国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年7月】

(2017.08.10 00:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年7月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

FAOによると飢餓人口が再び増加している

 国連食糧農業機関(FAO)のJose Graziano da Silva事務局長によると、2015年以降、飢餓人口が増え続けている。飢餓人口の約60%は、紛争や気候変動に直面している国に位置している。 FAOは、洪水や干ばつなどの極端な気象状況に直面している長期の危機状況にある19カ国を特定した。ナイジェリア北東、ソマリア、南スーダン、イエメンでは2000万人の人々が重度の飢餓を経験しており、飢饉の危険性が高い。

 「飢えを根絶するための強力な政治的コミットメントは基本的なことであるが、それだけでは不十分だ」とFAO事務局長は述べた。 「国がそのコミットメントを特に、地方レベルで行動に移せば飢餓を無くせる。もちろん、平和はこれらの危機を終わらせる鍵であるが、我々は平和が来るのを待つことはできない。非常に重要なことはこの地域の人々が自分の食糧の生産を続けられる条件を整えることである。これらの損害を受けている地域の人々特に特に若者や女性を置き去りにはできない。」と付け加えた。

アフリカ

アフリカでのビタミンA欠乏を無くするためにゴールデンバナナを開発

 オーストラリアのQueensland工科大学 (QUT)の研究者は、ビタミンA欠乏の危機にさらされているアフリカの多くの命を救うために、ビタミンAが豊富な遺伝子組換えバナナを開発した。

 主任研究者のJames Dale教授によると、バナナのビタミンA濃度を目標の4倍まで上昇させた。 彼らは、最初にオーストラリアQueensland州のCavendishバナナに遺伝的改変を施し、その後、国立農業研究機関の研究者と協力して、高地または東アフリカの様々な料理用バナナで実験した。研究者たちは、世代を経るにつれて生産されるプロビタミンAの量が減少する可能性を懸念していたが、驚くべきことに5世代後も減少はなかった。

 ビタミンAが豊富なバナナがウガンダで入手できるようになるには、規制試験のためにさらに6年もかかる。

アフリカの飢餓を改善するためにウイルス抵抗性キャッサバを開発

 アフリカの食糧危機に対処するのに役立つ改良されたキャッサバの品種が、アフリカ大陸ですぐに利用可能になると期待される。

 ケニア農業畜産研究機関(KALRO)の科学者は、栄養的に改善され、キャッサバモザイクおよびキャッサバブラウンストリーク病に耐性のある遺伝子改変ウイルス抵抗性キャッサバであるアフリカプラス(VIRCA Plus)品種を開発中である。 KALROの研究者であるSimon Gichuki氏は、この2つの病気が、東アフリカだけで約1億8000万ドルの年間経済損失をもたらしていると報告している。 KALROは、ウガンダ、ナイジェリア、Donald Danforth Science Center、ISAAAなどの様々な研究機関の専門家と協力している。

 現在、VIRCA Plusの品種は隔離圃場試験中である。 KALROの研究員であるCharles Wuturu氏は、研究資金の不足およびケニアが他国を踏襲して規制当局がキャッサバ技術開発に圧力を与えていると強調した。 ISAAA AfriCentreディレクター、Margaret Karembu博士によると、各省庁は農業技術に様々な認識を持っているので研究資金が損われないように政策の調和を行うべきとしている。

南北アメリカ

米国における遺伝子組換え作物の導入状況

 米国農務省経済調査サービス(USDA ERS)は、米国でのGM作物の導入に関する最新の報告を発表した。この報告書は、除草剤耐性(HT)および害虫耐性(IR) 作物の導入状況のまとめである。 HTおよびIR品種の採用導入率の増加の一方、スタック(多重)品種の導入が、近年、より一層加速している。

 HTダイズの導入は、2017年に米国の総ダイズの94%に達した。全ての遺伝子組換えワタ(IR、HT、スタック)の導入は69%に達し、遺伝子組換えトウモロコシは2017年に総作付けトウモロコシの92%を占めた。

 米国は2016年の世界最大の遺伝子組換え作物生産国であり、2016年には世界全体の1億8510万ヘクタールの約40%に及ぶ7290万ヘクタールの栽培を行った。

映画「進化する食品」で遺伝子組換え食品再論議

 遺伝子組換え(GM)食料作物に関する新しい映画が、ニューヨークとロサンゼルスで封切りされた

 「進化する食品」と題する映画は、映画監督のScott Hamilton Kennedy氏(アカデミー賞候補)とTrace Sheehan氏の独自考察の産物である。彼らは当初、食品システムに関する事実に基づいた公開対話を収録するドキュメンタリーを作るとして、食品技術者協会(IFT)に接触してきた。しかし、この映画製作者らが検討を行い、撮影を始めたときには、彼らはGMOに関する一貫して分極化した議論に興味をそそられていた。当初、IFTは焦点の変更に躊躇していたが、映画制作者が話題を全体的に捉えることの重要性を示したので合意した

 「GMOは食糧と食品システムに関するほとんど全ての問題についての隠喩(メタファー)であり、そのメタファーにメリットや科学的真理があるかどうかを探求したいと思っていた。恐らく、GMOの議論をよく理解すれば、話題にかかわらず、科学技術に関する一般的な情報に基づいた意思決定を行える」と映画製作者は述べた。

 この映画は、ハワイ、ウガンダ、およびその他の国の政治と野外栽培状況に焦点を当てた。科学者を含むGM食品の主要な人物、Alison Van Eenennaam氏、Dennis Gonsalves氏、 Pamela Ronald氏 と Leena Tripathi博士、そして元反遺伝子組換え活動家・作家のMark Lynas氏も含まれている。

 University of Florida教授であるKevin Folta博士は、Huffington Postに出したこの映画の評論で、以下のように述べている。「私は何度もこの映画を見たが、その度に涙を枯らした。科学者として、遺伝子組換えが人々の生活を変え、地球を助ける安全で効果的な素晴らしい解決策であるにもかかわらず、資金力があり、巧みに仕組まれた誤った情報と恐怖のキャンペーンによってその使用が制限されていることを思い起こすからである」

アジア・太平洋

中国がコーンルートワーム耐性トウモロコシを輸入承認

 中国農業省はSyngenta社のAgrisureDuracadeの輸入承認した。 この承認は、食品および乾燥蒸留副生物(DDG)を含む食品及び飼料用を対象としている。

 Agrisure Duracade品種は、FDA(食品医薬品局)との打ち合わせを完了し、環境保護庁から登録を受け、2013年以来USDAによって完全に規制緩和されている。

 Syngenta CEOのErik Fyrwald氏は、「この認可を取得することで、トウモロコシの種子選択に新しい機会が生まれる。」と語った。

オーストラリアが遺伝子組換えコムギとオオムギの隔離圃場試験を承認

 オーストラリアの遺伝子技術規制局(OGTR)は、非生物学的ストレス耐性と収量増強のための遺伝子組換えコムギとオオムギの隔離圃場試験の承認をUniversity of Adelaideに出した。

 隔離圃場試験(申請承認DIR 152)は、2017年7月から2021年1月まで南オーストラリア州、西オーストラリア州およびニューサウスウェールズ州の全ての畑地内で全栽培シーズンに最大3.75ha、最大5つの場所で実施することが認められている。ここで、野外でのコムギとオオムギの農業特性を評価する。ここで収穫される遺伝子組換えコムギおよびオオムギは、商業的なヒトの食物または動物飼料には使用されない。

 最終的なリスク評価およびリスク管理計画(RARMP)は、この隔離圃場での試験でヒトおよび環境への影響が無視できること、および特定のリスク処理手段を必要としないことが分かってからになる。

中国の科学者たちは、新遺伝子多重化法で紫色イネを開発

 中国の研究者は、多くの遺伝子を一度に移送できる遺伝子工学的アプローチを開発し、それを用いてイネ胚乳に高レベルのアントシアニンを生産するようにした。得られた紫色の胚乳米は、特定の癌、心臓血管疾患、糖尿病および他の慢性疾患のリスクを低下させる可能性がある。

 中国の複数の大学や研究機関からなる研究チームは、植物の形質転換のために、単一のベクターに多数の遺伝子を積み重ねて移送することを可能にした「TransGene Stacking II」と呼ばれる非常に効率的で使いやすい多重化遺伝子移動システムを開発した。この遺伝学的工学手法を用いて、これまでに、ベータカロチンおよび葉酸を多量に含むイネが開発されてきたが、アントシアニンの多量イネは開発できていなかった。イネにおけるアントシアニン産生を操作するこれまでの試みは、その基になる生合成経路が複雑なために失敗していた。

 アントシアニン生産のための遺伝子を同定した後、 TransGene Stacking IIを用いて、ジャポニカおよびインディカ品種の胚乳内に8つのアントシアニン生合成遺伝子を形質転換した。得られた紫色の胚乳米は、胚乳において高いアントシアニンレベルになり、抗酸化活性を有していた。

 開発されたシステムは、多重化遺伝子導入の汎用ツールキットとなる。このツールキットは、合成生物学に向けての大きな可能性を秘めている。

ヨーロッパ

英国の研究者が鉄高含有コムギを開発

 John Innes Centre(JIC)の研究者は、鉄分のレベルが高い様々なコムギを開発した。 この新しい鉄高含有品種は、世界中の鉄分欠乏症の人の数を減らすのに役立つ。

 コムギは、小麦粉として製造される前に除去される部分に鉄が含まれている。公表されたコムギゲノムの使用によるとJames Connorton博士らは鉄輸送に関与する2つの遺伝子を発見し、遺伝子のうちの1つが多くの鉄を胚乳に移動させるので、現在の商業品種の2倍の鉄の量を生産する品種の開発に至った。

 「この画期的なことにより世界中の鉄分欠乏症に苦しんでいる10億人の人々を助けることになる。つまり、コムギ自体からの高いレベルの鉄分を接種できるので、小麦粉や朝食用シリアルなどの日常品に添加されている鉄を置き換えることができる」と 研究者の1人であるJanneke Balk博士は語った。

文献備忘録

期待を超えるもの:2016年の遺伝子組換え作物の事実

 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、遺伝子組換小冊子シリーズNo. 6 「期待を超えるもの:2016年の遺伝子組換え作物の事実」を発刊した。これは1996年から2016年にかけての遺伝子組換え作物に関する10の重要なハイライトをヴィジュアルに表したもので、その出典は、「ISAAA 概要52 「遺伝子組換え/GM作物の世界動向:2016」である。

 この小冊子および概要52に由来する出版は、このサイトでダウンロードできる。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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