールユニット(MRCU)とOxitec社により蚊のホットスポットであるWest Bayで始まった。Friendlyヤブカとして知られている遺伝子組換え(GE)の蚊はOxitec社によって開発された。この蚊はデング熱、ジカ、チクングニヤ、および黄熱病の拡散を防止するために、幼虫の段階で若い昆虫を殺す遺伝子を持っている。遺伝子組換え( GM)オスの蚊は、野生のメスの蚊と交尾し、成虫なる前に死亡する幼虫ができる。

 米国では、食品医薬品局(FDA)は、Florida KeysでのOxitec社の自己制限OX513A蚊での治験研究では有意な影響(FONSI)も最終的環境アセスメント(EA)の最終的なになかったと発表した。調査結果によると、Key Haven、フロリダでの中のE蚊のフィールドトライアルでは、環境に重大な影響をもたらすことはなかった。

文献備忘録

国ごとの遺伝子組換え作物の状況と傾向

 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、国ごとの遺伝子組換え作物の状況と傾向シリーズの改訂版を発行した。シリーズの最初のセットは、トップ5発展途上国、ブラジル、アルゼンチン、インド、中国、パラグアに関するものである。「国ごとの遺伝子組換え作物の状況と傾向」には、それぞれの国における遺伝子組換え作物の商業化についての簡潔な要約が書かれている。

 遺伝子組換え作物の商業化(ヘクタール数と導入状況)、承認および栽培、利点と各国の将来の見通しに関するデータが簡潔で分かりやすく提示されている。内容はISAAAの創始者・名誉理事長Clive James氏が執筆したISAAAブリーフ51、遺伝子組換え作物商業化20周年(2015から1996)と2015年の遺伝子組換え作物に関するハイライトに基づいている。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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