国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年6月】

(2017.07.13 12:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年4月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

GM 作物の長期使用が経済的・環境的有用性を示すとの報告書

 農業に関するコンサルティングサービスなどを提供している英PG Economics社が2017年6月に発表した最新報告書によると、遺伝子組換え作物の20年間にわたる使用が、農業の環境への影響を大幅に減少させ、経済成長を促進したとのことだ。同社のGraham Brookes氏とPeter Barfoot氏が執筆した査読付き報告書「GM作物:1996年から2015年にかけての地球規模の社会経済的および環境的影響」がそれで、地球の自然資源を保護し、農業者がより生産性が高くしかも質の高い作物を生産することに遺伝子組換え作物が貢献していることを示している。

 この報告書は、作物バイオテクノロジーには以下のような利点があるとしている。

•HT(除草剤耐性)作物を使用することと不耕起法で農業に由来する温室効果ガス排出を減少させた。その減少は、道路から119万台の車を取り除くことに相当する。
•6億1900万kgの農薬を削減した。
•食料安全保障に貢献し、生産を維持するための耕地拡大の圧力を軽減した(軽減耕地面積は、米国耕地の11%、ブラジルでは31%、中国では13%に相当する)。
•農家の作物収量が改善され、1億8030万トンのダイズ、3億5,770万トンのトウモロコシ、2,520万トンのワタ、および1,060万トンのキャノーラの増産があった。
•開発途上国の小規模農業者の生計を支援し、2015年だけで155億ドルの農場レベルでの経済効果があった。
•開発途上国の農業者が遺伝子組換え作物種子への1ドル投資で5.15ドル収益を上げ、世界的な経済的成功を達成するのに役立った。

南北アメリカ

遺伝子組換えサトウキビの商業利用をブラジルが承認

 2017年6月8日、ブラジルの国立バイオセイフティー委員会(CTNBio:National Biosafety Technical Commission)は、ブラジルCentro de Tecnologia Canavieira (CTC)社 によって開発された最初の遺伝子組換え(GM)Btサトウキビ(Bt Sugarcane)、CTC 20 BTの商業利用を承認した。

 世界で栽培が承認された最初のGMサトウキビBt Sugarcaneは、ブラジルのサトウキビの主要な害虫であるサトウキビ害虫(穿孔虫、ニカメイガの幼虫:Diatraea saccharalis)による被害に抵抗性がある。ブラジルの農業専門家によれば、サトウキビ害虫によって引き起こされる被害は年間約50億レアルになる。 CTC 20 BTのBt 遺伝子(Bacillus thuringiensis)は、ダイズ, トウモロコシ、 ワタ とナスなどの遺伝子組換え作物において、20年以上にわたって広く使用されてきている。
国際的に受け入れられている基準を用いてBt Sugarcaneの健康および環境安全性を評価した科学的文書は、2015年にCTNBioに提出された。新品種と従来から得られた砂糖とエタノールは、加工処理研究により全く同じであることが証明された。この研究では、CTC 20 BT SugarcaneのBt遺伝子と蛋白質の両方が、製造過程でサトウキビ加工品から完全に除かれていることが示された。環境試験では、標的害虫(主にサトウキビ害虫)を除き、土壌組成、サトウキビ生分解性、または昆虫集団にはいかなる悪影響も見いだされなかった。 CTC20は、Btサトウキビ苗の分配から始めて、十分なモニタリングされた畑での作付けを生産者と緊密に協力して実施する予定である。

アジア・太平洋

日本は遺伝子組換えテンサイ栽培の可能性がある

 遺伝子組換え作物が普及しているダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタの日本への輸入量は2016年には2090万トンに達しており、遺伝子組換え作物が導入されている可能性がある。これらの農作物の90%は、遺伝子組換え作物が流通しているからだ。また、日本は遺伝子組換え作物の承認数では世界のトップだが、全く栽培されていない。以上のような事実を日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)代表冨田房男博士が、ISAAA Brief 52、遺伝子組換え/GM作物の世界動向:2016年に関するセミナーが東京で行われた際に述べた。冨田博士は、北海道の農業者が遺伝子組換えテンサイの栽培に意欲を持っており消費者に対する遺伝子組換えテンサイと非遺伝子組換えテンサイ由来の砂糖には全く差がないことを正しく知ってもらう広報活動が必要であると話した。

 ISAAAのRhodora R. Aldemita博士はISAAA Brief 52のハイライトを発表し、2011年から日本でウイルス耐性の遺伝子組換えパパイヤの消費を承認したことを強調した。また、日本での栽培に関しては遺伝子組換えカーネーションとバラの栽培に限られている。バイテク情報普及会(CBIJ)の今井康史博士と藤村佳樹博士の両者が開会の挨拶と活動報告を発表した。

 セミナーは、2017年5月30日にCBIJ主催とNBICの協力の下で開催され、政府、学界、メディア、業界の代表など約120人が参加した。

ゲノム編集技術進歩の現状とその作物改良への応用

 コロンビアに本部を置く非営利組織の国際熱帯農業センター(International Center for Tropical Agriculture 、CIAT)と理化学研究所環境資源科学研究センター(RIKEN CSRS)の共同研究機関であるベトナム農業遺伝学研究所(The Institute of Agricultural Genetics 、AGI)が、ゲノム編集技術進歩の現状とその作物改良への応用に関するシンポジウムをベトナムのハノイで2017年5月12日に開催した。

 参加者は、AGI理事長のLe Huy Ham教授、横浜市立大学(YCU)の辻寛之博士、国立農業食品研究機構の遠藤真咲博士と土岐誠一博士、理化学研究所の関原明博士、およびベトナムの様々な機関や大学の科学者だった。

 プレゼンテーションでは、植物育種の進歩へのゲノム編集技術の大きな可能性と実現性が明らかになった。参加者には、ゲノム編集技術の向上と研究ネットワークの確立に関するプロジェクトについての以下のような説明があった;日本のゲノム編集技術の進歩、理化学研究所のキャッサバプロジェクトの概要、キャッサバ研究へのゲノム編集技術の応用、キャッサバにおけるフロリゲンおよびフロリジェン遺伝子の分子機能、ベトナムにおけるキャッサバ変換研究の現状と課題、イネにおけるゲノム編集。

インドの国立農業科学アカデミーがGMマスタードの商業栽培支持

 インドの国立農業科学アカデミー(NAAS)は、2017年6月4、5日にニューデリーで開催された第24回年次総会で、University of Delhiが開発した遺伝子組換え(GM)マスタード(Brassica juncea)の商業栽培を全会一致で支持した。アカデミーは、指導的農業科学者で構成された団体で、インド首相に、農業者が2017年の栽培シーズンにGMマスタードを栽培できるよう、インド首相に対して栽培承認プロセスを早めるように求める決議を提出した。 GMマスタード技術とDhara Mustard Hybrid(DMH-11)は、既存の品種よりも20%から30%多く生産され、将来的にはより良いマスタード交配種を開発することを可能にする最初のbarnase-barstarシステムを用いたハイブリッドであり、農業者に低コストの豊富な品揃えを提供できるようになる。

 GMマスタード技術は、インド政府の国立乳業開発委員会(National Dairy Development Board 、NDDB)およびバイオテクノロジー省(Department of Biotechnology DBT)からの資金提供を受けている公共部門の科学者によって開発されている。

ヨーロッパ

2050年までに気候変動で作物生産が23%減少すると予想

 極端な天候や気温の異変を招く気候変動は、2050年には、トウモロコシ、コムギ、イネ、ダイズなどの主要作物の世界的生産量が23%減少すると予測されている。

 ドイツのボン大学開発研究センターの研究員であるMekbib Haile氏らは、1961年から2013年までの主要作物の価格と生産量を分析した。その結果、主要作物の世界生産量の9%という大幅な減少が2030年代に起こると予想している。また、気候変動の負の影響は、2030年代に数カ国で現れ、2050年までに全ての国でより顕著になるとしている。Haile氏によれば、成長期の平均気温の上昇は、約32℃の特定の「転換点」に達するまで主要作物に大きな影響を与えないという。また、干ばつや降水量が多いなどの極端な気象条件は、気温以外に作物の生産を減少させる可能性があるとしている。

 これらの懸念に対処するために、Haile氏は遺伝子組換え作物の利用、より良い灌漑、耕起の減少などの農業の改善を推奨している。

EFSA、GMトウモロコシNK603に対するリスク評価が適用可能と結論

 欧州食品安全機関(The European Food Safety Authority 、EFSA)は、欧州委員会(EC)の要請を受け、Robin Mesnage氏らが2016年に行ったトウモロコシ NK603に対する学術論文のリスク評価との関連性も含めて評価を行った。この論文は、トウモロコシNK603穀粒のプロテオームおよびメタボロームプロファイルを分析し、それらを比較対照とした非GMトウモロコシ系統と比較した。著者らは、トウモロコシNK603におけるCP4 EPSPS蛋白質の発現レベルを定量し、トウモロコシNK603は非GMトウモロコシ対象と組成的に非等価であると結論付けた。

 EFSAは、研究の実験設計における重大な欠点、および著者によって使用された試験材料の適合性に関する不確実性を見出した。さらに、著者らは分析されたエンドポイントの自然変動性を考慮していないため、結果の解釈は不完全であるとした。 EFSAはまた、病原体による試験物質の潜在的な汚染および試験結果に関連する交絡作用についても不確実であるとした。

 EFSAは、Mesnage氏らが発表した結果は、先にEFSA GMOパネルが出したトウモロコシNK603リスク評価の結論を無効とするだけの新しい科学的情報を提示しておらず、リスク評価結果を無効にするものではないとした。したがってEFSAは、トウモロコシNK603に対する以前のリスク評価の結論は依然として有効で適用可能であると考えているとした。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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