国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年7月】

(2018.08.09 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年7月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

遺伝子組換え作物の栽培面積が史上最高を記録

 国際アグリバイオ事業団は、2018年6月26日にマニラのAcacia Hotelで報道関係者に向けて、2017年度(ISAAA Brief53)商業化バイオテク/遺伝子組換え(GM)作物の世界的状況に関する年次発表を行った。この年次報告書は、GM作物の導入と利益に関する最新情報を文書化したISAAAシリーズの世界的状況報告書の22番目のものである。 SEARCA(農学分野における大学院教育および研究のための東南アジア地域センター)バイオテクノロジー情報センター(SEARCA BIC)によって共同開催されたこの企画は、報道関係者が科学者および専門家、中央政府の代表者、バイオテクノロジーコミュニティのパートナーとつながる機会を提供した。

 ISAAA理事長のPaul Teng博士は、GM作物がもたらす世界的な影響、経済的利益、将来の見通しなどの報告を発表した。同氏は、2017年にはGM作物栽培面積が世界で189.8百万ヘクタールと過去最高を記録したことを報告した。また、開発途上国のGM作物栽培面積は、100.6百万ヘクタールで、先進工業国の89.2百万ヘクタールを超えた。

 Teng博士は、「GM作物地域は今後、世界的に拡大することが予想され、世界各地の新しいGM作物や形質が開発計画に入っている」と付け加えた。Teng博士は規制の重要性を強調し、「科学に基づく規制は非常に重要であり、科学を使うことができなければ、立つべき根拠はない。何が信頼できるものであるのかを示すツールとして、科学だけが私たちが今のところ持っているものだ」と述べている。彼はまた、「過去21年間(1996年から2016年)の、GM作物による世界の農業所得の増加は1800万ドルに達し、そのうち約95%が途上国から上がったもので、1700万人以上の農業者に利益をもたらした」と話した。

南北アメリカ

アイオワ州の農業者が遺伝子組換え作物の本当の姿を書き上げた

 Michelle Miller氏は、Farm Babe(農場のかわい子ちゃん)と呼ばれているアイオワ州の農業者であり、演説家であり、作家でもある。彼女は農業者の立場から、遺伝子組換え(GM)トウモロコシやGMダイズなどのGMOの本当の姿を語った。Farm Babeは、「90%から95%の農業者は、GM作物を栽培することを選んでいるがそれには正当な理由がある」と強調している。

 Farm Babeによると、農家はGMOを栽培することを強いられているわけではない。「農業者がGMOを栽培するのは自ら望んでのことであり、その理由は、それが我々、皆さん、そして地球環境のためになるからである。殺虫剤の使用を85%減らし、全体の農薬の使用を37%減らし、しかも収量が21%上がるからである。もしもより少ない面積で、しかもより少ない資源、農薬、燃料などの投入で収量を上げられる、農業者がそれに飛びつくのは当然である。農業者に良い仕事をさせて下さい」と、Farm Babeは話している。彼女はまた、「GMOは植物育種の中で最も規制され、試験された製品であり、世界中のほぼすべての主要な食品安全機関によって安全であることが証明されている」と強調した。「GMOにはリスクがあるとしているのは査読のない報告で、査読があるものでは安全性の証拠を出している」とも述べている。

アジア・太平洋

ゴールデンライスの圃場試験についての一般公開協議を開始

 国際イネ研究所(IRRI)は、フィリピン農業省植物産業局(DA-BPI)が遺伝子組み換え(GM)ゴールデンライスGR2Eの圃場試験申請に対して、一般公開協議の実施を承認したと発表した。βカロチンを生産するGR2ゴールデンライスの形質を持つ高収量の近交系地方品種の開発は、フィリピンイネ研究所(PhilRice)およびIRRIによって進められている。

 一般公開協議の行程は、2016年の省庁合同合意書No.1の下でのバイオ安全性規制の承認における鍵となる重要な要素である。一般公開協議の方法は、誰もが参加できる一般情報公開文書を全国に配布し、一般大衆が学ぶための30日間の期間を置いて意見聴取する。この過程を経ることで、重要なバイオ安全性に関する意思決定にあらゆる分野の人々が責任をもって参加する機会が得られる。

 一般公開協議はフィリピンのMuñoz、Nueva Ecija州では2018年7月18日に、San Mateo、Isabela州では2018年7月20日にPhilRiceとIRRIの科学者と政府規制当局によって行われる。

北京で遺伝子組換え作物の商業栽培の重要性について専門家が議論

 中国バイオテクノロジー学会、中国植物生理学および分子生物学学会、中国作物学会、中国植物防疫学会、中国農業バイオテクノロジー学会とISAAAの共催により、2018年7月11日、中国北京の中国農学アカデミーにおいて政府、大学、研究機関、地元及び国際企業と13の伝統的なメディア及びオンラインメディアから150人以上の参加者を得て、「作物の生物学的手法による育種の産業化セミナー」が開催された。

 中国科学アカデミーの遺伝・進化生物学研究所のZhu Zhen教授と、中国バイオテクノロジー情報センター(ChinaBIC)のZhang Chunyi教授がこの会議の進行を行った。中国科学アカデミー会員・北京大学の前学長のXu Zhihong教授が議長を務め、セミナーでも講演を行った。彼は、中国における農業バイオテクノロジー教育の重要性を強調し、GM作物に関する誤った認識を批判した。

 ISAAAの理事長であるのPaul Teng博士は、2017年度遺伝子組換え/ GM作物の世界の栽培状況を発表した。Rhodora Aldemita博士は、「アジア・太平洋における遺伝子組換え/ GM作物の導入状況」を総括した。中国科学アカデミー会員・South China Agricultural UniversityのLiu Yaoguang教授は、「植物ゲノム編集技術とその遺伝子機能研究と遺伝的改変への応用」と題する発表を行った。農業省農業省科学技術部のGMO安全知的財産権担当副局長であるHe Xiaoda女史は、「中国における農業バイオテクノロジーの安全規制枠組み」について説明した。

ヨーロッパ

ノーベル賞受賞者が「遺伝子組換え作物は飢餓に対抗するために必須」と表明

ノーベル賞受賞者のSir Richard J. Roberts氏は、2018年6月24日から29日に開催された第68回Lindauノーベル賞受賞者会議で、遺伝子組換え生物(GMOs)の利点を強調し、これで世界中の途上国に栄養価の高い食品ができると述べた。

GMOを支持する133人のノーベル賞受賞者のキャンペーンである「精密農業(遺伝子組換え作物)を支持するノーベル賞受賞者の声明」を主導しているRoberts氏は、会場に溢れた人々に呼び掛けた。「世界には8億人の飢えた人々がいる、彼らには、食べ物は薬のようだ」と述べた。実際、彼は今日の作物や野菜を見てきて「今日食べているものは、元の植物に比べるといずれも既に遺伝子が組み換えられているものである」とものべた。

ノーベル賞受賞者はまた、GMOが受けた反発の重大な結果についても議論した。ゴールデンライスを例にとって、彼はGMOを支える科学を意図的に無視することは愚かで危険であると述べた。ビタミンAが欠乏しているために、何百万人もの子供が死亡したか、発達障害を抱えている。ゴールデンライスはこれを逆転させることができるが、GMOであるためグリーンパーティーの標的となっている。彼はまた、これが人道に対する罪であるとみなされるには、さらにどれだけ多くの子供たちが死亡しなければならないのかと疑問を投げかけた。

その他

「農業におけるゲノム編集─方法、応用とその規制」の論文発表

 米国の非営利団体である農業科学技術会議(CAST)は、「農業におけるゲノム編集:方法、応用、および規制」という論文を発表した。 CASTは、ゲノムの編集は、遺伝物質の前例のない制御を可能にする強力な新しい方法であり、農業の実践に大きな影響を与える急速な進歩をもたらすものであると説明している。論文では、以下のトピックスを紹介し、概念を説明している。

•ゲノムの編集がどのように行われるか
•どのようなタイプの編集が可能か
•プロセスが伝統的な繁殖や他の遺伝子改変手段とどのように関係しているか
•このアプローチではどのような潜在的な制限が発生する可能性があるか
•現在のどの要因が遺伝子編集の管理に影響を与えるか

 ゲノム編集についてはまだ多くのことが解明されていないが、作物や畜産の改良のためのゲノム編集の利用においては、科学に裏付けられ、価値のある注意深い規制の恩恵を受けることにより、革新と透明性の両方が促進されることになる。この新しい論文は、規制当局、政策立案者、民間および公的な研究機関、業界および一般の人々に、概念的かつ知識ベースの基盤を提供することを目的に作成された。

ISAAA、RANDY A. HAUTEA祈念飢饉を設立

 ISAAAのグローバルコーディネーターでSEAsiaCenter の長であったRandy Hautea博士は、ISAAAの任務を果たすために20年以上の人生を捧げ、世界の覚知に科学知識を共有し普及させ、貧困と飢餓の軽減に貢献するとともに、途上国への技術移転を促進した。 彼の突然の他界は、世界のバイオテクノロジー共同体の中に大きな埋めがたい空白を残した。 しかし、ISAAAの社会における役割を果たすための彼の努力は無駄にならないはずである。 ISAAAは、この任務を続けるために、研究、知識共有、技術移転プロジェクトなどのさまざまなバイオテクノロジーイニシアチブの支援を集めることを目的としたRandy A. Hautea Memorial Fundを立ち上げることとした。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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